一般財団法人環境イノベーション情報機構

EICピックアップ環境を巡る最新の動きや特定のテーマをピックアップし、わかりやすくご紹介します。

No.238

Issued: 2014.12.26

2015年を展望する ──2014年環境重大ニュース

 2014年も残すところあと数日。今回のPick Up!は、年末恒例の「環境重大ニュース2014」をお送りします。この一年間のできごとを環境の視点からふりかえり、来る2015年に向けて、取り組みを新たにするきっかけにしていただければと思います。トピックスごとに日付とともにまとめてみました。皆さんにとっては、2014年のどんなできごとがもっとも印象に残っているでしょうか?
 ご意見・ご感想をぜひ、文末のアンケートよりお寄せください。

3月16日 指定80周年を迎えた国立公園

 日本初の国立公園が誕生したのは、1934年のこと。3月16日に瀬戸内海、雲仙、霧島の3か所、同年12月4日に大雪山、阿寒、日光、中部山岳、阿蘇の5か所が指定され、現在は全国31か所が国立公園として指定されている。
 その1934年からちょうど80周年を迎えることになった2014年。“サンゴの日”の3月5日には沖縄海岸国定公園から分離独立した慶良間諸島国立公園が新たに指定された。国立公園の新設は、2007年の尾瀬国立公園及び2012年の屋久島国立公園、2013年の三陸復興国立公園と続いているが、これらがすでにその大半が国立公園として指定されていた区域を再編したのに対して、完全な新設国立公園として誕生したのは1987年7月31日の釧路湿原国立公園以来27年ぶりのことだった。

 なお、国立公園80周年に合わせて、環境省職員選りすぐりの12カ所の風景写真をカレンダーにした『国立公園カレンダー "2015 Calendar National Parks of Japan"』が制作された。壁紙としてダウンロードすることができるので、四季折々の美しい風景、国立公園の素晴らしさをぜひご堪能いただきたい。


3月26日 気候変動キャンペーン「Fun to Share 低炭素アクション」が開始

 2014年3月26日(水)、環境省はこれまでの地球温暖化防止国民運動に代わる新たな気候変動キャンペーン「Fun to Share」を開始した。
従来のキャンペーン「チームマイナス6%」や「チャレンジ25」が政府の数値目標を掲げたネーミングだったのに対して、「Fun to Share」は地域からの知恵を生かしたアクション重視型キャンペーンとして呼びかけていくものになる。2014年で開始から10周年を迎え、今や社会全体に浸透しつつある「クールビズ」をはじめとする個別の活動を今後はさらに進化させるとともに、各主体による取り組みを共有し、広げていくとしている。

 なお、チームマイナス6%の由来となった、「1990年比 -6%削減」という日本の目標は、4月15日に2012年度の温室効果ガス国内排出量の確定値が公表されたことで、京都議定書の第一約束期間(2008年〜2012年)の5か年平均も確定し、目標の達成状況が確定した。
結果は、5か年平均の12億7800万トンは、基準年比「+1.4%増」と減らすどころか増加した。ただし、森林吸収「-3.9%」及び京都メカニズムのクレジット購入による「-5.9%」を合算し、トータルで基準年比「-8.4%」、目標を達成したとしている。
京都議定書に代わる2020年以降の新たな枠組みについて討議するCOP20&CMP10が年末12月1日から14日にかけてペルーのリマで開催されたことも補足しておきたい。会期を2日間延長して見い出した基本的なルールが承認されたものの、内容的には低調で、多くの対立点が先送りされたまま閉幕を迎えることになった。


3月31日 南極海における調査捕鯨に中止の判決 〜暗雲立ち込める鯨食文化の行末

 国際司法裁判所(ICJ)が、南極海における日本の調査捕鯨の中止を求める判決を下したのは、3月31日のことだった。同海域で日本が実施している第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPA II)の違法性を問うオーストラリアの訴えが全面的に認められる、初の紛争当事国として裁判に臨んだ日本政府にとっては厳しい判決となった。1982年に国際捕鯨委員会(IWC)で商業捕鯨モラトリアムが採択され1985/6年からの大型鯨類の商業的捕獲が禁止された後、1987/8年の捕鯨シーズンに開始した日本の調査捕鯨の科学的合法性が崩れた瞬間だった。

 日本の調査捕鯨は、北西太平洋などでも実施されているが、同じ論理構成の訴えがあれば、同様の判決が下される可能性もある。IWCの管轄外になるイルカ漁を含む小型鯨類の沿岸捕鯨への影響もあり得る。
 そうした中、日本政府は11月に、捕獲するクジラの数を2013年度までの計画の3分の1に縮小する333頭に削減することを掲げて2015年冬から再開するという新計画案を打ち出した。調査捕鯨の再開には、2015年5月に開催されるIWCの専門家による科学委員会で承認されることが必要となるが、果たしてどのような結論が出されるだろうか。


5月6日 放鳥3世代目に当たる野生トキのヒナが誕生 自然繁殖が軌道に(付:オオタカの希少種解除を巡る論争)

最初のトキの放鳥(2008.9.25)

 2008年に新潟県佐渡島でトキが放鳥されてから6年、5月6日に第3世代(孫世代)に当たる野生トキのヒナ誕生が初めて確認された。これまでも繁殖には成功していたものの、親鳥に当たる第1世代は飼育下で生まれ育った個体だったから、まだどこか人手によって整えられた中での繁殖という側面が拭えなかった。今回、野生産のトキ(第2世代)が親鳥として繁殖に成功したことで、今後、トキ自らが繁殖し世代を重ね、佐渡の自然の中で棲息していける可能性を示すものといえる。関係者が待ち望んだヒナ誕生だった。

 また、今季の繁殖数は過去2年と比べて最多となり、巣立ったヒナは31羽(孫世代5羽を含む)を数えている。こうした中、佐渡市内には、12年までに放鳥した49羽と、放鳥したトキのつがいから野生下で12年と13年に誕生した10羽、さらに13年6月に放鳥した16羽の生存が確認され、計75羽となっている(6月10日までに確認)。これは、保護増殖事業で設定した「野生下で60羽定着」という目標を予定より1年早く達成したことになる。“定着”とは、「野生で1年以上生存」と定義され、定着60羽は絶滅を回避するための最低条件として提示されたもの。
 今後、さらに数を増やして、野生復帰をさらに進めていくとしている。

 同じ希少種の保護・保全に関してもう一つ大きな波紋を投げかけたのが、環境省の示したオオタカの国内希少野生動植物種からの削除の方針。5月15日に中央環境審議会の自然環境部会野生生物小委員会で検討が始まり、6月にはパブリックコメントも実施された。
 自然保護・里山保全の象徴となってきたオオタカ。指定が解除されることで生息地が開発の危機にさらされることを懸念して慎重論を表明する市民団体に対して、環境省は制度の科学的運用を主張する。

 トキ、オオタカともに、関係者の取り組みによって生息数の回復という喜ばしい結果が見えてきた一方で、一つの岐路に直面することになった2014年といえる。


8月27日 国内でデング熱の感染患者が報告される 1945年以来69年ぶりの例となる

 海外旅行中の感染ではない、国内で感染したデング熱の患者が報告されたのは8月27日。1945年以来、実に69年ぶりの症例だった。
 翌28日に第2例が報告されたのに引き続いて複数の感染症例が報告される。いずれも東京都渋谷区にある代々木公園で蚊に刺されていたことが判明。テレビ番組のロケに訪れていたタレントの感染も判明し、大きな注目を集めた。
 9月に入ると感染患者数はさらに増大。代々木公園で採集した蚊からデング熱ウイルスが検出されたことで、公園を封鎖しての駆除作業が行われた。
 さらに、代々木公園以外での感染症例も報告されるようになり、関東周辺を中心に感染者の報告例が相次ぎ、100名を超える流行を呈した。

 デング熱の発生率は、1960〜2010年の間で30倍に増加していることが、世界保健機関(WHO)により報告されている。原因は、都市化や人口増加、海外渡航機会の増加による感染機会や頻度の増大に加えて、地球温暖化の影響による媒介生物である蚊の分布拡大が指摘されている。
 環境省も温暖化による潜在リスクの拡大について、かねてより指摘してきていたが、今回の感染流行によって図らずも温暖化のリスクが顕在化したといえる。
 なお、2008年に発行した『STOP THE 温暖化』には、東北地方におけるヒトスジシマカの分布北限の変化を示すとともに、以下のようにその潜在リスクの拡大を警告していた。
 「日本でも、生息域が次第に北上していることが確認されており、今後もその分布を広げる可能性が指摘されています。これらの地域ですぐにデング熱が流行するというわけではありませんが、デング熱流行の潜在的なリスクがある地域が拡大する傾向にあることは確かです。」

9月24日 九州電力の再生可能エネルギーの新たな受け入れを保留、大手電力5社にも広がる

 九州電力が太陽光など再生可能エネルギーの新たな受け入れの保留について表明したのは、9月24日のこと。1週間後には、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力の大手電力4社も買い取りの新規の受け入れを停止すると発表した。

 固定価格買い取り制度(FiT)は、主に再生可能エネルギー(自然エネルギー)の普及拡大と生産コストの低減を目的にした政策で、世界各国で運用されている。再生可能エネルギー事業者は、生産電力の電力会社による買取り価格が一定期間にわたって保証されることで、普及に拍車がかかる。買取価格は、普及量や生産コストの推移に従って定期的に見直され、計画的に逓減していく。
 国内では、2009年11月1日に太陽光発電の余剰電力買取を開始。電力会社ごとに買取単価を設定する方式だった。その後、2012年7月1日に、対象を太陽光発電以外の再生可能エネルギーに広げて、余剰電力買取制から全量買取制に制度を変更している。

 今回の問題に対して、経済産業省は、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会及び同小委員会系統ワーキンググループにおいて、固定価格買い取り制度にかかる問題点の整理及び当面講ずべき対応策の検討を開始した。
 数次の討議を経て、12月18日に「再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について」をとりまとめて公表した。これを受けて、電力5社では年明けの解答保留の解除を表明している。

9月27日 御嶽山が突然の噴火、課題となる火山大国・日本における登山やアウトドアの安全対策

 9月27日(土)の午前11時52分、長野・岐阜の県境に聳える霊峰・御嶽山で、水蒸気噴火が発生した。山頂付近にいた多数の登山者が噴火に巻き込まれて遭難するという、戦後最大の火山災害となった。
 かつて御嶽山は「死火山」とされていたが、1979年に突如噴火。「死火山」や「休火山」というカテゴリーの見直しのきっかけにもなった。
 以来、断続的な小規模噴気活動が続き、今回は2007年1月以来7年ぶりの噴火となった。

 現在、日本の活火山は全国に110あり、そのうちの47火山について今後100年の間に噴火して周辺住民などに被害を及ぼす可能性があると、24時間体制で監視される「常時観測火山」に指定されている。今回噴火した御嶽山や日本最高峰の富士山など、登山や温泉、スキーなどの名所として親しまれている山々が名を連ねる。
 2011年3月11日の東日本大震災は地震と津波の脅威を突き付けられたが、2014年は火山の脅威を思い知ることになったといえる。しかもそれは、登山やアウトドアなどを楽しんでいる真っ最中にも起こり得るという衝撃的な事実とともに突きつけられたものだった。

10月7日 青色LEDの発明・実用化に貢献した3氏がノーベル物理学賞を受賞

 10月7日、スウェーデン王立科学アカデミーは、2014年のノーベル物理学賞を名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授、米カリフォルニア大学の中村修二教授の3氏に授与すると発表した。青色LEDの発明および実用化に貢献した業績を認めるものだ。
 LEDには青色だけでなく、赤色や緑色があり、当時すでに実用化していた。にもかかわらず、青色LEDだけが受賞することになったのは、実用化困難とみなされていた青色LEDによって光の三原色が揃い、LEDによるフルカラー表示が可能になったためだ。電気を直接光に変換するLEDはエネルギーロスが少なく、素子そのものが光ることで電子機器や照明機器の小型化・軽量化にもつながった。

 青色LEDによって、自然光に近い白色光も再現できるようになり、省エネ照明としてオフィスや家庭に浸透してきている。全世界の消費電力のうち、照明用途が約4分の1とされるから、LED照明による省エネ効果は大きい。

11月12日 国連「ESDの10年」の最終年に、締めくくりとなる世界会議を開催

 2005年にスタートした国連「ESDの10年」(DESD)の最終年となった2014年。11月には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と日本政府の共催によるESD世界会議が愛知県名古屋市で開催され、「あいち・なごや宣言」を採択して閉幕した。
 同会議は、DESDの10年間の取り組みを総括し、11年目以降の継続的・発展的な取り組みへのキックオフとすることを目的に開催されたもので、148か国から、74名の閣僚級やユネスコ加盟国の政府代表をはじめ、NGO、研究者、企業、国連機関、専門家、若者が参加した。

 なお、3月から4月にかけて実施されたESDの愛称公募では、4,000件を上回る応募があり、大賞には愛知県の小学校6年生の堀之内遥奈さんの『今日よりいいアースへの学び』が選ばれている。“アース(地球)”と“明日”をかけたこのネーミングで、ESDの取り組みをよりわかりやすく、かつ身近にしていくことが期待される。

11月18日 究極のエコカー「燃料電池自動車」、世界初の一般向け販売へ

燃料電池の構造(トヨタ自動車提供)

HySut 豊田エコフルタウン実証水素ステーション(トヨタ自動車提供)

 暮れも押し迫った11月18日、トヨタ自動車が“究極のエコカー”と呼ばれる燃料電池自動車「MIRAI」の販売を正式に発表した。発売開始は12月15日で、一般向けとしては世界初の販売となる。メーカー希望小売価格は723万6千円(税込)。国の補助金が202万円出るため、実質負担は約520万円となるほか、約23万円の減税等も適用される。
 4人乗りの「MIRAI」は、1回の充填で約650kmの走行距離を記録するから利便性も十分だ。当面、年間の生産台数は700台限定ながら、すでに受注が1000台に達する勢いで、2015年夏以降には欧米でも販売を開始する。

 燃料電池自動車は、車内に搭載した水素を燃料に、大気中の酸素と化学反応する際に発生するエネルギーによってモーターを回して駆動力を得る。内燃機関に比べてエネルギー効率が高く、走行時の大気汚染物質(CO2やNO2など)も出ない。排出されるのは水素と酸素が結合してできる「水(H2O)」だけ。これが究極のエコカーといわれるゆえんだ。現在は燃料となる水素の生産工程でCO2が排出されるが、将来的にはその排出も限りなく0に近づけていこうと開発が進む。

 ホンダや日産など各メーカーでも近い将来の市場投入をめざしている。国内の燃料電池自動車市場は2020年代に本格化すると予測されている。普及には、燃料となる水素の供給インフラの整備も不可欠だ。