環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げ(ピックアップ)て、取材を行い記事としてわかりやすくご紹介しています。
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Issued: 2002.04.25
「ゴールデンウィーク特集観光地が抱える環境問題」
待ちに待ったゴールデンウィークがやってきます。どこに行こうか、すでに決めている方もいれば、これから考える方もいらっしゃると思います。JTBが発表した今年のゴールデンウイーク旅行動向によると、総旅行人数は国内2,202万人(前年比1.5%減)、海外50万9,000人(同5.6%減)で、過去最高を記録した去年の数字には届きませんが、史上第2位の多さです【1】
短期間ではあるものの、これだけの人たちが国内外の観光地などに移動するのですから、そこから得られる経済波及効果は絶大で、観光地はまさにこの時期がかきいれ時という感じです。
【1】 2002年ゴールデンウィーク(4/25〜5/5)の旅行動向(JTB)
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毎年たくさんの観光客を受け入れる尾瀬
 目次
楽しい観光の裏側に・・・
大切なのは私たちの意識
楽しい観光の裏側に・・・
美しい富士山にもゴミ問題が(山中湖より)

仲間川のマングローブ林(遊覧船から撮影)

 一方、大勢の人たちが観光地にどっと押し寄せることによって招いている弊害もあります。
そのひとつとして挙げられるのが、多くの人がその場所を訪れる時に与える「環境への負荷」(ヒューマンインパクト)です。
具体的にいうと、観光地で投げ捨てられる「ゴミ」や、近隣旅館、山小屋などから出る「排水」、生息動植物の「無断採取(いわゆる盗掘)」などが例として挙げられます。
しかし、このような弊害はあるとはわかっていても、実際にどこでどのようなことがで起こっているのか、漠然としたイメージしかないのが実状ではないでしょうか。
そこで、今回は日本でも有数の観光名所「富士山」と「沖縄/西表島」を例にとり、実際にはどのような弊害が起こっているのか、そしてその対策としてどのような対応がなされているか探ってみました。


<富士山の場合>
日本を象徴する最高峰の山「富士山」、その雄々しく美しい姿は日本のシンボルとして、人々に愛され、国際的にも有名な、横綱級の日本名所です。
観光客も平成11年度の統計で、年間、登山者数が約25万人、富士五湖や五合目などの富士山地域観光客数は約3,093万人と、大勢の人で賑わっています。
こうした中、富士山が抱える問題としてクローズアップされているのが、ゴミとトイレの問題です。
富士山五合目以上のゴミ収集量は年間で8.77トン(平成11年度集計)。また富士山やその周辺でのゴミの不法投棄量は、なんと168トンにもなります(平成11年度推計値)[2]。
放置されたゴミの中には自然に還らないものが多く、富士山の環境や景観を悪化していることは一目瞭然です。
「富士山が世界遺産になれなかった最大の理由のひとつはゴミ」というテレビCMがありましたが、それも頷けます。

美しい富士山にもゴミ問題が(山中湖より)
トイレの問題も深刻です。いくつかの山小屋では満足な「し尿」の処理ができず、「浸透・放流」という措置をとっているところがあります。「浸透・放流」と難しそうな表現をしていますが、要は垂れ流しということです。
さらに、これに休日の観光客の押しよせが重なるとどうでしょうか? 数少ないトイレですから混雑は必至、仕方なく外でしてしまうケースもないとはいえません。
し尿が環境に与える影響は小さくはありません。浸透して地下水に溶け込み、下流域で大腸菌が検出されたケースも報告されています。
現場での放流・浸透・埋立以外の処理方法を取るトイレの普及率は、平成12年度現在で52%(五号目以上)【2】。残りの48%は垂れ流し状態といえ、一刻も早くすべてのトイレでより適切な処理が施されることを期待したいところです。
現在富士山では、市民が中心となってし尿を水と炭酸ガスに分解するバイオトイレなど、環境に配慮したトイレを設置していこうという動きもあります【3】



<西表島の現状>
沖縄本島から南西へ約400キロ、人口1,900人の西表島はイリオモテヤマネコや、マングローブ林で知られる豊かで原生的な自然が残っている日本有数の島。毎年たくさんの人々が観光でこの島を訪れ、観光客はここ10年で2.4倍に増えました。
この島の観光の目玉は、なんといってもすばらしい西表島の自然を堪能する「エコツアー」。しかし、自然にやさしいと謳うエコツアーにも、最近いろいろな問題が持ち上がってきているそうです。
そのひとつとして挙げられるのが、マングローブの倒木。地域にとって大切な自然環境資源で、重要な観光資源でもあるマングローブが今、深刻な倒木の被害に直面しています。
現場は、西表島で2番目に長い川、仲間川の河口から1キロほど溯った右岸、マングローブ林の根元の土がえぐれ、自らを支えきれなくなって、約50メートルにわたって倒れていました。
大量の観光客をさばくために遊覧船が速度を上げ、その波がマングローブ根元を浸食してしまったのが原因です【4】

仲間川のマングローブ林(遊覧船から撮影)
「エコツアー」の目的のひとつは、大人数観光の弊害をなくすこと。土地固有の自然や文化を守りつつ、旅行者は感動を、地元は経済的利益を受けるはずでしたが、西表島では「エコツアー」の理想と現実に直面しています。地元ガイドさんの中には「狭い川にカヌーがあふれる。処理施設もないのに、ペットボトルや使い捨て容器の弁当を用意する。客はゴミだけ残して日帰り。これがエコツーリズムかい?」との意見も。
批判を受けた仲間川の遊覧船運航や観光バスを手がける地元交通は、現在12隻の遊覧船を波の立ちにくい新型船に順次交換し、現在は平均50分間の遊覧時間も、就航速度を減速して20分間延長することも検討しながら、この問題に対応しています。
【2】 富士山を守る指標〜3章個別指標項目の解説
詳細ページへ
【3】 富士山クラブ〜富士山トイレ浄化プロジェクト
詳細ページへ
【4】 毎日インタラクティブ〜科学環境ニュース
詳細ページへ
大切なのは私たちの意識
以上2つの事例をみてきましたが、このような事態が引き起こされる原因として、明らかに言えることは、観光地のオーバーユース(使い過ぎ)にあるといえます。
適度な人数で一般の人たちが普通にハイキングコースを歩くのであれば、自然への負荷はそれほどかかりません。しかし、特定の時期に集中して大勢の観光客が押し寄せればどうなるでしょう。観光客のマナーの問題もあります。タバコの投げ捨て、ゴミの放置、また、写真撮影や追い抜き等のために、登山道を外れて高山植物を踏み荒らす人たちもいます。
それらが、積もり積もってさまざまな問題を引き起こしているのです。

では、私たちは観光地に行かない方がいいのでしょうか?
「行かない」というのも確かに選択肢のひとつかもしれません。でも、日本には素晴らしい自然がまだまだたくさん残っています。その美しさを知り、感動し、このような素晴らしい自然をそのままの状態で私たちの子どもたちに残していくことは、現世代の私たちに課せられた使命といえるのではないでしょうか。
個人が自然に対してできることは限られていますが、そこを訪れるすべての人たちが、少しずつ配慮することで、日本の観光や観光地の環境も改善されるのではないでしょうか。

ゴールデンウィーク、みなさんいろいろなところにお出かけになると思います。
その旅先で、私たち自身の意識やマナーについて、少し考えてみてはいかがでしょうか。
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(記事:田之下 雅之)
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