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「ものを『買う』から『借りる』時代へ」
レンタルビジネスが本格化
「サッカー観戦のおともに『リユースカップ』を」
繰り返し洗って使える飲料容器でスタジアムの紙コップを年間16万個削減
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No.
Issued: 2003.03.20
「サッカー観戦のおともに『リユースカップ』を」
 繰り返し洗って使える飲料容器でスタジアムの紙コップを年間16万個削減
大分スポーツ公園(愛称「大分スポパーク21」)内の中心施設「ビッグアイ」は、サッカー・ラグビーなどのスポーツや展示会などのイベントが行われる総合競技場。年間約100万人が利用するビッグアイで1年間に捨てられる紙コップの数は、約16万個にのぼります。
 ところが、今年(2003年)3月以降、その数はゼロになる予定。理由は、繰り返し使える「リユースカップ」の導入です。紙コップに代わり、場内で販売するビールやジュースの入れ物にプラスチック製のコップを採用しました。飲み終わったら回収して洗い、年間約20回繰り返し使います。ビッグアイでの本格導入初日の模様をリポートします。
大分スポーツ公園総合競技場「ビッグアイ」は今年3月から場内で売るビールやジュースに、繰り返し使える「リユースカップ」を採用。紙コップ16万個分のごみが削減できる。(同競技場より)
 目次
場内スタッフがリユースカップへの協力求め奔走
年間を通した施設のごみ量は半減と予測
環境に配慮した施設運営のためリユースカップを導入
全国のイベント施設がリユースカップに注目
場内スタッフがリユースカップへの協力求め奔走
本格導入初日には、観戦客にちらしを配ってリユースカップへの協力を
呼びかけた



 「オーレオーレ大分トリニータ!」 ─3月15日に開催された2003Jリーグ ヤマザキナビスコカップ予選では、地元大分県のサポーターが会場のビッグアイに詰めかけました。昨年(2002年)Jリーグ2部から1部に昇格したトリニータの新たな挑戦を見守るためです。実はこの日、サポーターの声援が響き渡るサッカーコート外で、もうひとつの挑戦が始まっていました。
 「リユースカップにご協力くださーい」。「Reuse Cup」(リユースカップ)のロゴ入りジャンパーを着た女性たちが、場内の売店近くで観戦客にちらしを配布。一方の売店では、飲み物を買いに来た客に、「飲み終わった後、容器を持ってきていただくと100円お返しします」と、この日から本格的な導入が始まった「リユースカップ(繰り返し使えるコップ)」の仕組みを丁寧に説明します。

 ビッグアイが採用したのは、高さ約20cmのプラスチック製のコップ。ジュース500mlを250円、ビール500mlを650円で販売し、これに容器のデポジット料金(預かり金)100円が加算されます。コップを返却した客には100円返金。返却せずに同じコップで「おかわり」する場合、デポジット料金100円がかからない上に、中身の飲料の値段も50円引きとなります。

 リユースカップには、ごみの放置を防ぐ効果もあります。リユースカップを返却すれば100円戻ってくる「デポジット方式」(製品価格に容器代金を「預かり金」として上乗せして販売し、容器返却時に預かり金を返す仕組み)を採用しているからです。試合後の清掃にかかる手間も減ると期待されています。
年間を通した施設のごみ量は半減と予測
「REUSE CUP」のロゴ入りジャンパーを着た女性達

 「リユースカップを使うことで、スタジアムから出るごみは半減するだろう」と予測するのは、ビッグアイを運営する財団法人大分スポパーク21総務部長の甲斐勝美さん。

 ビッグアイでは、サッカーの試合が開催されるごとに、約2〜3tのごみを処理しています。ごみの多くを占める紙コップの量は、夏場は1試合で約1万2,000個。年間では推計16万個と試算されています。リユースカップを使えば、これが一切なくなるわけです。

 とはいえリユースカップも万能ではなく、回収したのち、洗ったり輸送したりする際に環境に与える影響も加味しなくてはなりません。それでも、容器の生産から使用、廃棄にいたる環境負荷をLCA(ライフサイクルアセスメント)で総合的に判定すると、使い捨ての紙コップよりリユースカップの方が環境負荷が少ないとの試算もされています。東京大学生産技術研究所の安井至研究室の調査結果によれば、リユースカップを4〜5回繰り返し使えば、総合的な環境負荷はリユースカップの方が少なくなります。ビッグアイが採用したリユースカップは、約20回繰り返して使う予定ですから、紙コップに比べて環境負荷が少ないことがデータでも裏付けられるわけです。
環境に配慮した施設運営のためリユースカップを導入
売店ではビールやジュースを紙コップの代わりにリユースカップで販売

「環境に配慮した容器を使うことは、ビッグアイの運営思想にぴったりだった」。大分スポパーク21の甲斐さんは、リユースカップの採用を決めた理由をこう話します。ビッグアイには、周囲の生態系に配慮した設計や雨水の有効活用など、環境に配慮した工夫が随所に取り入れられています。
 大分スポパーク21にリユースカップの導入を提案したのは、ビッグアイの売店運営を請け負うエームサービス株式会社(東京都港区)。ドイツではすでにスポーツ競技場でリユースカップ使われていることを知り、国内での導入に取り組みました。

 ビッグアイで使ったリユースカップは、ベルギーからの輸入品。エームサービスは、ビッグアイでのトリニータの試合用にリユースカップ7万個を用意しました。容器の表面には飲料メーカーのロゴマークを印刷し、広告費はリユースカップ購入費の一部にあてています。

 リユースカップは、理論的には50回繰り返して約2年間使えますが、ビッグアイでは20回程度で約1年間の使用を予定しています。回収したリユースカップの洗浄は、食品工場に委託。使えなくなったあとは、大分市内の施設で燃やし、熱は回収してエネルギーとして有効利用する予定です。
全国のイベント施設がリユースカップに注目
使い終わったカップを回収コーナーに持っていくと
100円返金される


 環境負荷の削減には大きく貢献するリユースカップですが、普及には課題もあります。リユースカップの調達や回収、洗浄にコストがかかることです。ビッグアイでは、場内3カ所にリユースカップの回収コーナーを設置。それぞれ2〜3人のスタッフが配置され、リユースカップの回収と預かり金の返金にあたりました。売店にとっては、このための人件費が大きな負担になります。
 エームサービスでは、コストの問題を解決するため、将来的にはリユースカップを国内で生産して調達コストを下げることや、リユースカップに印刷する広告主を増やし、広告収入を回収・洗浄費用にあてることなどを検討しています。

 ただ、売店だけを見れば必要コストは増えますが、ごみ処理費用などが減るため、競技場運営にかかる総費用の削減につながる可能性は大いにあります。大分スポパーク21の場合、売店の運営はエームサービスに委託する一方で、清掃・ごみ処理はイベント主催者が行うこととしているため、こうしたコスト面でのメリットはありませんが、「ごみ処理費を競技場が負担している場合は、相当なコストメリットが出るはず」と大分スポパーク21の甲斐さんは指摘します。
 
 リユースカップの導入には、全国のスポーツ競技場やイベント会場が注目。実際にいくつかの施設でも試行的な導入を検討しています。環境省も「リユースカップの実施利用に関する検討調査」を実施し、リユースカップ普及の課題などを調査することを決めました。一方、全国に先駆けてリユースカップを導入したビッグアイでは、サッカー以外のスポーツイベントや展示会などにもリユースカップを使っていきたい考えです。大分から始まったリユースカップ導入が全国に拡大していくか。今後の展開が注目されます。
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関連情報 |
  大分スポパーク21
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  大分スタジアム「ビッグアイ」で【リユースカップ】システムを導入した
  エームサービス株式会社
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  環境省報道資料「リユースカップの実施利用に関する検討調査について」
  (平成15年3月12日)
 「リユースカップの実施利用に関する検討調査について」
  Re-Style MOE info
 「リユースカップ、大分にて始動!」
  EICネット国内ニュース
 「サッカー場、コンサート会場などでの飲料容器再利用を検討へ」
  平成14年度NGO/NPO・企業の環境政策提言の優秀提言
  ((財)地球・人間環境フォーラム)
 「リユースカップの利用による循環型社会づくり(PDFファイル)」
  ■参考:環境省報道資料
 「平成14年度NGO/NPO・企業の環境政策提言の選考結果等」
(記事・写真:土屋 晴子)
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