「(時計の)10時の方角でクジラがブロウしています」。ガイドの声で目を向けると、ザトウクジラ
【3】が大きく潮を吹き上げました。大歓声を上げて写真を撮る観光客に、ガイドは「自主ルールで100m以内には船の方から近づかないことを取り決めています」とクジラに近づかない理由を説明します。
小型船に乗ってクジラやイルカに出会い、時には一緒に泳ぎながら観察する小笠原で大人気のツアー。参加した3月はザトウクジラのシーズンです。繁殖のため小笠原に戻ってきたクジラが子クジラを連れて泳いでいます。
今度は人懐こいミナミハンドウイルカの群れを発見しました。すぐにでも近づいて一緒に泳ぎたそうな観光客に、ガイドは「あの群れには何隻も船がついているから、他の群れを探しに行きましょう」とイルカへの配慮を見せました。
小笠原村は1988年に返還20周年記念のむらおこし事業として、日本で初めて
ホエールウォッチングを実施しました。先進地のハワイを視察するとともに、当時小笠原村にザトウクジラ調査に訪れた鯨類学者の意見も参考にして、クジラへの接近方法などを定めた『ホエールウォッチング自主ルール』を導入し、小笠原ホエールウォッチング協会(OWA:1989年設立)が専門機関として調査研究や普及活動を行ってきました。OWA主任研究員で「クジラ博士」の森恭一さんは、「当時は地域全体を巻き込んで盛り上げていこうと様々なメンバーが一緒に取り組んでいました。小笠原村のエコツーリズムの始まりだったと思います」と振り返ります。
一方、ドルフィンスイムは1990年代半ばから始まりました。最初はルールを設けずにツアーを実施していましたが、「多くの船でイルカを囲むのはかわいそう」という観光客の意見や安全性の問題から、ガイドの中に危機意識が生まれました。2005年に観光協会ガイド部加盟のガイド業者が集まって話し合い、「同じ群れのイルカにアプローチする船は4隻まで」、「水中へのエントリー回数は5回まで」という制限を定めた『ドルフィンスイムのガイドライン』を作りました。ガイド自身が危機感を持って作ったルールだからよく守られています。現在もOWAによるモニタリング調査やガイドの話し合いが重ねられ、「イルカのためになるルール」を作っていこうとしています。
また、OWAではホエールウォッチング
インタープリターの認定事業や勉強会を行っており、多くのガイドや島民が参加しています。森さんは「観光客が、価格だけではなくイルカ・クジラへの配慮やプログラム内容でガイドを選ぶようになって欲しい」と語ります。
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| 写真2:ホエールウォッチング船からザトウクジラを観察する観光客 | | 写真3:陸上鯨観察会で自主ルールを説明するOWAの森さん |