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Issued: 2006.08.31
ガラパゴス国立公園
 世界初のユネスコ自然遺産に指定され、ダーウィンの進化論で知られるエクアドル共和国・ガラパゴス諸島。ほんの数百年前まで他の世界と無縁だったこの島々では、動植物が独自の進化を遂げてきました。
 しかし、16世紀の発見以降、捕鯨船や海賊、または移住者による乱獲や、持ち込まれた外来生物によって生態系が大きなダメージを受けています。現在では、エクアドル政府と世界中から訪れる研究者たちによって保護活動が行われており、回復の兆しはあるものの、まだ多くの課題を抱えています。
 今回はこのガラパゴス諸島における観光システムと現状の課題及び取り組みを紹介します。
 目次
入島管理 ──徹底した検疫制度から始まるガラパゴス諸島観光
ナチュラリスト・ガイド制度
陸と海のビジターサイト
公園内のルール
ガラパゴス諸島の動物たち
ガラパゴス諸島保護における課題と取り組み
観光客も自然保護を担う一員
<ガラパゴス諸島の概要>
◆国・位置:
 エクアドル共和国に属し、本土から約960km西、赤道直下の太平洋上に位置する。
◆面積:
 19の島々と200の小島や岩々からなる。陸地面積は7,882平方キロメートル。そのうち96.7%が国立公園・自然遺産に指定されており、残りは居住区となっている。なお、1998年に決められた海洋保護区は、諸島の周囲40海里の海域で、約138,000平方キロメートル。
◆気候:
 ガラパゴス諸島の気候は海流に大きな影響を受け、赤道直下ではあるが比較的涼しく、亜熱帯気候である。6月から11月はペルー共和国方面から流れてくるフンボルト寒流の影響が強く、気温17〜22度という寒季となる。12月〜5月は北部のエル・ニーニョの影響で23〜37度と暑く、雨が多くなる。
◆歴史:
 1535 スペイン人司教トマス・デ・ベルランガがガラパゴス諸島を発見
 1832 エクアドル領となる
 1835 チャールズ・ダーウィンが来島
 1959 ガラパゴス国立公園設立
 1968 ガラパゴス国立公園管理局設立
 1969 ガラパゴス諸島の観光が始まる
 1978 初のユネスコ世界自然遺産に指定
 1998 ガラパゴス特別法制定、ガラパゴス海洋保護区設立
 2001 ユネスコ世界自然遺産として海洋保護区を追加
入島管理 ──徹底した検疫制度から始まるガラパゴス諸島観光
 ガラパゴス諸島へは空路を利用するのが一般的です。エクアドル共和国の首都キト、または港町グアヤキルから航空会社2社が運行しています。
 このため、ガラパゴス諸島への入島管理は本土の空港から始まります。例外なく手荷物を開けられ、動植物を持ち込んでいないか検査されます。つい持ち歩いてしまう生の果物などは要注意。見つかった場合は、ほぼ没収されます。さらにガラパゴス諸島の空港に到着してからも、再度検査が行われます。
 検疫が済むと入島税が徴収されます。12歳以上の外国人は100USドル(2006年7月現在)【1】を徴収されます。エクアドルの物価水準からするとかなり高額のこの入島税は、国立公園の維持費、自然保護、および島内のコミュニティプロジェクト費等に使われています。
【1】 入島税
12歳以上のエクアドル国民の入島税は6ドル。
ナチュラリスト・ガイド制度
ガラパゴスのクルーズ船

 ガラパゴス諸島を観光するには2通りの方法があります。クルーズ船に寝泊りして島々を巡るものと、島に滞在して毎日ツアーに出かけるというもの。観光客が滞在できる島が限られており、各島はそれぞれ距離があって移動時間がかかるため、効率よく観光できるクルーズ船の方が一般的です。

 どちらにしろ、観光の際、欠かせない存在が「ナチュラリスト・ガイド」。公認免許を持ったナチュラリスト・ガイドなしには島々の観光やマリンアクティビティ(シュノーケリング、ダイビング等)を楽しむことはできません。
 ガイドの基本的な役割は、観光客にガラパゴス諸島の生態系や歴史などを紹介すると同時に、観光客が公園内のルールを遵守するように指導・監視することです。
 ただ、まるで添乗員のような役割もこなしているのが実状です。ガイドの仕事は空港送迎から始まります。クルーズ船の場合は、上陸スケジュールを決め、乗組員の紹介もします。また、公園に対する様々な報告などもこなしています。

ガイド(左端)と観光客
ガイド(左端)と観光客
 このガイド制度は1975年に始まったもので、国立公園管理局とチャールズ・ダーウィン財団【2】が協力して教育を施し、免許を発行しています。ガイドは、学歴や修了コース、話すことのできる言語などによって3つのレベルに分けられます。たとえば最上級の「ナチュラリスト・ガイド レベルIII」になるには、観光学、生物学またはそれに関連する学位を取得し、最低でも2種類の外国語を話し、レベルIIIに相当する研修コースを修了していることが必要です【3】。ランクの高いクルーズ船にはレベルの高いガイドが乗船するのが慣習のようです。
【2】 チャールズ・ダーウィン財団
 1959年に設立。サンタ・クルス島にチャールズ・ダーウィン研究所を運営している。ガラパゴス国立公園管理局と密接に連携して、自然保護活動を進めており、ナチュラリスト・ガイドの育成にも大きな役割を果たしている。
 現在、財団の名前は「ガラパゴス・コンサーバンシー」に変更されたが、本レポートでは比較的認知度の高いと思われる「チャールズ・ダーウィン財団」をそのまま使用する。
【3】 ガラパゴス国立公園のガイドシステム
ガラパゴス国立公園 ガイドシステム(スペイン語)
陸と海のビジターサイト
バルトロメ島のトレイル

 各島ではそれぞれ、観光客が訪れることのできる場所(サイト)が決められています。現在、陸上に60箇所、海洋に50箇所あまりが設定されています【4】。島に上陸する場合は、決められた上陸ポイントにボートをつけ、そこから上陸します。海岸の地形によって、「ドライ・ランディング」(主に岩場、靴を履いたまま上陸する)と「ウエット・ランディング」(主に砂浜、ボートを砂浜のすぐ近くにつけるが、乗り降りは足を海水につけることになる)という方法があります。
 上陸すると、そこからはトレイルが設けられていて、必ずそのトレイル上を歩くことになっています。

 シュノーケリングやダイビング等のマリンアクティビティも決められた海洋サイトにて行います。これらのビジターサイトは、管理レベルがさらに3段階に分けられていて、利用方法と人数の制限などが異なっています。

また、クルーズ船の運行スケジュールは、毎年更新する許可制となっており、原則としては変更できません。
 この制度は1978年から始まりました。国立公園管理局は、各クルーズ船のスケジュールを事前申請により把握し、各ビジターサイトにおいて365日間、午前と午後に訪れる観光客の数を調整するのです。そうすることで、観光客が一部のビジターサイトに集中することを未然に防いでいます。こうした厳格な管理ルールを適用することで、ガラパゴスの自然が守られているのです。
【4】 ガラパゴス国立公園のビジターサイト
ガラパゴス国立公園 インタラクティブマップ(英語)
→ InteractiveMap をクリック
公園内のルール
 観光客は、公園内では次のようなルール【5】を守らなくてはなりません。
・植物、動物、石、貝などを持ち帰らないこと。撮ってよいのは写真のみ。
・動物、種を含む植物など外来生物を持ち込まないこと(ガラパゴス諸島内で、島から島へ移動させることも禁止)。
・動物に触らない、餌をやらない。
・トレイル以外を歩かないこと。
・釣りは禁止。
・ゴミを捨てないこと。残してよいのは足跡のみ。
・黒サンゴ、亀甲、貝などでできた土産品は買わないこと。
・石や岸壁に名前を書かないこと。
・たき火、喫煙は禁止。

 その他に、「あなたの自然保護に対する態度を恥ずかしがらずに示しましょう」という面白いルールもあります。
 私たちがある島でシュノーケリングを楽しんでいたとき、他の船で来ていた年配の男性が泳いでいたカメの甲羅につかまろうとしたことがありました。すかさず、米国とデンマークから来た若い女性たちがものすごい剣幕で怒り出し、ビーチにあがって説教していた場面がありました。とても印象深い出来事でした。
【5】 ガラパゴス国立公園のルール(詳細)
ガラパゴス国立公園内でのルール(英語)
ガラパゴス諸島の動物たち
 ガラパゴス諸島の楽しみといえば、やはり動物観察【6】。ここの動物たちは人を恐れる様子がまったくありません。カメラにポーズしてくれるような姿を見せるときもあるし、泳いでいると向こうから寄ってくることもあります。もちろん、だからといって近づきすぎてはいけません。
 ガラパゴス諸島の動物の代表選手といえば、ガラパゴス・ゾウガメ。「ガラパゴ」とはスペイン語でゾウガメの意味です。実は、地名にもなっているわけです。寿命が100年以上で、体重は250kgにもなります。島によって異なる種が棲んでいて、かつて14種いたうちの3種が絶滅したと考えられています。
 激減した理由は、食用にされたり油をとるために捕殺された他、人間の連れ込んだヤギのせいで餌不足になったことも原因のひとつとして考えられています。これまでに10万頭のゾウカメが姿を消したと推測され、現在残っているのは約15,000頭。手厚い保護を受けているはずの現在も、少数ながら密猟が続いているといいます。
 ガラパゴス諸島で一番有名なゾウガメは「ロンサム・ジョージ」(直訳すると「孤独なジョージ」)。現在はサンタ・クルス島のチャールズ・ダーウィン研究所にいます。ピンタ島にいた種ですが、ジョージ以外の個体は絶滅してしまいました。近隣種のメスとお見合いをしたこともありますが、うまくいかず、ひとり取り残された哀しみも込めて、こんな名前がついているそうです。

ロンサム・ジョージ(サンタ・クルス島) ロンサム・ジョージに関するパネル(サンタ・クルス島)
ロンサム・ジョージ(サンタ・クルス島)ロンサム・ジョージに関するパネル(サンタ・クルス島)
【6】 ガラパゴス諸島の動植物
 動物たちの情報については主に以下のサイトを参照した。
ガラパゴス・コンサベーション・トラスト ガラパゴスの動植物
砂浜のウミイグアナ (サンタ・クルス島)

 次に、ガラパゴス・ウミイグアナ。海を泳ぎ、海草を食べるイグアナは、世界中でもこの種だけです。普段は陸で生活していますが、餌を採るため海に入ります。生息数は20〜30万匹といわれ、多くの島の砂浜に寝そべっているのを見ることができます。

 一方、ガラパゴス・リクイグアナは、体が大きく、黄色っぽいのが特徴。2種類が生息しており、そのうち1種はサンタ・フェ島のみに棲んでいます。70年代に野犬に襲われたことで生息数が激減したため、サンタ・クルス島に繁殖センターが造られ、現在少しずつ野生に還しています。

 また、ガラパゴス諸島は鳥類の宝庫としても知られています。
 海鳥は70万羽以上やってくるといわれ、19種のうち5種が固有種。複数の島に生息している鳥もあれば、1つの島にだけ営巣地を作っている鳥もいます。喉元の赤い袋を膨らませて求愛行動をするグンカンドリ、赤と青の足がかわいいアカアシカツオドリとアオアシカツオドリ、それにガラパゴスアホウドリなどがみられます。赤道直下に棲むペンギンとして知られるのがガラパゴスペンギン。寒流による冷たい水温によって生息できるのです。
 海鳥の他、ガラパゴス諸島に棲み着いている鳥類は29種、そのうち22種が固有種です。
求愛するグンカンドリ(ノースセイモア島)アオアシカツオドリ (ヘノベサ島)
求愛するグンカンドリ(ノースセイモア島)アオアシカツオドリ (ヘノベサ島)

浜辺のガラパゴスアシカ (サンタ・フェ島)
浜辺のガラパゴスアシカ (サンタ・フェ島)
 島々の浜辺で私たちを迎えてくれるのは、ガラパゴスアシカ。大きな雄(ブル)を中心としたハーレムをつくって生活しています。生息数は2〜3万頭で、生息地が人間の活動領域により近いため、事故の報告も多いようです。実際、港では人のいないボートにアシカが乗って日向ぼっこをしていたり、陸にあげられたボートの陰で昼寝をしていたりするのが目につきます。特に、釣り用のフックにアシカの子どもが引っかかるケースが多く報告されているそうです。
ガラパゴス諸島保護における課題と取り組み
 ガラパゴス諸島の保全における課題は大きく分けて2つあります。外来生物の管理と、自然資源の過剰利用です。
 世界的に注目を浴びるガラパゴス諸島だけに、日本を含め各国の団体が保護活動を行っていますが、その中でも大きな役割を果たしているのが、チャールズ・ダーウィン財団です。
 同財団が外来生物対策として進めている大きなプロジェクトが「プロジェクト・イザベラ」【7】。イザベラ島のゾウガメを救うため、1995年に始まりました。イザベラ島では人間が持ち込み、野生化したヤギが増加の一途をたどっていました。ノヤギは土壌浸食を引き起こしたり、シダを中心とする植物を食べ尽くしてしまい、結果、ゾウガメの生活にとって必要な植物、木陰、水などが失われていきました。ゾウガメは絶滅する寸前にありました。
 プロジェクトでは、ヤギを島から一掃する作戦を開始しました。あわせて、同じく外来生物でガラパゴスの生態系に影響を与えていたブタやカエル、ヒアリ(アリの一種)などの根絶作戦も実施。2006年3月に無事完了しています。早くも、姿を消していた野鳥が戻り、シダも回復しつつあると報告されています。

 自然資源の過剰利用の主な原因は、居住者及び観光客の増加によるものです。
 ガラパゴス諸島の人口は1900年代から少しずつ増加していましたが、1980年までは5,000人程度でした。80〜90年代にかけて、エクアドル本土の経済の悪化、ガラパゴス海域における漁業(特にナマコとフカヒレ)の拡大、また観光客の増加に伴い、一気に移住者が増えたのです。現在の人口は約28,000人と推定され、しかも年6.5%で増加し続けているといいます。1998年のガラパゴス特別法制定により、移住者が制限されることになりましたが、必ずしも現地では遵守されていないのが悩みです。
 移住者の増加は、外来生物の脅威を増し、農地開発や木材・石材などの利用による森林伐採と自然改変、ペットや家畜の管理不備による生態系への影響など様々あります。目下最大の課題は、漁業による海洋資源の過剰利用です。1997年から、国立公園管理局、地元の漁業者、観光業者、チャールズ・ダーウィン研究所など海洋保護区の利用者が集まる協議の場が開かれ、解決策を探っています。
 解決には現地の人々の環境への理解が不可欠なため、チャールズ・ダーウィン研究所が主体となって環境教育も進めています。
 一方、観光客は、1980年に年間約4,000人程度だったのが、現在は約10万人。観光客の与える自然への影響を測るため、2000年から「ツーリスト・モニタリング制度」が始まっています。各ビジターサイトで影響を測る指標を決めて値を観測し、ガイドからの報告や申告されている運行スケジュール等の情報とあわせて環境への影響度を測定します。場合によって、アクセスの制限やトレイルの変更、保護段階の引き上げなどを検討します。
 ツアーオペレーターの中には自然保護を支援し、ルールをきちんと守る業者もありますが、業界全体としては、まだまだ自然保護を重視しているとはいえない状態です。観光客の増加に歯止めをかける仕組みもないため、観光客の入島制限などの仕組みが導入されるまで、繊細なガラパゴスの生態系が耐えられるのかと懸念する声もあがっています。
【7】 プロジェクト・イザベラの詳細
ガラパゴス・コンサーバンシーによる「プロジェクト・イザベラ」の背景と現状
観光客も自然保護を担う一員
 小笠原諸島の保護策を検討するため、石原慎太郎東京都知事も訪れたというガラパゴス諸島。
 50年近くも前から保護活動が行われてきており、その観光システムは世界でも先進的なエコツーリズムと考えられています。しかし、これほど世界中から注目され、手厚い保護を受けているように見えるガラパゴスでも、いまだ密猟が続き、漁業による海洋資源の減少に歯止めがかからない現状もあります。
 現在のガラパゴス観光業界では、一部の人々に利益が集中していて、現地で恩恵を受けている人々は少ないといいます。にも関わらず、観光収入増加を見込んで、本土からイザベラ島への直行便や、定員500人以上の客船の就航を望む声もあるそうです。このような計画が実現すれば、ガラパゴスに深刻な事態をもたらすことが危惧されています。それでなくとも、増加傾向にある観光客の影響は小さくはありません。

 ガラパゴス諸島が私たちに見せてくれる素晴らしい生命の営みがいつまでも大切に守られるように、観光客のルール遵守とマナー向上といった小さな積み重ねが求められます。
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関連情報 |
  ガラパゴス国立公園
 http://www.galapagospark.org/png/index.php (英語、スペイン語)
  チャールズ・ダーウィン財団
 http://www.darwinfoundation.org/ (英語)
  ガラパゴス・コンサーバンシー
 http://www.galapagos.org/ (英語)
  ガラパゴス・コンサベーション・トラスト
 http://www.gct.org/ (英語)
〜著者プロフィール〜
山田慈芳
 2004年6月から、世界の美しい自然を求めて夫婦で旅に出る。アラスカから旅を始め、北米・南米を縦断、その後アフリカ大陸に入って8ヶ月弱を過ごし、2006年1月に帰国した。旅で訪れた国は4大陸28カ国、期間は525日にわたる。
 Webサイト: 美ら地球回遊記 http://www.chura-boshi.com/index_journey.html
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