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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第6話) 遠征編 from Mammoth Cave
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Issued: 2006.10.26
遠征編 from Mammoth Cave(その1)
スカイライン・ドライブ沿いの駐車場にて。左端が国立公園局職員のルディーさん、右端が国立公園局研修生のイーチンさん
 国立公園北の入り口ゲートを通過してしばらくすると、右手に広々とした盆地をシェナンドア川がゆったりと蛇行して流れる風景が一望できる。ここはバージニア州にあるシェナンドア国立公園。アパラチア山脈の北端に位置する国立公園で、首都ワシントンDCからは2時間程の距離だ。
 公園を南北に貫くスカイラインドライブは、ほぼ山脈の稜線に沿って建設されている。
 路傍の駐車スペースで車を降りると、私たちはすぐにカメラを取り出して写真に収まった。

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 目次
シェナンドア国立公園のスカイライン・ドライブ
ワシントンDC訪問
国立公園における入場料収入
(参考)シェナンドア国立公園
スカイライン・ドライブ(国立公園局ホームページより)
スカイライン・ドライブ(国立公園局ホームページより)
  1935年設立。公園面積79,400ヘクタールのうち約32,000ヘクタールがウィルダネス地域に指定されている。シェナンドア国立公園は有料公園で、利用料金は車1台当たり15ドル(11月から2月までは10ドル)ほどだ。公園に入る車道4ヶ所に料金ゲートが設けられている。
 延長約170キロメートルのスカイライン・ドライブは、この地域で最も人気のあるドライブコースのひとつ。また、この車道に並行するようにアパラチアントレイルと呼ばれる遊歩道(トレイル)が延びている。公園内にはその他にも多くのトレイルが整備されており、公園内のトレイル延長は約800キロメートルにも及ぶ。公園は広葉樹林に覆われ、ブラックベアーやシカなどの野生生物が生息する。
 現在の公園区域内には、かつて465の家族が居住していたが、国立公園設立に伴い移転を余儀なくされた。1700年初期から伐採が行われてきたために、公園内の森林のほとんどは2次林だ。
 年間訪問客数は113万人(2003年)。ワシントンDCから120キロメートルと近いので、アメリカの首都訪問の際には、ぜひ足を伸ばしていただきたい公園だ。また、ワシントンDC郊外から延びるインターステート66号線(I-66)沿いにはワイナリーも多く、公園の行き帰りのちょっとした寄り道に最適だ。
シェナンドア国立公園内のトレイル(国立公園局ホームページより)公園内でしばしば目にするホワイトテイル・ディアー(国立公園局ホームページより)
シェナンドア国立公園内のトレイル(国立公園局ホームページより)公園内でしばしば目にするホワイトテイル・ディアー(国立公園局ホームページより)
シェナンドア国立公園予定地内にあった住宅(国立公園局ホームページより)
シェナンドア国立公園予定地内にあった住宅(国立公園局ホームページより)
今も公園に残る住居跡の煙突(国立公園局ホームページより)
今も公園に残る住居跡の煙突(国立公園局ホームページより)
シェナンドア国立公園のスカイライン・ドライブ
 スカイライン・ドライブは、この国立公園のいわば目玉というべき公園道路である。その路線のほとんどが尾根筋や尾根筋直下を通っている。路傍の展望駐車場も大規模で、設置箇所も多い。シェナンドア国立公園は、さながら国営の観光道路といった感があり、とにかく展望台や駐車場からの景色はすばらしい。ちょっと車を停めて景色を眺めたり記念撮影をしたいと思うような場所には、しっかりと展望スペースが作ってある。施設建設時には相当大規模な土木工事が行われたはずである。
尾根筋を通るシェナンドア国立公園のスカイライン・ドライブ(国立公園局ホームページより)シェナンドア国立公園の入り口看板
尾根筋を通るシェナンドア国立公園のスカイライン・ドライブ(国立公園局ホームページより)シェナンドア国立公園の入り口看板

 施設がしっかりしているだけに、利用者が道路敷から外に踏み出すことはめったにない。道路の法面は岩盤が剥き出しで、日本のようなコンクリートの吹きつけやブロック積みはほとんどない。そもそも、尾根筋に道路が通っているので、法面は目立たない。路肩にはガードレールがない代わりに、低い石積みか、角材でできた木柵が設置されている。視界を遮るものがなく、開放感がある。
 一方、路上に落石が転がっていることもまれではない。自己責任の国アメリカだからなのか、あるいはシカが飛び出したり、風景に見とれた対向車が突っ込んできたりするリスクの方が高いからなのかはわからないが、それを取りたてて気にするような利用者もいないようである。
スカイライン・ドライブの石積み擁壁石積みが低いため、車窓からの眺めをさえぎらない
スカイライン・ドライブの石積み擁壁石積みが低いため、車窓からの眺めをさえぎらない

 展望台からの眺めのすばらしさには理由がある。目の前の林をばっさり切って見通しをよくする、いわゆる通景伐採が行われているのだ。さすがに近年は公園管理組織の内部でも賛否両論あるそうだが、道路からの展望を重視する国立公園局では、現在もこのような伐採が行われている。道路際から最高の眺めを楽しむことができれば、わざわざそれ以外のところに違法駐車する理由はない。
 ちなみに、日本の場合、国立公園では伐採をせずに、2〜3階建て程度の高さの展望台を作ることが多い。改変する面積は少ないが、転落の危険や維持管理費用の負担が大きく、加えて高齢者や乳幼児を連れた家族にとっては利用しづらい。周辺の林も生長するので、中には展望の利かない「樹冠観察台」になってしまっているところもある。最近は、高齢者や車椅子利用者への配慮など、難しい問題も出てきている。シェナンドア国立公園で目の当たりにした利用者優先の施設計画と管理には、正直なところかなり抵抗もあったが、この思い切ったやり方こそが、アメリカの国立公園が持つ魅力でもある。
シェナンドア国立公園のDickey Ridgeビジターセンターからの眺め。ビジターセンターからの視界を確保するため、樹木が伐採されている。路傍駐車場からの眺め。写真右手の樹木が本来の植生。正面は樹木が伐採され、駐車場からでも素晴らしい景色を楽しむことができる。
シェナンドア国立公園のDickey Ridgeビジターセンターからの眺め。ビジターセンターからの視界を確保するため、樹木が伐採されている。路傍駐車場からの眺め。写真右手の樹木が本来の植生。正面は樹木が伐採され、駐車場からでも素晴らしい景色を楽しむことができる。

遠方から望む通景伐採の様子
遠方から望む通景伐採の様子
ワシントンDC訪問
ワシントンDCの中心部にそびえるワシントン・モニュメント

 2003年6月7日〜15日にかけて、ワシントンDC及びシェナンドア国立公園の訪問を目的とする「遠征」を行うことになった。2004年の11月から予定された魚類野生生物局(ワシントンDC)における私たちの研修について事前の打ち合わせが必要だったのと、その機会にシェナンドア国立公園での聞き取り調査を行うのが目的だった。また、ワシントンDCの街の様子や職場の雰囲気も見ておきたかった。ワシントンDCを訪れる以前は、アメリカの首都というと何やら東京とイメージがだぶって少し気が重かったものだ。
 マンモスケイブからワシントンDCまでは車で片道10時間以上の行程だった。到着した私たちを日本大使館のN書記官が迎えてくれた。まずは昼食に、ベトナムラーメンを御馳走していただいた。久々のしょうゆ味に感激、なぜか涙が込み上げてくる。客のほとんどがアジア系で、これにもほっとさせられた。考えてみると、あわただしい出国と初めての異国暮らしは緊張の連続だった。
 翌日、さっそく魚類野生生物局を訪問した。魚類野生生物局は、国立野生生物保護区の管理から絶滅のおそれのある野生生物の保護管理まで、幅広い業務を担当している。国立公園局同様、内務省の下部組織である。
 「ようこそ魚類野生生物局へ!」
 にこやかに笑いかけてくれるのは、私たちの研修担当者であるピーター・ウォードさんだ。ピーターさんは、大きな身体を小さく折りたたむようにして、私たちの下手な英語に耳を傾けてくれる。
 ピーターさんの配慮で、会議室には様々な部署から職員が集まってくれた。
 一通り業務説明を受け、「さあ、どの仕事がいいですか?」と聞かれる。個人的には、仕事をお手伝いしながら、その合間に聞き取り調査をしてまわりたいと思っていた。一方、魚類野生生物局の方では、せっかく日本からはるばる来たのだから、何か独立した仕事を任せたいと考えてくれていたようだ。
 国立公園での実務研修一辺倒の毎日とは少し違った研修になるかもしれないという気がしてきた。同じアメリカの連邦政府機関であっても、外国人研修生受け入れに対する姿勢にはそれぞれに個性がある。
魚類野生生物局本局前にて

 打合せが終わると、参加者全員で食事に出かけた。行き先は、何と日本食ビュッフェ。皆、意外と寿司なども好きなようで、箸の使い方も堂に入っている。
 海苔巻きは、海苔が内側に巻き込んであり、ゴマがまぶしてあったりと、寿司ダネには変わったものも多かった。味も悪くない。それにしても、久しぶりに食べた天ぷらのうまかったこと。ベトナムラーメン、日本食のビュッフェと、久しく触れることのなかった日本の味に出逢った辺りから、私たちのワシントンDCに対するイメージがぐっと好転しはじめた。
国立公園における入場料収入
 6月12日、この日はN書記官の調査に同行して、シェナンドア国立公園を訪問した。料金収入について説明を受けるためだ。国立公園における料金収入に関する調査は環境省からの依頼で、N書記官が国立公園局本局とシェナンドア国立公園、私がマンモスケイブ国立公園をそれぞれ分担することになっていた。国立公園局からはルディー・ダレッサンドロさんが同行してくれた。お二人は、まさに私の研修のきっかけを作ってくれた恩人だ。
 国立公園局には「フィー・プログラム」と呼ばれる制度があって、入場料収入が運用されているという。日本の国立公園でも、入場料などの料金を徴収し管理費に充てようと、これまでも検討がなされてきた。国立公園の現場は、とにかく人も予算も足りないのだ【1】
 また、入場料金の徴収には、利用の抑制効果もある。夏休みや紅葉のシーズンなどの利用誘導に効果を発揮することが期待される。→(その2)へ続く

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【1】 予算不足の国立公園の現場(日本の場合)
 私が環境庁(当時)に採用された平成6年頃は、今以上に事務所予算が逼迫していた。電話代も切り詰められ、込み入った長電話などしようものなら、「長い」と一言、所長に電話を切られてしまうこともあった。
 国立公園には、いわゆる「単独駐在」と呼ばれる1人事務所がある。このような事務所では、掃除はもちろんのこと、雪かき、経理、許認可をすべて一人でこなすことになる。その単独駐在を経験したことのある先輩職員は特に経費の無駄遣いに手厳しい。
 ごく最近まで、私の斜め前の席に座っていたA課長(研修受講時は調査官、第1話参照)などもその世代だ。私の電話が長くなってくると、たまりかねたように「おまえの電話はくどいなあ。」などと注意されるが、悪癖はなかなか治らない。
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