環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げ(ピックアップ)て、取材を行い記事としてわかりやすくご紹介しています。
トップページへ
シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第7回)
『観光と生物多様性』
アメリカ横断ボランティア紀行(第14話)
シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第6回)
『生物多様性への民間セクターの参画:事業の持続性、世界の安定のために』
シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第5回)
『生物多様性国家戦略:生物多様性条約の実施の現実』
アメリカ横断ボランティア紀行(第13話)
メルマガ申し込み 会員登録 ヘルプ サイトマップ
国内ニュース 海外ニュース イベント情報 環境Q&A 機関情報 環境リンク集 環境用語集 ライブラリ 森づくり宣言
No. アメリカ横断ボランティア紀行(第14話) ヨセミテ国立公園へ!
page 1/6 
1
23456
Issued: 2008.01.10
ヨセミテ国立公園へ![1]
ヨセミテ国立公園ハーフドーム
 レッドウッド国立州立公園から、針葉樹林の中を走る「レッドウッドハイウェイ」を南下する。セコイア・キングスキャニオン国立公園、そしてヨセミテ国立公園を目指して車を走らせる。同じ道をレッドウッドに向けて北上したときから、ほぼ4ヶ月。いよいよアメリカの国立公園制度の「聖地」ともいうべき、シエラネバダ山脈の山岳地帯を訪れる機会を得た。
 途中、カリフォルニアワインの生産地、ナパバレーを通る。道の両側にはブドウ畑が広がっている。サンフランシスコに近づくにつれ、大規模なワイナリーとワインツアー客の乗るバスやリムジンが多くなってきた。

アメリカ横断ボランティア紀行 INDEX はこちら


 目次
セコイア・キングスキャニオン国立公園
世界一の巨木、ジャイアントセコイア
セコイア・キングスキャニオン国立公園
セントラル・バレーの乾燥した牧草地

 まずは、セコイア・キングスキャニオン国立公園を訪問することにした。同じカリフォルニア州にあるというのに、レッドウッドからは1,000km弱もの道のりがあり、約10時間の行程だ。ナパを過ぎるとセントラル・バレーと呼ばれる盆地に入っていく。

 セントラル・バレーは、カリフォルニア州の太平洋に沿って横たわるコースト山脈と、内陸側のシエラネバダ山脈の間に広がる広大な盆地だ。太平洋側の湿潤な気候は、内陸に向かうに従って乾燥していく。
 セコイア・キングスキャニオン国立公園とヨセミテ国立公園は、シエラネバダ山脈の懐に位置している。ジャイアントセコイアの生育地として有名だが、鍾乳洞が多いことでも知られ、鍾乳洞内ではここにしか生息しない珍しい生物が発見されている【1】

【1】 ナショナルジオグラフィック
「鍾乳洞の生物」
キングキャニオン国立公園の入口には、巨大なジャイアントセコイアがそびえる

 セコイア国立公園とキングスキャニオン国立公園は、実はそれぞれ独立した国立公園だ。区域が隣接していることもあって、共通の公園事務所が管理を行っている【2】

 料金の徴収方法や印刷物からみても事実上1つの国立公園の体裁をとっているが、この2つの公園はそれぞれ異なる設置法に基づく独立した国立公園である。アメリカの国立公園は、原則的にはそれぞれ個別の設置法に基づいて設立され、それぞれ異なる法的な保護や利用目的を持っている。ただ、区域が近接しているような公園では、管理組織を合理化する目的で1つの事務所が複数の公園の管理を担当する例が見られる【3】

 日本の国立公園国定公園都道府県立自然公園が、「自然公園法」という1つの法律に基づいて地域指定されるのとはまったく異なる点だ。かつて日本では、こうした制度的な理由に基づいて、すべての国立公園の許認可手続きを霞ヶ関にある環境庁本庁で処理していた。ところが、経済発展などに伴って許認可件数が急増したことで、管理組織を合理化する必要が生じ、複数の国立公園をひとつの事務所が管轄する「ブロック・専決制【4】」が採用されることになった。例えば、私が環境庁に採用された平成6年当時は、中部山岳国立公園管理事務所が白山国立公園と上信越高原国立公園も兼轄し、それぞれの地域を担当するレンジャーから進達される許認可案件を処理していた(現在は、地方ブロックごとに地方環境事務所が設置され、ほとんどの許認可手続きはそこで行われている)。

 一方で、アメリカの国立公園は、現在も公園ごとに独立した管理体制を維持している。公園管理の根拠法がそれぞれ異なるという理由もあるだろうが、やはり予算人員ともに充実している巨大組織でこそ可能な体制と言える。
【2】 セコイア国立公園とキングスキャニオン国立公園
セコイア・キングスキャニオン国立公園周辺の地図
セコイア・キングスキャニオン国立公園の地図(国立公園局ウェブサイトより)
セコイア・キングスキャニオン国立公園とヨセミテ国立公園(国立公園局ウェブサイトより)
【3】 アメリカの国立公園における管理体制の合理化の例
ヨセミテ国立公園の南東部に隣接するデビルス・ポストパイル国立記念物公園(Devils Postpile National Monument)も、セコイア・キングスキャニオン国立公園管理事務所の管理下にある。また、サンフランシスコにあるゴールデンゲート国立レクリエーション地域では、近接するジョン・ミューア国立記念物公園を管理している。ワシントンDCに点在する国立公園ユニットを東西2つの公園管理事務所が管理している例などもある。
【4】 レンジャーの大先輩でもあるH教授がこの制度の導入を実現。詳しくは、H教授の環境時評(第7話)「レンジャーの現在と将来」参照。
http://www.eic.or.jp/library/
prof_h/h030807_4.html#b2
世界一の巨木、ジャイアントセコイア
 セコイア・キングスキャニオン国立公園の圧巻は、何と言ってもジャイアントセコイアだ。中でも、セコイア国立公園の「巨人の森」(Giant Forest)にある「シャーマン将軍の木」は世界で最大の体積を誇るとされ、「世界最大の生物」とも言われている。
シャーマン将軍の木にて
シャーマン将軍の木にて

 また、キングスキャニオン国立公園にある「グラント将軍の木」は、「国民のクリスマス・ツリー」として指定されている【5】
グラント将軍の木にて
グラント将軍の木にて
グラント将軍の木の上部
グラント将軍の木の上部

【5】 1926年4月28日に、第30代アメリカ大統領、ジョン・カルビン・クーリッジにより「国民のクリスマス・ツリー」(Nation's Christmas Tree)に指定された。毎年、クリスマスの二週間ほど前の日曜日に地域人々が集まり、盛大なクリスマス記念行事が行われる。
http://www.nps.gov/archive/
seki/xmastree.htm
 ジャイアントセコイアは、レッドウッド国立州立公園に分布するコースタルレッドウッドと共通の祖先を持つレッドウッドの一種でありながら、ずんぐりむっくりの樹形が特徴的だ。近くで見ると、とにかく根元と幹が太い。その森も、鬱蒼とした原生林というよりは、まさに孤高の「巨人」があちらこちらに悠然と立っているという雰囲気だ【6】
 コースタルレッドウッド同様、部厚い樹皮を持ち、幹の組織にはタンニンが多く含まれているため、害虫の被害を受けにくい。これが、2,000年を超える生存を可能とし、巨大な樹木に生長するゆえんでもある。
 かつて、この巨木を伐採して、見世物にしたり木材として売り払う輩が現れたことがあった。中にはヨーロッパにまで運ばれたものもあったそうだ。幸か不幸か、ジャイアントセコイアの伐採には費用や手間もかかる割に、肝心の材質が脆かった。せいぜいブドウの添え木や、鉛筆用材、屋根板、つまようじなどにしか使えなかったこともあって、伐採はその後下火になる。それでも、19世紀の終わりまでに、何千本ものジャイアントセコイアが切り倒されたと言われている。
 いずれにしても、ジャイアントセコイアの伐採が早期に終息したことが、国立公園の設立に有利に働いたことは想像に難くない。材質が軽く丈夫で、経済価値の高いコースタルレッドウッドの商業伐採が続き、森林の保護がなかなか進まなかったこととは対照的だ。
 ちなみに、国立公園局のマークには、ジャイアントセコイアが描かれている。このマーク(その形からアローヘッド(Arrowhead=「やじり」の意)と呼ばれる)は、1951年の7月に、当時の内務長官により承認されたものだ(告示は1962年)。国立公園の各種標識、印刷物の他さまざまなものに表示され、アメリカの国立公園のいわば「トレードマーク」といえる。セコイアの木が「植生」、バイソンが「野生生物」、山と水が「景観及びレクリエーション的な価値」、やじりの意匠が「歴史的・文化的な価値」をそれぞれ表している【7】
国立公園局のマーク「アローヘッド」と法執行担当のレンジャー
国立公園局のマーク「アローヘッド」と法執行担当のレンジャー(マンモスケイブ国立公園)

 ジャイアントセコイアの生育地であるシエラネバダ山脈は半乾燥地だ。セコイアの生育条件である「豊かな日光」と「温暖で湿潤な気候」のうち、水分条件が制限要因となる。分布域の標高、1,500メートルから2,400メートル程度の一帯は、ちょうど雨雲が停滞し、比較的降水量が多い。このような気象条件に恵まれた土地や、地形的に地下水が豊かな場所など、水分条件が良好なところにだけジャイアントセコイアが生育できるといわれている。このため、連続した原生林を形成するコーストレッドウッドと異なり、ジャイアントセコイアは「グローブ」と呼ばれる一群の森を構成し、それが点々と分布する。現在残されているグローブは75ヶ所で、そのうち30ヶ所がこのセコイア・キングスキャニオン国立公園内にある。
ジャイアントセコイア
ジャイアントセコイア。樹皮には野火のこげ跡が残る。
倒木の下を自家用車でくぐる「トンネル・ログ(トンネル丸太)」
倒木の下を自家用車でくぐる「トンネル・ログ(トンネル丸太)」
散策路に倒れていたジャイアントセコイア
散策路に倒れていたジャイアントセコイア(倒木の下に散策路を作った?!)

 一方、キングスキャニオン国立公園は、その雄大な渓谷とダイナミックな地形が特徴だ。谷底に向けて車を走らせると、その高低差に目がくらむ思いだ。セコイア国立公園の平和な巨木林とはかなり対照的な景観を有している。なお、その高低差は8,200フィート(約2,500メートル)あり、米国内で最も深い峡谷と言われているそうだ。地形的な特徴は違うものの、グランドキャニオンの高低差が約6,000フィート(1,830メートル程度)であることを考えると、キングスキャニオンの谷がいかに深いかがわかる。
 この公園にもさまざまな課題がある。中でも、人口密集地帯から流入してくる大気汚染物質は、樹木の抵抗性を損ない、害虫による立ち枯れの原因にもなっている。

【6】 ジャイアントセコイアとコースタルレッドウッドの分布域(国立公園局ウェブサイトより)
http://www.nps.gov/seki/
planyourvisit/upload/
sequoiaRange.pdf
【7】 国立公園局のマーク「アローヘッド」
国立公園局のマークの由来について(国立公園局ウェブサイトより)
セコイア・キングスキャニオン国立公園の歴史に関する本「巨木の危機(Challenge of the Big Trees)」
(Lary M. Dilsaver and William C. Tweed, 1990, Sequoia Natural History Association, Inc.; 国立公園局ウェブサイトより)
page 1/6 
1
23456
Copyright (C) 2004-2018 EIC NET. All rights reserved.