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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第15話) 国立公園局と州政府の協力
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Issued: 2008.03.06
国立公園局と州政府の協力 [1]
写真1:プレーリークリーク・レッドウッズ州立公園エルクプレーリーキャンプ場及びビジターセンターの入口標識
 「トウキョウのガバナー・イシハラって知ってる?」
 ワシントンDCの国立公園局国際課ルディーさんからメールが入った。石原慎太郎都知事のことだ。
 「まだ内々の話なんだけど、ガバナーが国立公園視察に興味をもっているらしいんだ。彼が日本の有力な政治家で首相候補のひとりというのは本当?」
 石原都知事といえば、日本では知らない人はいない大物政治家だ。かつて、第8代の環境庁長官を務め(1976年12月〜77年11月まで在任)、自然保護、国立公園、環境行政には大変造詣が深い。東京都には秩父多摩甲斐、小笠原、富士箱根伊豆の3つの国立公園もあり、それらの公園管理において先進的な取り組みを進めている。
 「石原都知事は日本でもっとも人気のある政治家の一人だと思います。有力な首相候補だったこともあり、都知事を務める現在も根強い待望論があります」

アメリカ横断ボランティア紀行 INDEX はこちら


 目次
石原都知事訪米?
バイタルサインモニタリング
外来生物対策
石原都知事訪米?
写真2:レッドウッド国立州立公園の入口標識。標識の右側に2本のレッドウッドをあしらった公園のマークがあり、その下に国立公園局とカリフォルニア州のマークが並んでいる

 ルディーさんは、いくつかの国立公園を推薦する用意を進めていた。その中にレッドウッドも入っていた。あの石原都知事が、こんな辺鄙なところに来るのだろうか。レッドウッドは日本ではほぼ無名の公園だ。
 「まだ東海岸か西海岸かもわからないから何とも言えないんだけど、先方の興味の一つは連邦政府と州政府との協力体制にあるらしいんだ」
 確かにこの公園は米国唯一の「国立州立公園」だ。その管理にはおもしろい工夫がいろいろある。もちろん、その分苦労も多い。
 「心配しなくてもいいよ。まだレッドウッドに決まったわけじゃない。候補地は他にもあるんだ」
 とりあえず、このやりとりを資源管理科学部門長のテリーさんに報告する。
 「それはすごい。もし実現することになったら全面的に協力するよ」
 かなり好意的な反応に、胸をなでおろす。
 考えてみれば、レッドウッドは訪問先としておもしろいところだ。レッドウッドの年間訪問者数は40万人程度と少ないが、原生林は「第一級品」だし、アメリカの国立公園史上も大きな意味あいを持っている(レッドウッド国立州立公園の歴史概観 第11話参照)。これまでの私自身の経験からも、利用者数の多過ぎない公園やシーズンオフに訪問する方が、担当者の話をじっくりと伺うことができる。

バイタルサインモニタリング
 レッドウッド国立州立公園にあるのは、レッドウッドの原生林だけでない。原生的な海岸線もあって、急峻な海食崖とその前に広がる砂浜は、多様ないきものの生息地になっている。
 2004年当時、この海域生態系のモニタリング計画はまだなく、その策定に向けたスコーピング会合(予備検討会議)が開催されたばかりだった。会合には、学識研究者、国立公園局の各担当部局、太平洋沿岸の国立公園ユニットの職員など50名以上が参加した【1】

 この会合には、国立公園局のアドバイザーであり、海域のモニタリングの第一人者でもあるGray Davis氏が出席していた。デービス氏は、チャネルアイランド国立公園などを例にとりながら、モニタリングの重要性と、管理計画へのフィードバックなどについて基調講演を行った。
 その中で強調されていたのが「バイタルサイン」だった。すべての環境要素をモニタリングするのではなく、とにかく真っ先に変化の兆候が現れる指標種に的を絞ってモニタリングを行う。これにより効果的に生態系変化の兆候を把握することができ、迅速に対応することができる。特に、海域は陸上の生態系よりも調査を行う上での制約が多い。そのため、自然環境の変化をとらえることが難しく、対策も遅れがちだ。「バイタルサインモニタリング」によって、限られた予算や人員で効果的なモニタリングを行おうというのだ。

ワークショップでのエクスカーション(現地視察)の様子
写真3:ワークショップでのエクスカーション(現地視察)の様子
河口付近でのサケマス類の生息環境は大幅に悪化した
写真4:原生林の伐採による大規模な土石流の発生や河川改修などにより、河口付近でのサケマス類の生息環境は大幅に悪化した


 それまでの研修で、国立公園局は公園内の自然環境に関する科学的な調査が進んでいると感じていた。ところが、今回のワークショップに参加して、モニタリングの進め方など、まだ検討段階のものが多いこともわかった。日本が相当遅れをとっているのは確かだが、モニタリングに「正解」はない。まだまだ試行錯誤の段階だということを知り、正直ほっとした。
 しかしながら、日本でも、こういった検討を今始めなければならないのではないかというあせりも感じる。特に、今後は気候変動の影響が顕在化してくると言われている。こうした「バイタルサインモニタリング」が、20年、30年後の国立公園管理に大きく貢献するように思える。

【1】 レッドウッドにおける海域生態系のモニタリング計画策定のためのスコーピング会合
 会合では、潮間帯、潮間帯上部の植生、潮間帯下部海中のそれぞれ3つのワーキンググループに分かれ、以下の点に関する議論が行われた。
 ・現在と将来の海洋生態系の健全性に関する検討
 ・海洋生態系の健全性に異常な変化を引き起こすストレス源の抽出
 ・それらの異常な変化を早期に発見することのできる指標(バイタルサイン)の抽出
 ・異常な変化と認めることのできる変化について
 ・インベントリー及びモニタリング計画のための調査のプロジェクト要綱を作成するために必要な情報の収集方法
外来生物対策
 スコッチブルームは、春から夏にかけて小さな黄色い花をつける潅木だ。園芸用植物としてヨーロッパから持ち込まれた植物だったが、現在は野生化してしまっている。繁殖力が旺盛なため完全除去が難しく、固有の植物の生育環境や景観に大きな支障が生じている。種子は数十年間発芽能力を失わないため、埋土種子が残されているうちは、毎年駆除作業を続けなければならない。
 ここレッドウッドでもスコッチブルームの駆除作業が行われているが、撲滅までの道はまだまだ遠い。さらに、公園区域を出ると道の両側に密生し、花が咲き乱れているようなところもある。少し油断すると、道路に沿いにまた新しい種子が持ち込まれ、広がっていく。

写真5:黄色いかわいらしい花をつけるスコッチブルームだが、地域の生態系には深刻な影響を与えている
写真6:スコッチブルームの大群落。国立公園区域から一歩外に出れば、こんな光景もめずらしくない


 「あ、またそこにあった気がするんだけど」
 調査に行く途中、助手席から道沿いにスコッチブルームを探していた妻がまた見つけたようだ。路肩に車を止めて確認すると、やはりスコッチブルームだ。写真を撮ってGPSで位置を記録してから引き抜く。種子が土の中に残っている可能性が高いので、この地点を来年の駆除計画に加えてもらう必要があるためだ。
 こうした外来生物の駆除作業は人海戦術で行われる。私たちのようなボランティアは当然として、その他にも様々な手段で作業員を確保している。カリフォルニア州立青少年更生施設(California Conservation Corp)の若者や受刑者の受け入れはその一例である。また、メンテナンス部門に「サポートグループ」と呼ばれる兼任の支援部隊があり、植生管理業務の実施を補助してくれている。メンテナンス職員は長年この公園に勤務しているベテラン職員が多く、公園内の歩道や施設に詳しい。現場での作業効率が大幅に向上する。

 イングリッシュアイビーは、日本でも見られる園芸用のツタの一種だ。スコッチブルーム同様、ヨーロッパから持ち込まれ、野生化した。林床に茎を這わせ、木に絡みつき、よじ登る。絡みつかれた木は枯れてしまうこともある。景観上の支障も大きい。

写真7:右手に持っているのが抜きとったスコッチブルーム。左手の道具で根を引き抜く。根が残らないようにゆっくり引き抜くのがコツ
写真8:写真中央上に見える光沢のある葉がイングリッシュアイビー


 私たちは、この植物の駆除計画を策定するための予備調査を任された。次年度に、大規模な駆除作業が予定されていたため、駆除計画や契約額見積もりのために分布状況を把握することが必要になったのだ。GPSと地図を使って、歩道沿いに分布位置と面積を記録していく。ボランティアの募集もこの計画に基づいて行われる。この「ボランティアを使って、ボランティアの受け入れ準備をする」のが、アメリカの国立公園のボランティアプログラムの特徴のひとつだ。計画的なボランティアの活用の工夫がいろいろなところに見られる。

写真15:ボランティアのエイミーさんと妻。3人でチームを組んで歩道沿いに調査を行う。

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