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2009年環境重大ニュース
小笠原諸島の世界自然遺産登録を目指して
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No. 小笠原諸島の世界自然遺産登録を目指して 実録・環境省レンジャーものがたり(第5回)
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Issued: 2009.10.22
小笠原諸島の世界自然遺産登録を目指して[1]
ユウゼンとリュウモンサンゴ
 目次
「世界自然遺産」とは
小笠原諸島が自然遺産候補地に
小笠原における外来種の問題と、その対策
「世界自然遺産」とは
南島の半化石ヒロベソカタマイマイ
南島の半化石ヒロベソカタマイマイ
南島空撮
南島空撮
 小笠原諸島の世界自然遺産登録に向けて、先月(9月)末、日本政府は世界遺産委員会事務局に推薦書(暫定版)を提出しました。
 テレビやマスコミ等でも世界遺産がよく紹介されていますが、そもそも「世界遺産」とは何なのでしょうか。
 世界遺産は、人類全体の世界の遺産として、世界遺産条約に基づき登録されているもので、文化遺産と自然遺産、複合遺産に分かれます。
 日本の世界遺産の登録状況は、文化遺産が日光の社寺、姫路城、原爆ドーム等の計11か所、自然遺産が屋久島、白神山地、知床の3か所で、文化遺産と自然遺産の両面の価値を有する複合遺産は、現在のところありません。世界中の登録件数でも、複合遺産の数はとても少なく、また文化遺産に比べ自然遺産の数が少ない傾向があります。
 世界遺産へ登録されるためには、遺産価値のクライテリア(評価基準)である(1)地形・地質、(2)生態系、(3)自然景観、(4)生物多様性の1つ以上(ただし、自然景観を含む場合は2つ以上)に合致する、顕著で普遍的な価値を有することが条件となります。いわゆる世界でナンバーワンの価値をもっていること。これに加えて、国内の法律などにより、評価される価値の保護・保全が十分に担保されていること、さらに、関係行政機関、団体が連携・協力を図り、適正に管理しながら事業を進める基本方針を示した管理計画を有すること等の条件を満たすことが必要とされています。
つつじ山のムニンツツジ
つつじ山のムニンツツジ
マルハチ
マルハチ
小笠原諸島が自然遺産候補地に
 2003年に環境省と林野庁が開催した「世界自然遺産候補地に関する検討会」では、登録基準と必要条件を満たす可能性が高い地域として、知床、小笠原諸島、琉球諸島の3地域が選定されました(このうち知床は2005年に登録が実現)。
 その後、2007年1月29日に、日本の暫定リスト(世界遺産として価値があると考え、将来推薦を行う意志のある候補リスト)に自然遺産として小笠原諸島を記載することを決定しました。
小笠原群島に40羽程度生息すると推定されているアカガシラカラスバト
小笠原群島に40羽程度生息すると推定されているアカガシラカラスバト
オガサワラオオコウモリ
オガサワラオオコウモリ
 小笠原諸島が該当すると整理したクライテリアは3つあります。
 その1つめは、「地形・地質」。海洋性島孤の形成過程を、マグマ組成の変化や火山活動の位置の変化により観察できる場所があります。代表的な岩石としてボニナイトがあり、小笠原の各所に露頭を観察することができます。世界中でボニナイトの露頭を見ることができるのは、世界中でも、ここ小笠原以外にはほとんどありません。ボニナイトの露頭では、風化を受けて堅い部分(古銅輝石)だけが残り、海岸に集まった緑色のうぐいす砂が集まってきます。晴れている日は緑がかった砂浜がきらきら光りとてもきれいです。
兄島の乾性低木林
兄島の乾性低木林
湿性高木林内に生えるウドノキ
湿性高木林内に生えるウドノキ
 2つめのクライテリアは、「生態系」です。小笠原はこれまで大陸と一度も繋がったことのない海洋島であり、島にたどり着いた限られた動植物を元に独自の進化が進みました。このため、固有の生態系が成立したのです。内地の植生とは違う独特の景観を有した乾性低木林及び湿性高木林内に多数の貴重な動植物が生息、生育しています。小笠原固有の陸産貝類であるカタマイマイ属の形や色の多様性を見ると、今でも進行中の進化の過程を観察することができ、まさに“進化の実験室”といえます。
アニジマカタマイマイ
アニジマカタマイマイ
貨幣石(有孔虫)
貨幣石(有孔虫)
 3つめは、「生物多様性」です。小笠原は海洋島としてオセアニア系、東南アジア系、本州系など多様な起源の種が混在しています。また、アホウドリ類3種をはじめとする多くの海鳥類が繁殖し、オガサワラオオコウモリ、メグロなど固有種・固有亜種等も多く、世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生息、生育地になっています。
コアホウドリ
コアホウドリ
鳥島から聟島に移送したアホウドリの雛
鳥島から聟島に移送したアホウドリの雛
 このような素晴らしい小笠原諸島を世界自然遺産へ登録するためには色々な課題があります。その1つが、外来種問題です。
小笠原における外来種の問題と、その対策
父島の玄関口である二見湾

 東京の竹芝桟橋から「おがさわら丸」に揺られて約25時間半で父島の二見港に到着します。一見手つかずの自然に見えますが、実は1830年の入植以降、島外から様々な外来種が入り込み、固有の生物相に影響が生じた結果の景観です。
 外来種は意図的、非意図的に人間が小笠原諸島に持ち込んだ生物で、維管束植物だけでも既に300種類以上が定着していると言われています。
 外来種も、もともとの生息・生育地(原産地)では生物同士の棲み分けが行われていて、その地の生態系の構成要素の1つとなっています。しかし、移入された土地には、競合種や天敵がなかったりして、大繁殖することも珍しくはありません。特に小笠原は一度も大陸と接したことがない海洋島であるため、外からの侵入に弱い傾向があります。その理由は何なのでしょうか。
 海の真ん中に浮かぶ海洋島である小笠原に動植物が侵入するには、漂流(海流)してきたり、風によって運ばれてきたり、鳥などの動物に付着してやってきたり、自力で泳いだり飛んだりしてたどり着くなどの方法しかありません。
原生的な自然が残る南硫黄島

 このため、島の形成から現在までの間に植物ではブナ科が生育していませんし、動物では両生類が見られません。小笠原には小笠原独自の生態系が成り立ってきました。いわば、温室育ちのひ弱な生態系といってよいかも知れません。“ガラスの生態系”と揶揄されることもありますが、小笠原の動物はのんびり過ごしてきたのか競争することが苦手だったようです。
 内地でよく見られるサルトリイバラも小笠原ではトゲを生やしません。毒のある植物も少なく、また山を歩いていても沖縄で見られるハブはいません。
 こうした小笠原独自の生態系に他の場所から外来種が入ってくると、元々生息していた在来の動植物との競争に打ち勝ってニッチを奪ったり、捕食対象として根こそぎ食べ尽くしたりと、甚大な影響を与えます。
アサヒエビネ

 現在、世界自然遺産登録へ向けた取り組みとして環境省をはじめとして林野庁、東京都、小笠原村、NPO等が連携協力しながら外来種対策の各種事業を実施しています。
 環境省では、種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されているアカガシラカラスバト、オガサワラシジミ、ムニンツツジ、アサヒエビネ等の小笠原諸島の貴重な固有種について、保護増殖事業や各種外来種対策事業を実施しています。
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