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目次
国立公園局自然資源プログラムセンター
資源管理プログラムの歴史
プログラムセンターの必要性
【1】
第15話 国立公園局と州政府の協力/バイタルサインモニタリング
【2】米国科学アカデミーの勧告
ロビン報告書(National Academy of Sciences Advisory Committee on Research in the National Parks: The Robbins Report)
この報告書については、第14話(その6)の傍注20に解説がある。
【3】レオポルド報告書
1960年代のアメリカの国立公園における自然管理のあり方に関する動きについては、第14話(その6)の「アメリカの国立公園管理の歴史 ──1960年代という時代──」を参照。
【4】自然資源チャレンジプログラム
 本プログラムが承認されたのは1999年。一連のレビューによって国立公園における科学部門の必要性が指摘されてから実現するまで、実に40年弱を要したことになる。
 なお、自然資源チャレンジプログラムについては、第23話(その4)のコラムをご参照いただきたい。
 また、関連する全米モニタリングネットワークの地図は、第23話(その2)の図6をご参照いただきたい。
【5】“何でも屋”
日本の国立公園を管理している職員は、今でも「何でも屋」だ。
【6】大気モニタリングステーションについて
モニタリングステーションについては、第8話(その1)「国立公園における霞の問題」をご参照いただきたい。
全米の国立公園内のモニタリングステーション位置図(国立公園局ウェブサイト
国立公園内には、大気汚染物質に由来する霞(ヘイズ)の状態をモニタリングするためのウェブカメラが設置されており、リアルタイムで画像とデータが提供されている。
National Park Service Web Cameras

No.177

アメリカ横断ボランティア紀行(第25話)
大陸横断(フォートコリンズ)

Issued: 2010.06.03

大陸横断(フォートコリンズ)[1]

国立公園局自然資源プログラムセンター
国立公園局自然資源プログラムセンター

 コロラド州のフォートコリンズには、国立公園局自然資源プログラムセンターがある。このセンターは、私たちがマンモスケイブやレッドウッドで勤務していた、資源・科学部門の「総元締め」のような機関だ。
 このセンターに勤めるジムさんに面会をお願いしていたところ、快くインタビューに応じてくれた。国立公園全体のモニタリングや科学的調査に関するお話を伺う、絶好の機会になるだろう。

国立公園局自然資源プログラムセンター

 自然資源プログラムセンター(Natural Resource Program Center)は、国立公園局全体の自然資源管理プログラムを支援するために設置されたセンターだ。様々な公園でのモニタリング業務などを支援したり、全米の調査データをとりまとめて自然資源の状況をとりまとめたレポートを作成したりしている。
 「お元気ですか? まだまだワシントンDCまでは遠いですねえ」
 水質・魚類などの分野を担当する水資源部(Water resource division)の部長であるジムさんは、役職名に似合わずとても気さくな方だ。ジムさんとは、レッドウッド国立州立公園の海域バイタルサインモニタリング設計ミーティングでお会いしていた【1】

 「このセンターは、国立公園局の資源管理及び科学部門(Resource Stewardship & Science Directorate)の一部を構成しています」
 つまり、このセンターは本局組織に属している。具体的には、本局の資源管理・科学担当副局長の直属組織となっている。センターには大気環境、生物、環境基準(Environmental Quality)、地質、情報および水質の各部門が設置されている。
 「このセンターがコロラド州にあるのには、いくつかの理由があります」
 その一つは、コロラド州が地理的に米国のほぼ中心にあり、各地のアクセスに便利であること。もう一つには、自然資源分野で有名なコロラド州立大学があることだという。
 「大学との共同調査や優秀な学生インターンを受入れるメリットは大きいのです」
 水資源部門の年間予算は数百万ドル程度、膨大な公園面積を対象としなければならない国立公園の組織としては、決して大きな予算とはいえない。
 「それでも、各国立公園には専門職員が十分に配置されているわけではないため、こうしたプログラムの効果は大きいのです」
 特殊な生物やモニタリング計画の策定などの専門的なノウハウを一元化し、必要な公園に情報提供する。
 「各公園の資源管理やモニタリングのニーズを満たし、支援を行うことがこのセンターの役割なのです。プログラムセンターは、10年ほど前から徐々に組織が成長してきた、国立公園局の中でも比較的新しい組織なのです」

資源管理プログラムの歴史

 国立公園局の資源管理プログラムは、直接的には国立公園局が連邦議会に働きかけてできたものであるが、実現に至るまでにいろいろな経緯があったという。
 「国立公園局の管理は、利用面に極端に偏っていました。バランスを取って保護面の充実を図るために、局内に科学・モニタリング部門をつくり、資源の状況を科学的に把握しながら各国立公園の管理を行うべき、という声が内外から起こりました」
 米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)が、国立公園局の資源管理についてレビューを行い、科学的なプログラムを拡充すべきとの勧告を行ったのは1963年のことだ【2】
 また、レオポルド報告書も、科学的なプログラムが不足していることを指摘している【3】

 「その結果として、国立公園局が連邦議会へ要求したイニシアティブが『自然資源チャレンジプログラム(Natural Resource Challenge)』でした」
 この要求は認められ、関係予算として年間1,000万ドル(約12億円)が配分された【4】

 「国立公園局が発足した当初、公園管理者の多くはナチュラリストや生物学者でした。このような職員が公園管理のためのすべての業務をこなす、いわゆる『何でも屋』だったのです【5】
 「ところが、国立公園局の業務が変質し、管理する公園の規模が大きくなるにつれ、管理者の役割も変っていきました」
 国立レクリエーション地域など、都市部の公園管理を新たに担当することになった。アクセスの容易な都市部の利用者数は急増するとともに、公園内での犯罪への対応に多くの労力を要することとなった。
 「それに対応するため、取締官(Law Enforcement)のような専門職が多くなりました」
 公園の主たる業務は、徐々に人(利用者)の管理、犯罪への対応、密猟の監視、交通違反の取締などに重点が置かれるようになった。また、このような取締業務は危険が伴うため、生物学を学んできた職員を従事させることができなくなった。
 「つまり、『職員の分業化』が起きたのです。その後、公園の管理職の多くは、このような取締官出身者により占められることになりました」
 それにより、自ら資源管理業務は軽んじられることとなり、それが公園内の自然環境の荒廃を見過ごす結果につながった。
 「現在でもこの傾向は強く、ほとんどの国立公園局の所長は取締官出身で占められています」
 それでも例外はある。海域モニタリングで有名なチャネルアイランド国立公園(カリフォルニア州)の所長は資源管理部門の出身である。
 「『パークレンジャー』は、もともとナチュラリストを指す言葉でした。ところが、現在は『レンジャー』という役職名は取締官を意味しています」
 また、対外的にはインタープリターを「パークレンジャー」と称しており、混乱が生じる場合もある。
 「このように国立公園の管理は、資源ベースの考え方から、『利用者』をどのように管理するかという方向に変化してきました」
 これを修正するのが、自然資源チャレンジプログラムの狙いでもあった。

プログラムセンターの必要性

 「プログラムセンターの重要な存在意義は予算配分にあるのです」
 各公園に配分される通常の予算額は限られており、あまり余裕がない。その一方で、日々の管理業務の中では利用者の安全確保や取締は最も緊急性・重要性が高い。資源管理が重要だといっても、現場ではどうしても軽視されがちだ。従って、公園内での予算配分も少なくなる。
 「このセンターの役割は、各公園の資源管理部門が必要とする予算を届けることにあります」
 資源管理予算を通常予算の一部として配分してしまうと、他の業務に回されてしまいかねない。そのため、モニタリング経費はプログラムセンターを通じて直接配分される。
 「先ほどもご説明したとおり、センターは担当副局長直属の組織です。そのため、地域事務所や現場の公園管理事務所との直接的な指揮命令系統(line authority)には属していません」
 センターは各公園の管理には一切関与せず、あくまで、資源管理に関する予算配分と技術支援のみを行っている。必要なプロジェクトに予算付けし、技術的助言をしている。
 「現在でも各公園の所長は強い権限をもっています。中には、自分勝手な管理を行ってしまうような所長もいます。そうした場合、科学的な情報はあまり活用されない傾向もあります」
 ところが、NEPAに基づくパブリックインボルブメントのプロセスが事態を大きく変えつつあるという。
 「事業を行う際には、一般市民に対し事業に関する説明責任が求められます。説得力のある説明を行うためには、客観的なデータの提示、科学的情報に基づく代替案などが必要です」
 公園内の自然の状況など、これまであまり優先順位が高くなかった情報についても、より詳細に調べて記録する必要が出てきた。このような業務には、従来の取締官やインタープリターでは対応できない。つまり、公園職員の構成全体にも大きな変化をもたらすことになった。
 さらに、公園システム全体としても、難しい問題が顕在化してきた。それは「公園境界を越える問題」であった。
 「例えば大気汚染問題などは、個々の公園の努力だけでは効果は上がりません。公園の外側から流入する大気汚染物質をとめることはできませんから」
 同じことは、公園内を流れる河川の水質汚染にもいえる。
 「ところが、国立公園局全体として行動すれば大きな力を発揮できるということに気がついたのです」
 例えば、各国立公園の大気モニタリングステーション【6】をネットワーク化し、国全体のバックグラウンド汚染のデータとして把握することに取り組んでいる。
 「このデータがあれば、国立公園局は大気浄化法(Clean Air Act)に基づき勧告を行うことができるのです。こういった国全体のデータのとりまとめを行うのもこのセンターの役割なのです」

マンモスケイブ国立公園の大気モニタリングステーション
マンモスケイブ国立公園の大気モニタリングステーション

モニタリングステーションの内部。こうした計器類以外に、簡単な実験機器も備えられている
モニタリングステーションの内部。こうした計器類以外に、簡単な実験機器も備えられている

マンモスケイブ国立公園内の展望台に設置されたモニタリング用ウェブカメラ
マンモスケイブ国立公園内の展望台に設置されたモニタリング用ウェブカメラ

ウェブカメラの正面
ウェブカメラの正面

ウェブカメラが撮影しているマンモスケイブ国立公園の風景。降雨後のためか霞が少ない。中央を流れているグリーン川は降雨の影響で増水し、茶色に濁っている
ウェブカメラが撮影しているマンモスケイブ国立公園の風景。降雨後のためか霞が少ない。中央を流れているグリーン川は降雨の影響で増水し、茶色に濁っている。
この地点のウェブカメラの画像は以下から参照できる。
National Park Service>Mammoth Cave NP Web Camera

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