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Issued: 2011.01.17
2010年11月、中国政府は初めての中国自動車汚染白書(正式名称は「中国自動車汚染防止対策年報(2010年度)」を発表した。これまで自動車汚染に関する全国的な統計は一切発表されていなかっただけに、この白書の内容は大いに注目される。
2010年2月に第1回環境国勢調査(正式名称は「全国汚染源全面調査」)結果を発表して以降、中国の環境統計は充実の一途をたどっている。
解説を加えながら、2010年度中国自動車汚染白書のポイントをまとめてみた。
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(注1)この統計では機動車(エンジンのついている車両)を自動車(大型及び一般乗用車並びに貨物車)、低速車(三輪自動車及び低速貨物車)及びオートバイ(普通バイク及び軽量バイク)の3種類に分類している。本文中で「自動車等」と表現した場合はこの3種類を全部含む(参考2)。
最近の中国における自動車生産販売の増加は著しい。中国の自動車生産台数はこの10年間うなぎのぼりで増加してきた。1991年にはわずか70万台あまりしか生産されなかったが、2000年に200万台を超えると年々急激に増加するようになり、2009年には前年比48.3%増の1,380万台近くまで伸びた(図1)。そして2009年には米国を抜いて初めて世界一の自動車生産販売大国になった。全国の自動車保有台数も2009年末で約6,200万台(オートバイ及び低速車も含めると約1.7億台)に達している。
このように2009年に大きく増加したのは、2008年秋に発生した国際金融危機に対応するための内需拡大政策によるところが大きい。例えば排気量1.6リットル以下の乗用車を対象に自動車取得税の軽減措置(10%→5%)などを導入した(2009年12月末まで実施)。この増加の勢いは止まらず、2010年の生産販売台数は約1,800万台まで伸びている。
一方、このような急激な増加に伴い、自動車が大中規模都市地域における大気汚染の主要な汚染源になってきている。

【図1】中国国内の自動車生産台数の推移
2009年の全国自動車等保有台数は16993.5万台、2008年と比べて9.3%増加している。このうち自動車は6209.4万台(同年から21.8%増)、低速車は1331.0万台(10.8%減少)、オートバイは9453.1万台(5.6%増加)で、その割合はそれぞれ36.6%、7.8%、55.6%である。2009年の全国自動車等保有台数の構成を図2に示す。

【図2】2009年全国自動車等保有台数の構成
2009年全国の自動車保有台数では、大型及び一般乗用車が4840.8万台で78.0%を占めた。このうちマイクロ乗用車が408.8万台、小型乗用車が4124.8万台、中型乗用車が180.6万台、大型乗用車が126.6万台であった。貨物車は1368.6万台に達し、22.0%を占めた。このうちマイクロ貨物車が37.1万台、軽型貨物車が783.9万台、中型貨物車が303.5万台、重型貨物車が244.1万台であった。車種別自動車保有台数の構成を図3に示す。

【図3】車種別自動車保有台数の構成
2009年全国の自動車保有台数のうち、ガソリン車が5050.7万台に達し81.3%を占めた。ディーゼル車は1096.0万台で17.7%、天然ガス車は62.7万台で1.0%を占めた。燃料別自動車保有台数の構成を図4に示す。

【図4】燃料別自動車保有台数の構成
中国では1983年に初めて新車の排ガス基準を公布した。その後新車の排ガス基準は急速に発展し、2000年以降は欧州で広く適用されているユーロI、IIなどの自動車排出ガス基準に準じて、国家1級排出基準(国I)、国家2級排出基準(国II)などを順次定めており、最新の最も厳しい基準は国家4級排出基準(国IV)である。国Iは2000年、国IIは04年、国IIIは07年から全国で適用されている。国IVは北京市(08年)、上海市(09年)で先行して適用されている。
2009年、全国の保有自動車の国家排出基準適合状況は、国Iより前の排ガス基準適合車が1062.1万台で17.1%、国I排ガス基準適合車は1598.7万台で25.7%、国II排ガス基準適合車は1973.1万台で31.8%、国III及びそれ以上の排ガス基準適合車は1575.5万台で25.4%を占めた。排ガス基準別自動車保有台数の構成を図5に示す。

【図5】排ガス基準別自動車保有台数の構成
1980〜1989年、全国の自動車保有台数は178.3万台から511.3万台に増加し、年平均増加率は11.1%であった。1990〜1999年、自動車保有台数は551.4万台から1452.9万台に増加し、年平均増加率は10.2%であった。2000〜2009年、自動車保有台数は1608.9万台から6209.4万台に増加し、年平均増加率は14.5%であった。
1980〜2009年の全国の自動車保有台数の変化を図6に示す。

【図6】全国の自動車保有台数の変化
2009年全国の自動車、低速車及びオートバイから排出された汚染物質総量の推計値とその割合は図7のとおりである。
なお、今回の統計にはガソリン車、天然ガス車及びオートバイが排出する粒子状物質(PM)排出量は含まれていない。

【図7】2009年全国自動車等汚染物質排出量およびその割合
自動車について燃料タイプ別の汚染物質排出量とその割合を図8に示す。なお、ディーゼル車の粒子状物質(PM)排出量は56.1万トンであった。

【図8】燃料タイプ別自動車汚染物質排出量およびその割合
自動車について排ガス基準別の汚染物質排出量とその割合を図9に示す。

【図9】排ガス基準別自動車汚染物質排出量およびその割合
自動車について全国での汚染物質排出量の変化を図10と図11に示す。
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自動車等からの汚染物質排出に関してまとめると次のとおりである。
2009年全国自動車等からの排出汚染物質は5143.3万トン、このうち一酸化炭素(CO)は4018.8万トン、炭化水素化合物(HC)は482.2万トン、窒素酸化物(NOx)は583.3万トン、粒子状物質(PM)は59.0万トンであった。
自動車が汚染物質排出総量に占める割合は非常に高く、一酸化炭素(CO)と炭化水素化合物(HC)では70%を越え、窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)では90%を越えていた。
車種別では、全国の大型及び一般乗用車からの一酸化炭素(CO)と炭化水素化合物(HC)の排出が貨物車を上回り、このうち中小型乗用車の寄与が一番大きかった。一方、貨物車からの窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出割合は大型及び一般乗用車を上回り、中でも重型貨物車の寄与がもっとも大きかった。
燃料別では、全国のガソリン自動車からの一酸化炭素(CO)と炭化水素化合物(HC)排出割合はディーゼル車を上回り、排出総量の7割強を占めた。一方、ディーゼル車の窒素酸化物(NOx)排出割合は排出総量の6割近く、粒子状物質(PM)排出割合は排出総量の9割以上を占めた。
排ガス基準別にみると、自動車保有台数の17.1%を占める国Iより前の排ガス基準適合車からの排出量が主要汚染物質4種に占める割合は50%以上であった。一方、保有台数が25.4%の国III以上の排ガス基準適合車では、その排出量は全体の6%未満であった。このことから厳格な排ガス基準の適用による汚染物質排出削減効果は明らかである。
1980〜2009年、全国自動車汚染物質排出量は上昇の一途をたどった。このうち1980〜2000年、汚染物質排出量と自動車保有台数は比例関係にあった。2000年以降、汚染物質排出量の増加はいくぶん緩和されたが、これは厳格な自動車排ガス基準の適用及び汚染排出量の多い「黄色ラベル車」(注2)の淘汰と関係する。
以上の他、この白書では新車、使用過程車及び自動車用燃料の環境保全管理について紹介しているが、ここでは省略する。
(注2)黄色ラベル車
「黄色ラベル車」とは、汚染物質排出が国I基準に達しないガソリン車と国III基準に達しないディーゼル車、オートバイ、三輪自動車及び低速貨物車を指す。「黄色ラベル車」の概念はすでに1999年にあり、当時北京市環境保護局が国I基準に達しない自動車に黄色標識(ステッカー)を配布・標示させたため、「黄色ラベル車」と呼ばれるようになった。
2009年6月、国務院弁公庁は「内需拡大促進・自動車家電淘汰更新実施方案」(国弁発〔2009〕44号)を通達し、財政助成方式を取り「黄色ラベル車」の淘汰更新を奨励するよう提起した。その後、財政部、商務部、環境保護部など十部門が合同で「自動車淘汰更新実施方法」(財建〔2009〕333号)を通達し、「黄色ラベル車」淘汰更新の範囲と基準、自動車廃棄及び助成資金申請、審査、発給に対して明確に規定した。その中で、環境保護部門が「黄色ラベル車」の認定・検査及び廃棄自動車解体処理実施の監督管理に当たっている。
今回の統計値は過去及び現在の自動車等のタイプ別保有台数から全国の排出総量を推計したもので、1980年からの自動車汚染物質排出量統計データが一足飛びに整備されることになった。このデータが全国及び各地域における実際の自動車等からの大気汚染物質排出量とどの程度正確にリンクするかは不明であるが、少なくとも過去からの相対的な自動車汚染物質排出総量の変化を見る上では非常に意義深い統計データであると思われる。
ところで、2011年からは大気中の窒素酸化物の総量規制(総量削減)が実施されることが決まっており、この規制では自動車に起因する窒素酸化物をどのように規制するかが大きなポイントになる。この削減量の算定に当たって、今回の統計データ整備は各地域で非常に有用になろう。
ただし、保有台数から一律に算定しているので、各地域できめ細かな交通管理対策や走行量規制などを実施しても実際の削減量にカウントされないおそれがある。このような対策効果を反映させるためにもこの統計は今後さらに改善の余地がありそうだ。
| 分類 | ||
|---|---|---|
| 自動車 | 大型及び一般乗用車 | 大型 |
| 中型 | ||
| 小型 | ||
| マイクロ型 | ||
| 貨物車 | 重型 | |
| 中型 | ||
| 軽型 | ||
| マイクロ型 | ||
| 低速車 | 三輪(三輪自動車) | |
| 低速(低速貨物車) | ||
| オートバイ | 普通バイク | |
| 軽量バイク | ||
写真・図表・記事:小柳秀明
| 小柳秀明 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長 | |
| 1977年 | 環境庁(当時)入庁、以来約20年間にわたり環境行政全般に従事。 |
| 1997年 | JICA専門家(シニアアドバイザー)として日中友好環境保全センターに派遣される。 |
| 2000年 | 中国政府から外国人専門家に贈られる最高の賞である国家友誼奨を授与される。 |
| 2001年 | 日本へ帰国、環境省で地下水・地盤環境室長、環境情報室長等歴任。 |
| 2003年 | JICA専門家(環境モデル都市構想推進個別派遣専門家)として再び中国に派遣される。 |
| 2004年 | JICA日中友好環境保全センタープロジェクトフェーズIIIチーフアドバイザーに異動。 |
| 2006年 | 3月 JICA専門家任期満了に伴い帰国。 |
| 4月 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所開設準備室長。 | |
| 7月から現職。 | |
| 2010年 | 3月 中国環境投資連盟等から2009年環境国際協力貢献人物大賞(International Environmental Cooperation-2009 Person of the Year Award) を受賞。 |