一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.202

Issued: 2011.12.28

2011年環境重大ニュース

 2011年3月11日、東日本大震災と大津波による甚大な被害が東日本一帯を襲いました。余震も頻発し、いまだに大きな揺れが続いています。夏には、各地で大雨や台風による被害が続発。海外でもタイの洪水が大きな被害を及ぼしました。防災への日頃の備えについて、改めて考えさせられた一年だったようにも思います。
 被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 いろんな意味で、ターニングポイントとなったできごとのあった、2011年だったように感じています。皆さんにとっては、どんなニュースが印象に残っているでしょうか。本記事では、環境ニュースを中心に、今年一年をふりかえってみたいと思います。
 なお、この「環境重大ニュース」は、EICネット環境ニュース編集部の独断と偏見による選定です。あらかじめご了承ください。


第1位:3.11 東日本大震災 ──復興に向けた取り組みと災害廃棄物の処理

 3月11日(金)14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波は、東北地方をはじめ、東日本各地に激甚な被害を及ぼしました。日本国内で自然災害による死者が1万人を超えたのは戦後初。歴史的な大災害だったことを多くの人々が身をもって体験することになったと言えます。
 首都圏では、地震直後からJR・私鉄各線とも全線が終日運行停止して、職場などから徒歩で帰宅の途に着く人の列が続き、公的施設などで一夜を明かす帰宅困難者も多発しました。停電のため、暗く不安な夜を過ごした世帯もありました。
 東京にあるEICの事務所でも、10階建てビルの最上階だったこともあって、大きな揺れに書類棚やパーティションが崩壊、正常業務に戻るまでしばらくかかったことを付け加えさせていただきます。

 東日本大震災の影響による環境対策について、環境省では特設ページを設けて、災害廃棄物の処理と対策、被災ペットへの対策、環境放射能等のモニタリング、廃建築物等のアスベスト対策、被災地でのボランティア活動の受け入れ対策、電力供給の逼迫に伴う節電対策、法令上の手続きに対する特例等の情報提供などについて取りまとめています。

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第2位:福島第一原発の事故と、原子力発電の見直しおよび自然エネルギーへの期待

 同じく3月11日の東日本大震災による地震と津波の被害によって、東京電力福島第一原子力発電所では全電源の喪失に伴う原子炉冷却不全が発生、大量の放射性物質が漏洩するという深刻な事故に至っているのは、皆さんご存じの通り。原子力・安全保安院が4月に発表した暫定評価では、原子力事故等の国際的な評価尺度に基づいてもっとも深刻な「レベル7」に引き上げたことを発表。レベル7の事故は、1986年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)以来の2例目です。

 避難区域内外で故郷を追われることになった人たちは、11万人を超えるとの発表もありました。放射性物質による汚染は、地震や津波による被害とはまた違って、一見何の変化もないようでいながら、生態系への影響を長期にわたって与える可能性があります。
 大気中への放射性物質の放出や、原発内の汚染水の海洋・地下水への漏出・放出、食品や水道水をはじめとする環境中への拡散とそれに伴う経口摂取による内部被爆の問題など、多くの人たち(特に子を持つ親)にとって、今も深刻で重大な関心事になっていると言えます。
 また、事業者等にとっては、輸出品に対する放射線検査についての対策なども迫られるなど、困難な状況に直面することになっています。

第3位:小笠原諸島が世界自然遺産に登録、平泉の文化遺産登録は復興のシンボルに

 6月24日、パリで開催されていたユネスコの第35回世界遺産委員会で、日本政府が推薦した小笠原諸島世界自然遺産登録が決定しました。日本の自然遺産登録決定は、2005年の「知床」以来6年ぶり、4件目となっています。小笠原諸島は、海洋島として独自の進化を遂げた固有の動植物が多いこと、また海洋性島弧の形成と進化の過程が沈み込みの初期段階から現在進行中まで見ることができるなど、その特徴的な地形・地質などが高く評価されました。
 また、現地時間の翌25日には、「平泉」の文化遺産登録が決定。07年の「石見銀山遺跡とその文化的景観」に次ぐ、国内12ヶ所目となりました。東日本大震災で大きな被害をうけた岩手県内の文化遺産登録で、被災地復興のシンボルとしても注目を集めました。

 なお、9月には政府の世界遺産条約関係省庁連絡会議で「武家の古都・鎌倉」と「富士山」の世界文化遺産への推薦も決定。今後、2012年2月に正式な推薦書がユネスコ世界遺産センターに提出される予定になっています。

第4位:節電の推進と、計画停電の混乱

 東日本大震災の影響等によって、東北電力や東京電力管内の各地の発電所が損傷を受け、電力供給の低下・不足が心配された2011年。被災地以外でも、福島第一原発事故の影響で全国の原子力発電所が長期にわたって点検・運転停止となったことで、全国的な電力需要の逼迫と節電への呼びかけが大々的にされました。電力需要のピークにあたる時間帯の電力消費を低く抑える“ピークカット”や、電力消費の時間を比較的電力需要の少ない夜間などに移動したりこの間に蓄熱したりする“ピークシフト”の呼びかけなどが、具体的な節電メニューとともに紹介されてきました。
 震災直後の計画停電の混乱も記憶に新しいところです。
 電力会社各社による、電力の需給予測や需給状態を掲載する「でんき予報」の発表がされたり、政府の「電力需給逼迫警報」発令時の携帯電話・スマートフォンへのメール送信サービスなども開設されました。

 節電メニューの内容自体は、これまで言われてきたこととそれほど大きく変わったものではありませんが、よくも悪くも、今年ほど多くの人の切実な意識と取り組みとして浸透したことはなかったといえます。

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第5位:北極にオゾンホールが出現!

 10月、(独法)国立環境研究所は、北極上空でのオゾン層破壊が、観測史上最大規模であり、初めて南極上空のオゾンホールに匹敵する破壊が起こったことを確認したと発表しました。北極圏における15カ国・30か所のオゾンゾンデ観測点における観測による結果でした。低オゾン領域は、スカンジナビア半島にかけての極渦内で観測され、さらに中国・ロシア国境付近にまで達すると予測されました。
 背景には、温室効果ガスの近年の増大に伴う成層圏の寒冷化で、これまで大規模オゾン破壊が起きないとされていた北極圏上空でもオゾン破壊が引き起こされる低温状態が維持されるためとされています。
 南極オゾンホールの回復状況とともに、今後は北極上空のオゾン層の状態にも注視していくことが必要と注意喚起されました。

第6位:通勤等での自転車利用の促進と、自転車交通の取り締まり強化へ

 体力増強やエコ志向などによる自転車ブーム。東日本大震災による帰宅困難も影響したようで、通勤時の長距離走行に自転車を利用する“自転車通勤”も急増しているようです。駐停車規制の強化の影響等による配送業での自転車の利用なども含めて、ここのところ自転車を取り巻く環境に大きな変化が起きているといえます。
 ファッショナブルでカッコウのよい自転車や周辺ギアが一般層に浸透してきて、これまでともするとマニアックな人たちだけに広まっていた自転車の世界が、一般にも広がってきているといえるのかもしれません。その反面、市街地での走行マナーや改造自転車の横行なども目立ってきています。
 都内での通勤・通学中の自転車事故は、震災後の3月以降、前年同月に較べてほとんどの月で増えているとの統計もあります。交通事故が全体的に減少している反面、自転車と歩行者による事故の比率は上がってきていて、自転車の飲酒運転や、ブレーキ不整備のピスト型(競技用自転車)の走行などに対する取り締まりの強化が大きくクローズアップされた一年でした。

第7位:環境関連法の制定と抜本的改正

 8月、再生可能エネルギー促進法が制定。国内でも本格的な再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入が開始することになりました。同様の制度では、2000年に制定したドイツの再生可能エネルギー法が有名です。負担のあり方や制度の運用についての議論や、原子力発電の行方とスマートグリッド網の整備など、今後の国内のエネルギー政策にはこれまでにない緊張感と真剣味を帯びた注目が集まっています。
4月には、環境アセス法改正が成立。2010年の通常国会(第174回)で参議院を通過したものの衆参両院の議決を得られず、その後、同年の臨時国会(第176回)では衆議院での可決を得たものの、同じ国会での衆参両院の議決を得られないまま不成立となっていたものです。計画段階での戦略的アセスの導入が盛り込まれた大きな改正でした。
6月には、改正環境教育推進法が成立。法律の名称も新たになり、国民・民間団体・国・地方自治体が対等の立場で協働しながら環境問題に取り組むことをめざしています。

第8位:国際森林年と生物多様性

 2011年は、「国際森林年(the International Year of Forests)」でした。前年の「国際生物多様性年」を引き継ぎつつ、世界中の森林の持続可能な経営保全の重要性に対する認識を高めることを目的に国連が定めたものです。
また、森林に限らない生物多様性への取り組みとして、今年2011年から2020年までの10年間が「国連生物多様性の10年」と位置づけられています。こちらは、生物多様性に関する区切りの年となった2010年から先の展望として、国際社会が協力して生態系保全に取り組むことを決議したもので、2010年9月の第65次国連総会で採択されました。

3月の東日本大震災では“自然の脅威”とそれを制御・克服しようとする科学一辺倒主義の限界を見せつけられたと言えます。今後の社会が、森林や生物多様性の保全も含めて、自然との共生や自然への畏敬の念をベースにした地域の再生へとシフトしていくターニングポイントとなるでしょうか。

なお、本稿と直接的な関係はまったくありませんが、EICネットでは10月より「森づくり宣言」サービスを開始しています。企業や団体、または個人が国内の森林保護への支援を宣言し、二酸化炭素削減の活動に一歩踏み出すためのプログラムです。ぜひご活用ください。

第9位:2012年の「Rio+20」に向けて 付:ポスト京都議定書の議論に一つの決着が(COP17の成果)

 年が明けると2012年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットから、ちょうど20年目に当たります。1992年6月に開催された地球サミット(国連環境開発会議)は、100余ヶ国の各国首脳が参加して、アジェンダ21森林原則声明が合意され、気候変動枠組条約の署名開始や生物多様性条約の採択など大きな成果をあげた、歴史的な会合です。
 その20周年を機に、明けて6月には「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催されます。2011年中には、その準備会合などが重ねられてきました。

 年末には、気候変動枠組条約のCOP17が南アフリカ共和国のダーバンで開催。ポスト京都議定書の枠組みについては、当面の京都議定書の延長と、新たな法定文書を作成するためのプロセス「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」の立ち上げ、またそれによって可能な限り早いタイミングで議定書、法定文書または法的効力を有する合意成果を2020年に発効させて実現に移すための道筋が合意されました。長く議論が紛糾したポスト京都議定書に一筋の光明が射したといえます。ただ、京都議定書の延長については、日本を含むいくつかの国が第二約束期間の不参加を盛り込んだ形での成果文書採択となりました。新たな枠組みでは、すべての国の参加が合意できるのか、まだまだ予断は許されません。

第10位:ソーシャルネットワーキングシステムの普及に拍車

 日本では10月14日に発売が開始されたアップル社のスマートフォン最新モデル「iPhone4S」。ソフトバンクだけでなく、auからも発売され、大きな話題を呼んでいます。開発の中心人物だったアップル社創業者で元CEOのスティーブ・ジョブズ氏の訃報もありました。
 iPhone以外のスマートフォンも含めて、若者を中心に急速な普及が見られ、電車内などでも、指でつまんだり弾いたりするような独特の操作方法でスマートフォン携帯を使う人をよく見かけるようになりました。

 一方、そうしたスマートフォンでの利用も含めて、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の隆盛も見逃せません。これまで、匿名での掲示板が主流だった日本でも、実名による実生活の延長としてのネットワークシステムとして定着してきていることが伺えます。特に今年は、新春にロードショー公開されて話題を呼んだ映画『ソーシャルネットワーク』の影響もあるのか、facebookの普及が急速に伸びていて、12月現在で日本における利用者数は600万人を突破。国民の20人に1人ほどが使っているとの発表です。うち実に半分の人たちが、今年になって使いはじめたとのデータもあります。
 このfacebook、日本での普及以上に世界各国での普及と活用がめざましいのと同時に、その大きな影響力が注目を集めています。2010〜2011年にかけてアラブ諸国で起きた大規模反政府デモや抗議活動、通称「アラブの春」では、ソーシャルネットワーキングサービスでの呼びかけが大きく影響したとの見方もされています。

 SNSの利用によって、かつて同じ時を過ごした知人・友人たちとの再会を果たしたり、その後に発展することのなかった一期一会の出会いが新たな展開を見せたりと、これまでの関係性やつながりの中では持ち難かった、時空間の制約を越えたゆるやかなつながりを共有できたりしているようです。それも、バーチャルな世界に閉じたものにとどまることなく、現実の動きを作り、互いの言動に影響しあう新たな関係性や行動を生み出していることが大きな特徴といえます。
 環境活動等へのソーシャルメディアの活用などについては、それほど特徴的なものはあまり見られていませんが、今後、環境分野での利用に期待が持たれます。
 なお、当EICネットやエコナビでもSNSツールの利用が可能です。ぜひ、ご利用ください。

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