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No.208

Issued: 2012.06.28

中国発:2011年中国環境白書を読む[2]

都市騒音の状況

 第四に、全国の都市騒音環境質は全体的に比較的良好である。全国77.9%の都市地域の騒音レベルは全体的に見て一級及び二級レベルである。環境保護重点都市地域の騒音レベルは一級及び二級が全体の76.1%を占めている。

環境放射線等の状況

 第五に、全国の放射線環境質は全体的に良好である。環境電離放射線レベルは安定を保っており、核施設、核技術利用プロジェクト周辺の環境電離放射線レベルは全体的にみて明確な変化は現れていない。環境中の電磁波レベルは全体的に見て比較的良好な状況である。電磁波を発射する施設周辺の環境中の電磁波レベルは、全体的にみて明確な変化は現れていない。

(解説)
 昨年3月に日本で発生した福島原発事故以降中国政府も環境放射線の状況に過敏になり、昨年の一定期間環境保護部のHP上で放射線モニタリングの結果を公表するようになった。今年の白書では各地域の放射線レベルを公表している。昨年まではみられなかったものである。

生態建設の進展

 第六に、生態建設の進展は比較的良好である。2011年末までに全国で設立された各種類型、各級の自然保護区は2,640カ所、総面積は約14,971万ha、そのうち陸域面積は14,333万haで国土面積の14.9%を占める。

農村の環境問題

 第七に、農村の環境問題は日増しに顕在化している。農村の経済社会が速いスピードで発展するにつれて、農業の産業化、都市農村の一体化の進展がますます速くなり、農村と農業からの汚染物質の排出量が大きくなり、農村環境の形勢は厳しいものになっている。2011年、環境保護部は全国の364の村で農村モニタリングモデル業務を組織展開した。その結果によると環境大気質が基準を達成している村は81.9%を占め、農村の地表水は軽度の汚染状態にあり、農村の土壌サンプルの基準超過率は21.5%で,ゴミ捨て場周辺、田畑、及び企業周辺の土壌汚染が比較的深刻であった。

農村では住宅建設がどんどん進む
農村では住宅建設がどんどん進む

農村に設置された共同ゴミ捨て場
農村に設置された共同ゴミ捨て場

農村ののんびりとものを売る商店
農村ののんびりとものを売る商店

(解説)
 中国には約60万近くの行政村、273万以上の自然村が存在し、今後農村環境保護はますます重要な地位を占めるようになる。第12次5カ年計画でも農村環境保護を強調している。2011年はじめて農村の環境モニタリングモデル業務をスタートした。各省(自治区、直轄市)でそれぞれ少なくとも9以上の農村を選定して大気、河川、飲用水源地、土壌汚染の状況などを調べた。
 また、2011年全国排水中の化学的酸素要求量排出総量は前述のとおり2,499.9万トンであったが、その内訳を見ると農業源からのものが1,186.1万トンで半分近くの約47%を占めている。排水中のアンモニア性窒素についても同様の傾向で、排出総量260.4万トンのうち農業源が82.6万トンで約32%を占めている。このことからも農村の環境問題の解決が重要課題であることがわかる。

2011年に講じた五大重要措置

 環境保護の歴史的転換を深く推進するため、2011年以来国務院は環境保護に対して五つの方面の重要事項を行った。
 第一は「環境保護強化の重点業務に関する意見」の審議通過と発出である。
 第二は国家環境保護第12次5カ年計画の発出である。
 第三は第12次5カ年計画省エネ排出削減総合性業務方案の発出である。
 第四は新しい環境大気質基準の修正同意と発布である。
 第五は第7回全国環境保護大会の開催である。中国共産党中央政治局常務委員、国務院副総理の李克強同志は第7回全国環境保護大会に出席し、重要講話を発表し、更に一歩、第12次5カ年計画の環境保護目標任務、重点業務及び政策措置を明確にした。

(解説)
 第一と第三は筆者の前回の記事(中国発:第12次5カ年計画下の重要環境政策文書出揃う)で解説しているので参照されたい。第二の国家環境保護第12次5カ年計画は2011年12月15日に発表された環境保護分野で最上位となる5カ年計画である。また、第五の第7回全国環境保護大会は2011年12月20日に開催された。この全国環境保護大会というのは中国国内で開催される環境関係の会議のうちもっとも重要な会議で概ね5年に1回開催され、毎回総理級が出席する。1983年に開催した第2回大会では環境保護を国家の基本政策として明確化した。また、2006年の第6回大会では温家宝総理が「3つの転換」という指導思想を発表した。今回の第7回大会では以下の内容が強調された。

  • 経済発展時の環境保護及び環境保護時の経済発展を堅持する。
  • 安定した成長と経済発展様式の変革促進のための重要な方策として環境保護を行う。
  • 人の健康に有害な際だった環境問題の解決が主要な優先課題である。
  • あらゆる環境保護活動の改革・革新を推進する。
  • 低コスト、高効率、低排出で持続可能な新しい環境保護の道筋を探求する。

さいごに ──2011年白書の大きな変化

 2011年中国環境状況公報は、第12次5カ年計画期間中の第1年目の年報としてとりまとめられたが、データのとりまとめ方法でこれまでとは大きく異なっている点が幾つかあるのが特徴だ。
 その第一は統計の基礎となる母集団が大きく変化、すなわち統計の基礎となるデータが大幅に拡充されている点だ。このため汚染物質排出総量など「絶対量」をみた統計では算定対象とする母集団の大規模増加により過去の統計との連続性がなくなっているから、過去の排出トレンドと単純な比較を行うと大きな間違いを犯すことになる。参考例として全国排水中の化学的酸素要求量排出量の推移の例などを図7及び図8に紹介しておく。
 第二は、都市大気質の評価にみられるように評価対象とする母集団を変更している点だ。これは全国の多くの都市におけるモニタリングの充実により、より適切に評価するために母集団を変更したもので、割合で表示しているのでデータの質に大きな影響は出ていないが、これも前者同様過去と単純な比較を行わないよう注意が必要だ。
 第三は評価指標を変えたことによる基準達成状況等の変化だ。湖沼の汚染状況の解説でも触れたが、主要な汚染物質の一つである全窒素を評価指標からはずしたため基準達成率が大きく変化した。
 これらのことは公報の本文中でも注釈で簡単に触れられているが、見落としやすいので注意が必要だ。

【図7】化学的酸素要求量排出量の推移
【図7】化学的酸素要求量排出量の推移
※拡大図はこちら

【図8】工業固体廃棄物発生量の推移
【図8】工業固体廃棄物発生量の推移
※拡大図はこちら

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関連情報 |

2011年中国環境状況公報(中国語)
http://jcs.mep.gov.cn/hjzl/zkgb/2011zkgb/
2012年6月5日プレスリリースの速記録(中国語)
http://www.mep.gov.cn/zhxx/hjyw/201206/t20120606_231024.htm
中国発:第12次5カ年計画下の重要環境政策文書出揃う
http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu111116.html
中国発:2010年中国環境白書を読む
http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu110707.html
中国発:金融危機下で環境保全を前面に−2009年中国環境白書を読む
http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu100618.html
中国の環境保護行政が自信をつけた1年―2008年中国環境白書を読む
http://www.eic.or.jp/library/pickup/img/pu195/pu_pdf_02.pdf
中国の環境データは信用できる?―2007年中国環境白書を読む
http://www.eic.or.jp/library/pickup/img/pu195/pu_pdf_01.pdf

写真・図表・記事:小柳秀明

〜著者プロフィール〜
小柳秀明 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長

1977年  環境庁(当時)入庁、以来約20年間にわたり環境行政全般に従事。
1997年 JICA専門家(シニアアドバイザー)として日中友好環境保全センターに派遣される。
2000年 中国政府から外国人専門家に贈られる最高の賞である国家友誼奨を授与される。
2001年 日本へ帰国、環境省で地下水・地盤環境室長、環境情報室長等歴任。
2003年 JICA専門家(環境モデル都市構想推進個別派遣専門家)として再び中国に派遣される。
2004年 JICA日中友好環境保全センタープロジェクトフェーズIIIチーフアドバイザーに異動。
2006年 3月 JICA専門家任期満了に伴い帰国。
 4月 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所開設準備室長。
 7月から現職。
2010年 3月 中国環境投資連盟等から2009年環境国際協力貢献人物大賞(International Environmental Cooperation-2009 Person of the Year Award) を受賞。