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No.209

Issued: 2012.07.17

第四次環境基本計画の策定(環境省総合環境政策局環境計画課)

目次
検討の経緯と、第三次環境基本計画との違い
目指すべき持続可能な社会の姿
今後の環境政策の展開の方向
震災復興、放射性物質による環境汚染対策
まとめ

 平成24年4月27日に、第四次環境基本計画が閣議決定しました。平成23年3月に環境大臣から中央環境審議会に対して諮問が行われ、一年間にわたる審議を経て4月18日付けで環境大臣に答申されたものです。

 政府の環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱を定める「環境基本計画」は、環境基本法の第15条に基づいて定められるもので、今回の計画は、平成6年、平成12年、平成18年に続く第四次の計画となります。
 環境基本計画は、政府が一体となって進める施策とともに、地方公共団体や国民をはじめ、多様な主体に期待する役割についても示しています。
 本稿では、第四次環境基本計画の概要について解説します。

検討の経緯と、第三次環境基本計画との違い

 「環境・経済・社会の統合的向上」などの環境政策の展開の方向とともに10の重点分野政策プログラム、目標・指標による進行管理などを定めた第三次環境基本計画が平成18年4月に策定されてから5年の月日が経過した平成23年3月、第四次環境基本計画の策定に向けた検討が開始されました。
 この5年の間で、環境施策に一定の進展が見られる一方で、新興国における経済成長や世界人口の増大の中で、地球温暖化、廃棄物問題、生物多様性の損失等の世界規模の環境問題が深刻化しており、引き続き取り組んでいくべき課題も残っています。また、検討を開始した早々の3月11日には東日本大震災とこれに伴う原子力発電所事故が発生し、膨大な量の災害廃棄物の発生や放射性物質による環境汚染など、未曾有の被害が生じました。

 このため、第四次となった本計画は、東日本大震災及びそれに伴う原子力発電所事故の影響や、グリーン経済に関する国際的な議論、地球環境問題に関する国際交渉の状況等を踏まえたものとなっています。
 とりわけ、第三次計画との主な違いとして、以下の3点があげられます。

  1. 環境行政の究極目標である持続可能な社会を、「低炭素」・「循環」・「自然共生」の各分野を統合的に達成することに加え、「安全」がその基盤として確保される社会であると位置づけました。
  2. 「社会・経済のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進」、「国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進」、「持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進」の他6つの事象面で分けた重点分野からなる9つの優先的に取り組む重点分野を定めました。
  3. 新たに、自立・分散型エネルギーの導入や災害廃棄物の広域処理等の東日本大震災からの復旧・復興に際しての環境面からの取組や、除染等の放射性物質による環境汚染対策について盛り込みました。

目指すべき持続可能な社会の姿

目指すべき持続可能な社会の姿
[拡大図]

 第三次環境基本計画や21世紀環境立国戦略(平成19年6月閣議決定)において示された目指すべき持続可能な社会の姿、東日本大震災や原子力発電所事故等を背景に「安全・安心」という視点の重要性が高まったことを踏まえ、第四次環境基本計画においては、目指すべき持続可能な社会とは、「人の健康や生態系に対するリスクが十分に低減され、「安全」が確保されることを前提として、「低炭素」・「循環」・「自然共生」の各分野が、各主体の参加の下で、統合的に達成され、健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域にわたって保全される社会」であるとしました。


今後の環境政策の展開の方向

表 9つの重点分野
[拡大図]

 環境基本計画では、目指すべき持続可能な社会の姿を実現する上で重視すべき方向として、以下の4つの考え方を提示しています。

  1. 政策領域の統合による持続可能な社会の構築(環境・経済・社会、環境政策分野間の連携)
  2. 国際情勢に的確に対応した戦略をもった取り組みの強化(国益と地球益の双方の観点)
  3. 持続可能な社会の基盤となる国土・自然の維持・形成
  4. 地域をはじめ様々な場における多様な主体による行動と参画・協働の推進

 また、持続可能な社会の構築に向け、優先的に取り組む9つの重点分野を設定しています。これは、限られた財源を有効に活用するためにも、緊急性、重要性の高い問題を当面優先的に取り組むべき重点分野として取り組むことが必要だからです。


震災復興、放射性物質による環境汚染対策

 東日本大震災及びそれに伴う原子力発電所事故を受けて、本計画では「震災復興」、「放射性物質による環境汚染対策」を“章”として別個に取り上げています。その取組内容は、以下のとおりです。

東日本大震災からの復旧・復興に際して環境の面から配慮すべき事項

 特に、被災地における、(1)自立・分散型エネルギーの導入等の推進、(2)広域処理を含む災害廃棄物の処理、(3)失われた生物多様性の回復等の取組──について進めていきます。

放射性物質による環境汚染からの回復等

 まずは、放射性物質汚染対処特措法および特措法に基づく基本方針、「中間貯蔵施設等の基本的な考え方」、「除染ロードマップ」に基づく放射性物質による汚染廃棄物の処理、除染等の取組を実施します。それとともに、放射線による人の健康へのリスクの管理及び野生動植物への影響の把握を進め、また同時に、環境基本法等の改正を踏まえた今後の放射性物質による環境汚染に対する対応の検討にも取り組んでいきます。

まとめ

 今後は、政府一体となって本計画において掲げた施策の推進に全力を挙げて取り組んでいきます。本計画には、国民、事業者、民間団体の各主体に期待する役割についても記述しています。政府、各主体の協力のもとで、持続可能な社会の実現に向けて取組を進めていくことが重要です。

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記事:環境省総合環境政策局環境計画課

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