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No.221

Issued: 2013.6.21

中国発:2012年中国環境白書を読む

重度の大気汚染で霞む北京空港(2013.6.8.筆者撮影)
重度の大気汚染で霞む北京空港(2013.6.8.筆者撮影)

 2013年6月4日、中国環境白書(「2012年中国環境状況公報」)が発表された。この中国発シリーズでも恒例になったが、今年の白書の要点をまとめてみた。

 まず環境全体の状況について次のように総括している。
 「2012年の全国の環境は全体的には平穏な状態を保っているものの、地表水は全体として軽度の汚染状態にあり、海洋環境は全体的には比較的良好であり、沿岸海域の水質は普通(まあまあ)であった。都市環境大気は全体的には穏やかな安定した状態にあり、酸性雨分布地域には顕著な変化はみられなかった。都市環境騒音と道路交通騒音は基本的には穏やかな安定した状態を保っており、放射線環境は全体的には良好であった。」

2012年主要汚染物質の排出状況

 2012年の全国廃水排出量は684.6億トン(2011年652.1億トン、以下同じ)で、そのうち化学的酸素要求量(COD)の排出量は2,423.7万トン(2,499.9万トン)、アンモニア性窒素(NH3-N)の排出量は253.6万トン(260.4万トン)、廃ガス中の二酸化硫黄(SO2)排出量は2,117.6万トン(2,217.9万トン)、窒素酸化物(NOx)排出量は2,337.8万トン(2,404.3万トン)、工業固体廃棄物の発生量は32.9億トン(32.5億トン)であった。

【表1】第12次5カ年計画(2011〜2015)の主要汚染物質削減目標と削減実績
【表1】第12次5カ年計画(2011〜2015)の主要汚染物質削減目標と削減実績
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[解説]
 2011年3月に策定された国民経済と社会発展第12次5カ年計画では、4つの汚染物質(SO2、NOx、COD、NH3-N)について排出総量削減に関する拘束性目標(強制目標)が策定された。5年間の累計で8〜10%排出総量を削減するというものである(表1)。
 2012年の実績は、COD3.05%削減、NH3-N2.62%削減、SO24.52%削減、NOx2.77%削減という結果で、昨年の単年度削減目標(表1)をすべて達成した。とくに2011年に5.73%増加したNOxは、現状維持を目標としていたが削減に転じることができた。この理由として、昨年9,670万kwの能力の火力発電設備に250台の脱硝施設を設置し、火力発電設備全体に占める脱硝施設設置の割合を2011年の16.9%から27.6%まで高めたことなどが挙げられる。
 一方、脱硫施設も4,725万kwの能力の火力発電設備に新たに設置され、火力発電設備全体に占める脱硫施設設置の割合は92%まで高まった。

水質汚染の状況

  全国の地表水の水質は全体的に軽度の汚染状態にある。長江、黄河、珠江、松花江、淮河、海河、遼河、浙闽片河流、西北諸河及び西南諸河等十大流域の国がコントロールする観測点(国設測定局)中、I〜III類、IV〜V類及び劣V類の水質の割合はそれぞれ68.9%(2011年は61.0%、以下同じ)、20.9%(25.3%)、10.2%(13.7%)であった(図1)。主要な汚染指標はCOD、BOD(生物化学的酸素要求量)及び過マンガン酸塩指数であった。珠江流域、西南諸河及び西北諸河の水質は優良の状態で、長江及び浙闽片河流の水質は良好な状態で、黄河、松花江、淮河及び遼河は軽度の汚染状態で、海河は中度の汚染状態であった。モニタリングを行った60の湖沼(ダム)中、富栄養化状態の湖沼(ダム)は25.0%で、そのうち軽度の富栄養化状態と中度の富栄養化状態の湖沼(ダム)の割合はそれぞれ18.3%、6.7%であった(図2)。モニタリングを行った198の都市の4,929カ所の地下水モニタリングポイント中、優良・良好・比較的良好な水質のモニタリングポイントの割合は42.7%で、比較的悪い・極めて悪い水質状態のモニタリングポイントの割合は57.3%であった(図3)。

【図1】2012年全国十大流域等水質類型別割合
【図1】2012年全国十大流域等水質類型別割合 ※拡大図はこちら

【図2】2012年重点湖沼(ダム)富栄養化状況
【図2】2012年重点湖沼(ダム)富栄養化状況 ※拡大図はこちら

【図3】2012年全国地下水水質類型別割合
【図3】2012年全国地下水水質類型別割合 ※拡大図はこちら


[解説]
 河川については昨年の白書に引き続き十大流域(以前は七大水系分類)についての総合評価を採用している。水質分類のうちI〜III類は飲用水として利用可能な水質である。各流域別の汚染程度の状況は図4のとおりである。国が直接コントロールする62の重点湖沼(ダム)の汚染状況は表2及び図5のとおりである。飲用に適するI〜III類の湖沼(ダム)は38で、IV〜V類は17、劣V類は7であった。主要な汚染指標は全リン、COD及び過マンガン酸塩指数であった。昨年までの重点湖沼(ダム)は26であったが、今回は62に増加しているので比較の際には注意が必要である。

【表2】2012年重点湖沼・ダム水質状況
【表2】2012年重点湖沼・ダム水質状況 ※拡大図はこちら

【図4】2012年十大流域水質類型別割合
【図4】2012年十大流域水質類型別割合 ※拡大図はこちら

【図5】2012年62重点湖沼・ダム水質類型別分布
【図5】2012年62重点湖沼・ダム水質類型別分布 ※拡大図はこちら


海域汚染の状況

【図6】2012年全国沿岸海水域水質類型別割合
【図6】2012年全国沿岸海水域水質類型別割合 ※拡大図はこちら

 海洋の環境質は全体的には比較的良好であり、沿岸海域の水質は普通(まあまあ)であった。全国の沿岸海域の水質は全体的には穏やかな安定した状態にあり、水質を環境基準のクラス別にみるとI類に適合するものが29.9%、以下II類39.5%、III類6.7%、IV類5.3%、劣IV類18.6%であった(図6)。
 4大海域では、黄海及び南シナ海沿岸海域の水質は良好で、渤海沿岸海域の水質は普通で、東シナ海沿岸海域の水質は非常に悪かった。
 9カ所の重要海湾中、黄河河口の水質は優良で、北部湾の水質は良好であったが、遼東湾、胶州湾及び闽江河口の水質は悪かった。渤海湾、長江河口、杭州湾及び珠江河口の水質は非常に悪かった。前年と比べて黄河河口及び闽江河口の水質は好転したが、その他の海湾の水質には基本的に変化はなかった。


【図7】2012年沿岸海域汚染の状況
【図7】2012年沿岸海域汚染の状況 ※拡大図はこちら

[解説]
 具体的な汚染状況は図7をみるとわかりやすい。白書本文では各海域に流入する汚染物質の量についても推計されている。

都市大気汚染の状況

【図8】2012年全国325地区級市以上の年の大気環境基準達成状況(現行環境基準による評価)
【図8】2012年全国325地区級市以上の年の大気環境基準達成状況(現行環境基準による評価) ※拡大図はこちら

【図9】2012年全国粒子状物質(PM10)濃度分布
【図9】2012年全国粒子状物質(PM10)濃度分布 ※拡大図はこちら

【図10】全国113環境保護重点都市汚染物質濃度年別比較
【図10】全国113環境保護重点都市汚染物質濃度年別比較 ※拡大図はこちら

【図11】2012年全国酸性雨地域分布
【図11】2012年全国酸性雨地域分布 ※拡大図はこちら

  1996年に制定した環境大気質基準(以下、現行環境基準という。)に照らして、325の地区級及びそれ以上のレベルの都市(一部の地区、州、盟の所在地及び省が管轄する市を含む)及び113の環境保護重点都市のSO2、NO2(二酸化窒素)及び粒子状物質(PM10)の3項目の汚染物質について評価すると、2012年の全国都市環境大気質は全体的には穏やかな安定した状態にあり、また、全国の酸性雨汚染も全体的には落ち着いた状態であったが、汚染の程度は依然として比較的悪い状況であった。具体的には次のようになっている。
 2012年、325の地区級以上の都市の現行環境基準達成率は91.4%で、前年より2.4%上昇した。海南省の海口、三亜、雲南省の大理など11都市が1級基準を達成した(図8)。汚染物質の種類別にみると、SO2年平均濃度の2級基準達成率は98.8%、NO2年平均濃度の2級基準達成率は100%、1級基準達成率は86.8%であった。また、PM10年平均濃度の2級基準達成率は92.0%で、3級基準にも達しない都市は1.5%であった(図9参考)。
 2012年における113の環境保護重点都市のSO2、NO2及びPM10の年平均濃度はそれぞれ0.037mg/m3、0.035 mg/m3、0.083 mg/m3であり、3物質とも前年に比して同水準か低下している(図10)。
 酸性雨については、466の市(県)でモニタリングが行われ、酸性雨が発生した市(県)は215で46.1%を占めた。また、酸性雨の発生頻度が75%以上の市(県)は56で12.0%を占め、前年よりやや増加している。酸性雨の分布地域は主に長江流域及びそれ以南から青蔵高原以東の地域に集中している。酸性雨地域の面積は国土面積の約12.2%を占めている(図11)。

[解説]
 2012年2月に新しい大気環境基準が正式に発表され、2016年1月1日から全面施行されることになった。新環境基準施行前の2012年の評価は現行環境基準で行われている。しかし、今年の白書では、「重要説明」として新環境基準に照らした評価も紹介している。具体的には次のとおりである。
 SO2、NO2PM10の新基準に照らして評価すると、地区級以上の都市の達成率は40.9%(50.5%低下)、環境保護重点都市の達成率は23.9%(64.6%低下)となり、90%前後の基準達成状況から一挙に50%以下の達成状況に大逆転する。確かにこの評価の方が昨今の大気汚染に関する市民感覚にあっているといえよう。
 なお、新基準に関して追加コメントすると、2012年末までに北京天津河北省地域、長江デルタ地域、珠江デルタ地域等の重点地域及び直轄市、省都など74都市の496か所で新基準に合わせたモニタリングネットワークを構成し、モニタリングを開始している。
 今年初めに発生した深刻な大気汚染に関しては、2012年(1月〜12月)の白書ということもあって全く触れられていない。また、新環境基準で追加された微小粒子状物質(PM2.5)に関する評価も行われていない(注:現行環境基準では基準値が設定されていない)。

都市騒音の状況

 都市環境騒音と道路交通騒音は基本的には穏やかな安定した状態を保っている。モニタリングを行った全国の316都市中、一級レベルが3.5%、二級レベルが75.9%、三級レベルが20.3%、四級レベルが0.3%の割合になっている。環境保護重点都市の騒音レベルは一級及び二級が全体の77.9%を占めている。
 なお、2012年に初めての「騒音汚染防止年報」を発表し、第11次5か年計画期間中の環境騒音汚染の状況と変化等について報告分析した。

工業固体廃棄物の状況

【図12】工業固体廃棄物発生量の推移
【図12】工業固体廃棄物発生量の推移 ※拡大図はこちら

 2012年に全国で発生した工業固体廃棄物の量は32.9億トンで、前年(32.5億トン)と比べてほとんど変化なかった(図12)。このうち総合利用(リサイクル)量は20.2億トン(60.9%)であった。なお、32.9億トンのうち未処理のまま貯蔵された量は約7.1億トンで21.5%にも上っている。

自然生態

 2012年末までに全国で設立された各種類型、各級の自然保護区は2,669か所(2011年末は2,640か所、以下同じ)、総面積は約1億4,979万ha(1億4,971万ha)、そのうち陸域面積は1億4,338万ha(1億4,333万ha)で国土面積の14.9%(同)を占める。

【表3】2012年全国排水中主要汚染物質排出量
【表3】2012年全国排水中主要汚染物質排出量 ※拡大図はこちら

【図13】農村環境保全専門資金投資額の推移
【図13】農村環境保全専門資金投資額の推移 ※拡大図はこちら

農村環境保護

 工業化、都市化及び農業の現代化が絶え間なく進むにつれて、農村環境の形勢は依然として厳しい状況にある。鉱工業汚染の圧力が大きく、生活汚染も局所的に激しくなっており、畜産養殖による汚染も厳重である。
 2012年、全国798の村落での農村環境質モニタリングモデル業務結果によると、モデル村落における大気質は全体として比較的良好であり、環境大気質が基準を達成している村は93.3%を占めた。農村の飲用水源と地表水は様々な程度にわたって汚染され、1,370か所の飲用水源地モニタリング地点における水質基準達成率は77.2%であった。地表水飲用水源地で基準を超えた主要な汚染物質はNH3-N、全リン、BOD、過マンガン酸塩指数及び溶存酸素であった。湖沼・ダムの飲用水源地では全窒素が最も基準を超えていた。
 モデル村落の984か所の地表水水質モニタリングポイントではI〜III類、IV〜V類及び劣V類の割合はそれぞれ64.7%、23.2%、12.1%で、基準を超えた主要な汚染物質はBOD、NH3-N、全リン、過マンガン酸塩指数及び石油類であった。いくつかのモデル村落の地表水では重金属が基準超過していた。

[解説]
 中国には60万近くの建制村(行政村ともいう。村民委員会等の自治行政組織が置かれている。)、273万以上の自然村が存在し、今後とも引き続き農村環境保護はますます重要な地位を占めるようになる。第12次5カ年計画でも農村環境保護を強調している。2011年に初めて364の農村で環境モニタリングモデル業務をスタートしたが、2012年にはこれを798の農村に拡大した。
 また、農村の環境総合整備を推進するため、2012年中央政府は55億元の農村環境保護専門資金を手配した。この資金額は図13のとおり年々増額している。
 農村では特に水質汚染の問題が深刻である。2012年の全国排水中の汚染物質(COD、NH3-N)排出量をみると、表3のような内訳になっており、農業系(畜産排水など)からの排出量が全体の47.6%(COD)、31.8%(NH3-N)を占め、工業系の排出量(それぞれ全体の14.0%、10.4%)を大きく超えている。

【図14】二酸化硫黄排出量の推移
【図14】二酸化硫黄排出量の推移 ※拡大図はこちら

【図15】化学的酸素要求量(COD)排出量の推移
【図15】化学的酸素要求量(COD)排出量の推移 ※拡大図はこちら

さいごに ─2011年白書との比較

 2011年白書では統計の基礎となるデータが大幅に拡充されるなど大きな変化があり、SO2とCODの排出量など一部についてそれまでのデータとの整合性がなくなったが、2012年は2011年とほぼ同じベースで集計されている。また、評価対象とする母集団や評価指標にも大きな変化はみられていない。
 大気汚染に関しては、現行環境基準による評価を基本としつつも、新環境基準による評価も載せるなど多少の工夫と新鮮味がみられた。
 参考までに比較的過去の統計データが揃っているSO2とCODの排出量について、筆者がとりまとめたものを図14及び図15に示しておく。

記事・写真:小柳秀明

〜著者プロフィール〜
小柳秀明 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長

1977年  環境庁(当時)入庁、以来約20年間にわたり環境行政全般に従事。
1997年 JICA専門家(シニアアドバイザー)として日中友好環境保全センターに派遣される。
2000年 中国政府から外国人専門家に贈られる最高の賞である国家友誼奨を授与される。
2001年 日本へ帰国、環境省で地下水・地盤環境室長、環境情報室長等歴任。
2003年 JICA専門家(環境モデル都市構想推進個別派遣専門家)として再び中国に派遣される。
2004年 JICA日中友好環境保全センタープロジェクトフェーズIIIチーフアドバイザーに異動。
2006年 3月 JICA専門家任期満了に伴い帰国。
 4月 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所開設準備室長。
 7月から現職。
2010年 3月 中国環境投資連盟等から2009年環境国際協力貢献人物大賞(International Environmental Cooperation-2009 Person of the Year Award) を受賞。