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目次
指定の背景
慶良間諸島国立公園の指定理由
自然環境・文化の特性
利用の現況
指定の意義
【1】国立・国定公園総点検事業
 平成19年から22年にかけて、全国の自然環境について、地形地質及び生態系の観点から重要な地域を分析し、今後国立・国定公園を新規に指定し、または大規模に拡張する候補地を選定したもので、18地域が国立・国定公園の新規指定・大規模拡張候補地として選定されました。
http://www.env.go.jp/park/topics/review.html

No.230

Issued: 2013.04.04

美ら海慶良間−海と島がつくるケラマブルーの世界(環境省自然環境局国立公園課)

慶良間諸島国立公園の指定


慶良間の多島海景観(環境省提供)

  平成26年3月5日(通称:サンゴの日)に慶良間諸島国立公園が指定されました。国立公園の新規指定は昭和62年の釧路湿原国立公園以来27年ぶりで、31番目の国立公園となります。
 なぜ、今、慶良間諸島が国立公園に指定されたのか、その背景や指定の理由、今後の展望等についてご紹介します。

指定の背景

  慶良間諸島は、沖縄県那覇市の西、約40キロメートルにある、渡嘉敷村と座間味村からなる島々です。大小30ほどの島々と多くの岩礁からなります。
 ここには、沖縄県内では最も美しいとされる、多くの島々が浮かぶ海域の景色や、海中や亜熱帯植物の美しい景色があることから、昭和53年12月9日に沖縄海岸国定公園の一部として指定されていました。
 その後、環境省において国立・国定公園総点検事業【1】を実施し、平成22年10月に国立・国定公園の新規指定・大規模拡張候補地を選定しました。全国的に国立・国定公園の候補地を検討し、公表するのは昭和46年以来39年ぶりのことでした。その背景としては、近年の自然環境に関する科学的知見の集積が進むとともに、生物多様性等への国民の関心・要請の高まり、エコツーリズムによる公園利用の増加等、国立・国定公園を取りまく自然環境、社会状況の大きな変化がありました。
 この選定地の一つに慶良間諸島地域も選ばれ、陸から海にかけて多様な生態系があり、日本を代表する自然の風景をもつ地域である、と評価されました。これを受け、地元自治体から協力をいただきながら、環境省において国立公園の指定の作業を進めました。

慶良間諸島国立公園の指定理由

慶良間諸島国立公園 区域図(環境省提供)
慶良間諸島国立公園 区域図
(環境省提供)
※クリックで拡大表示します

 慶良間諸島が日本を代表する自然の風景をもつ地域として国立公園に指定された理由は、陸と海が連続して一体となった雄大で多様な景観があることです。すなわち、国定公園時に評価されていた、①多くの島々が浮かぶ海域や海中の景観に加え、②サンゴ礁を中心とする生態系、③ザトウクジラが子どもを産み、育む海域(繁殖海域)といった海域の多様な生態系、④ケラマブルーと称される透明度の高い海域、⑤地殻変動に伴い陸が沈むことによって形成された島々や岩礁、⑥切り立った海食崖や入り組んだ湾の多いリアス海岸、⑦サンゴやホシズナのかけらからできた遠浅の白い砂浜、⑧そこで産卵するウミガメといった多様な海域景観があることが評価されたことによります。
 今回の指定では、特に海域の保全が強化されています。国定公園時には海岸線から1キロメートルであった公園区域を広げ、ザトウクジラの繁殖海域を含む海岸線から7キロメートルの範囲を公園区域としています。さらに、サンゴが高密度に生息する水深30mより浅い海域を、工作物の新築や、海底の形状変更等の各種行為が規制される海域公園地区としています。

ケラマブルーと呼ばれる碧い海(環境省提供)
ケラマブルーと呼ばれる碧い海(環境省提供)

サンゴやホシズナのかけらでできた白い砂浜(環境省提供)
サンゴやホシズナのかけらでできた白い砂浜(環境省提供)

自然環境・文化の特性

 慶良間諸島の海域では、造礁サンゴは14科59属248種が確認されており、日本でみられる造礁サンゴのうち約62%が生息しています。また、冬期には毎年ザトウクジラが繁殖のために訪れます。
 植生はビロウ林、リュウキュウマツ林等が発達しており、およそ620種以上の自生植物(栽培などによらず自然に生える植物)が確認されています。本地域の森林は、全体的に樹高が低く、場所や樹齢の違いによる差が小さく、特異な風衝地植生(強い風を常時受けるために樹高が低くなるなどの特徴が見られる)がみられます。
 人々の生活は海と大変関わりが深く、各集落では大漁・豊漁等を祈願した祭祀、獅子舞や大太鼓といった伝統芸能活動等が残っています。琉球王朝時代には、沖縄島から中国への唐船貿易の中継地として栄えた歴史があります。また、カツオ漁の発祥の地でもあり、明治時代には、「ケラマ節」と呼ばれる鰹節が高く評価され、日本最大のカツオ漁の1つに発展しました。その後、第二次世界大戦末期に本地域は沖縄戦における米軍最初の上陸地となり、戦争の悲惨な歴史をもつ地域でもあります。

ミドリイシサンゴに群れるデバスズメダイ(環境省提供)
ミドリイシサンゴに群れるデバスズメダイ(環境省提供)

船頭主家の旧家である高良家(国の重要文化財)(環境省提供)
船頭主家の旧家である高良家(国の重要文化財)
(環境省提供)

利用の現況

ホエールウォッチングの様子(深堀聰氏 撮影・提供)
ホエールウォッチングの様子(深堀聰氏 撮影・提供)

 観光利用は、スキューバダイビング、シュノーケル等による海中景観を楽しむものが中心となっていますが、近年、オニヒトデの大発生やスキューバダイビング等の利用によるサンゴの損傷が懸念されています。渡嘉敷村エコツーリズム推進協議会と座間味村エコツーリズム推進協議会はエコツーリズム推進法に基づく全体構想を作成し、平成24年6月27日に関係省庁の主務大臣から認定を受けました。地域が主体となって、全体構想に基づいた海域利用に関するルール作りの検討を進めるほか、サンゴ礁の持続可能な利用を目的として、自主的にオニヒトデの駆除やモニタリング等の活動が行われています。
 また、冬期を中心にホエールウォッチングが盛んに行われています。座間味村ホエールウォッチング協会では、ザトウクジラの繁殖を保護することを目的として独自にホエールウォッチングのための自主ルールを策定し、ツアー客に事前にクジラの生態等の解説や観察の際のルール等に関するレクチャーを実施しています。

指定の意義

未来へと引き継ぐ美しい自然(環境省提供)
未来へと引き継ぐ美しい自然(環境省提供)

 今回の指定により、海域の広い範囲が国立公園に指定されましたが、これは平成22年10月に生物多様性条約第10回締約国会議で採択された愛知目標における保護地域の拡充に関する目標達成に貢献するものです。
 また、地域の産業の大部分が観光業である慶良間諸島において、今回の指定は、これまで地域の方々が一生懸命守り続けてきた自然が、世界に誇りうる自然の風景をもつ地域であることの証となるとともに、地域の方々の誇りを裏打ちするものとなり、地域振興に対して大きく貢献するものでもあります。
 慶良間諸島は、自然環境の保全に地域の方々が自主的に取り組み、一方で観光業という形で持続的に活用することで生計を立て、自然と共生する社会を形成してきた地域です。このような地域社会を将来世代に引き継ぐとともに、その重要性を地域住民だけでなく、慶良間諸島国立公園を訪れる人々にも伝え、全国に波及させていきたいと考えています。



記事・写真:環境省自然環境局国立公園課