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目次
「富士山保全協力金」の取組
ナショナルトラスト運動
地域自然資産法の成立と制度の概要
法律のねらい
今後の課題
【1】しれとこ100平方メートル運動
 しれとこ100平方メートル運動のHP: http://100m2.shiretoko.or.jp/
【2】地域自然資産法
 施行日は公布から1年以内の政令で定める日です。
【3】「入園料」の導入に関する議論
 アメリカの国立公園では、国立公園局National Park Serviceが入園料を徴収して、国立公園の管理に関する経費に充てています。

No.235

Issued: 2014.09.08

『地域自然資産法』が成立しました(環境省自然環境局生物多様性施策推進室・国立公園課)

国民の協力で地域の自然を保全する新たな法的枠組み

 国立公園などに立ち入る人から入域料を集めたり、ナショナルトラスト運動に賛同する方から寄付を集めたりして、地域の貴重な自然の保護や持続的利用に役立てていこうという取組が各地で進められています。これらの取組を促進するための新たな枠組みとして、2014年6月に「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(通称「地域自然資産法」)」が成立しました。
 今回は、この新たな法制度の概要を説明しつつ、関連する話題を紹介します。

「富士山保全協力金」の取組

本格実施の前年、試験徴収に協力する登山者たち 2013年8月 富士山((C)2013 環境省)
本格実施の前年、試験徴収に協力する登山者たち
2013年8月 富士山((C)2013 環境省)

 全国の自然地域では、利用者が増加して登山道が荒れてしまったり、管理の予算が十分にまかなえずに歩道の修繕が十分にできなかったりする場合があります。こうした状況の中で、国や自治体による公的資金による取組だけではなく、そこを訪れる利用者にも費用の一部を負担してもらおうという考え方も出てきています。
 山梨県と静岡県は、2014年から富士山の登山者を対象に「富士山保全協力金」として一人あたり千円の協力をお願いすることとなりました。協力金は、トイレの拡充などの環境保全や安全誘導員の配置などの登山者の安全対策に充てることとしています。富士山にはシーズン中の2ヶ月間で約30万人もの人が登りますので、多くの資金が集まることが見込まれます。
 登山者の多くはこの取組に協力的で、効果的な使い方や使途の明確化に期待する声が多いようです。

ナショナルトラスト運動

国民の寄付で計画的な森づくりが進むしれとこ100平方メートル運動地((C)2014 環境省)
国民の寄付で計画的な森づくりが進む
しれとこ100平方メートル運動地((C)2014 環境省)

 国民の資金的な協力を得て、自然環境の保全を図ろうという取組としては、入域料や協力金のほかに、ナショナルトラスト運動が有名です。
 北海道の斜里町は、1960年代、知床国立公園の中に残された開拓跡地が土地投機ブームで売り払われるという危機に直面しました。斜里町は、その自然を乱開発から守るため、1977年に「しれとこ100平方メートル運動【1】」を開始することとし、国民に寄付を求めました。2010年には目標とする土地を全て買い取ることができ、現在はさらにこの運動を発展させて、買上地での森づくりが進められています。
 このように国民の寄付によって、自然環境保全上重要な土地を取得したり、その土地の維持管理を行ったりする活動をナショナルトラスト運動と呼んでおり、主に民間のナショナルトラスト団体によって全国各地で取組が進められています。

地域自然資産法の成立と制度の概要

法律の仕組
法律の仕組
※クリックで拡大表示します

 2014年6月18日、「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律(通称「地域自然資産法」)」が参議院本会議で成立し、6月25日に公布されました【2】
 この法律では、
 ①都道府県又は市町村が、入域料を収受して行う「地域自然環境保全等事業」を実施する区域
 ②一般社団法人等又は都道府県、市町村が、「自然環境トラスト活動促進事業」に係る「自然環境トラスト事業」を行う区域
 を「地域自然資産区域」と名付け、都道府県又は市町村が作成する「地域計画」により、地域の自然環境の保全及び持続可能な利用を進めることとしています。
 つまり、地域にとって重要な自然があれば、自治体が計画を定め、計画に基づいて、そこに立ち入る人からの入域料や、その地域の保護に協力する人からの寄付で自然の保護等を進めていこうというもので、議員立法として検討が進められてきました。この法律の主務大臣は自然環境行政を担う環境省と名勝・天然記念物行政を担う文部科学省で、両者によって2015年の法律の施行に向けて準備が進められます。

法律のねらい

 今回の法律では、都道府県や市町村が関係者と協議会を設置し、協議の結果に基づき入域料を収受し、植生の保護や、歩道の整備などに充てることなどが想定されます。
 また、ナショナルトラスト団体や自治体自らが行うナショナルトラスト運動への協力を呼びかけるなど、運動を促進するための都道府県、市町村による促進事業が位置づけられています。
 これらの活動が関係者の合意形成の元で適切に進められることによって、民間資金を用いた地域の自発的な取組を促進することを目指しています。

今後の課題

 国立公園でも以前から「入園料」の導入に関する議論があります【3】。日本の国立公園には民有地等も含まれ、土地の所有権や国立公園に到達するための道路が無数にあることなど多くの課題がありますが、山岳部のトイレでチップや利用料を支払うなど、部分的には利用者負担の取組も進んでいます。環境保全協力金、法定外目的税などのかたちで、特定の島や森に立ち入る人から費用を集め、それを自然の保護や施設の整備に充てる取組が進められている地域もあります。また、利用者に一定の費用の負担を求めることで、過剰利用の抑制の効果が期待される場合などもあります。
 ナショナルトラスト運動について斜里町の例を紹介しましたが、全国で行われている運動は、開発等によって地域の大事な自然が失われることに危機感を持った市民が自ら立ち上がり、行政だけでは守れない自然を守ってきた運動でもあります。一方で、一旦開発の危機が去ってしまうと、国民の関心が薄まり、取得した土地の維持管理等に必要な費用を工面することが難しくなります。このため、今後は取得した土地の維持管理については行政との協力関係を築いていくことが重要になります。
 また、今後、人口減少が進む中で適切に管理できなくなる土地を寄付しようという人が増えてくることも予想されます。その際に、自治体やナショナルトラスト団体が自然環境保全上重要な土地の受け皿になっていくことが重要です。
 自然環境保全のための利用者負担や民間資金の活用については、地域毎に取り巻く状況は異なり、課題も様々です。
 国民の費用負担は、一つの有効な手段になり得ますが、貴重な自然環境の保全は必ずしも立ち入って利用する利用者やそれに賛同する国民だけが負担すべきものではありません。負担の額や方法に対する関係者の適切な合意形成、寄付を集める際の適切な基金の設置方法、使途の明確化など費用負担や寄付を求める場合に必要になってくる重要事項も定められなければなりません。
 この法律と、法律に基づき定められる基本方針によって、自然の保護や持続可能な利用を図るための統一的な方向性が示されることで、各地で入域料やトラスト活動の促進に関する議論が活発化することが期待されます。



記事・図版:環境省自然環境局 生物多様性施策推進室・国立公園課