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目次
Future Earthとは何か
Future Earthの立ち上げ状況
Future Earthの特徴と研究テーマ
Future Earthへの日本の対応
【1】地球システム科学パートナーシップの四つの国際研究計画
地球圏・生物圏国際協同研究計画(International Geosphere-Biosphere Programme: IGBP)
地球環境変化の人間的側面国際研究計画(International Human Dimension Programme on Global Environmental Change: IHDP)
生物多様性科学国際協同計画(International Programme on Biodiversity Science: DIVERSITAS)
世界気候研究計画(World Climate Research Programme: WCRP)

No.235

Issued: 2014.10.21

新しい国際研究プログラムFuture Earth(江守正多)

 地球環境研究の国際プログラムが再編され、Future Earthとよばれる枠組みが誕生しました。人間の活動と地球との関係を持続可能なものにするための様々な研究がこの下で推進されます。Future Earthでは、学術の専門家だけでなく、社会のさまざまなステークホルダー(利害関係者)が参加することに特徴があります。日本でも、日本学術会議を中心に、国際合同事務局やアジア地域事務局の誘致など、積極的な関与を行っています。

Future Earthとは何か

 地球環境研究の国際プログラムが再編され、Future Earthとよばれる巨大な枠組みが誕生しました。これまで、国際科学会議(International Council for Science: ICSU)などが推進する地球環境変動分野の四つの国際研究計画(IGBP, IHDP, DIVERSITAS, WCRP【1】)、およびそれらの共同イニシアチブとしての地球システム科学パートナーシップ(Earth System Science Partnership: ESSP)という枠組みが地球環境研究を国際的に推進していましたが、これらをすべて統合するものがFuture Earthです。
 Future Earthの背景として、いま私たちが生きている時代はAnthropocene(人新世)であるという認識があります。Anthropoceneとは地質学的な年代を表す新しい用語で、人類が地球環境を変えた時代を意味する言葉です。また、人類が地球に与える負荷が大きくなりすぎると、例えば気候、水環境、生態系などに内在する回復力(Resilience)の限界を超えたときに不可逆的で大きな変化が起こりうるとし、人類の活動をそのような限界(地球の境界: Planetary boundaries)の範囲内に収める必要があるという認識があります。

Future Earthの立ち上げ状況

 Future Earthは、17名の専門家からなる移行チームによる初期設計期間を経て2013年より10年間のプログラムとして発足しました。6月にFuture Earthの科学面での舵取りを担う科学委員会が組織されました。科学委員会は18名の専門家から成り、日本からは総合地球環境学研究所(地球研)の安成哲三所長が選出されています。7月には暫定事務局長としてオランダ出身のFrans Berkhout博士が選出され、任期18ヶ月の暫定事務局が立ち上がりました。その後の公募を経て、国際合同事務局(日本、スウェーデン、仏、米、カナダ)と5つの地域事務局(アジア事務局は日本の地球研が担当)の設置が決まり、事務局機能の移行が進められています。
 今後、既存の研究計画(IHDP、DIVERSITAS、IGBP)が2015年までに順次終了し、Future Earthへの移行が完了する予定です(WCRPは機能的には合流するものの組織としては独立を維持する予定)。また、Global Carbon Project(国立環境研究所に国際事務局がある)などESSPのプロジェクトもFuture Earthに移行する予定です。

Future Earthの特徴と研究テーマ

 Future Earthでは、地球規模の持続可能性を実現するための研究活動の推進にあたって、いくつかの特徴的な概念がうたわれています。まず、Inter-disciplinarity、すなわち自然科学、社会科学、工学、人文学などの学術分野の垣根をこえた「学際」研究の重要性が指摘されています。より特徴的なのはTrans-disciplinarity、すなわち学術と社会の間の垣根をこえる「超学際」がうたわれていることです。これは、Future Earthの活動に、学術の専門家だけでなく、社会のさまざまなステークホルダー(利害関係者)が参加することを意味します。より具体的には、専門家とステークホルダーが協働して研究活動の設計Co-design(共同企画)や研究知見の創出Co-production(共同生産)を行うことが提案されています。特に、設計段階のCo-designと知見の普及段階において、ステークホルダーの役割が大きいとされています。また、ステークホルダーグループとして、(1)学術研究、(2)科学と政策のインターフェース、(3)研究助成機関、(4)各政府機関、(5)開発機関、(6)ビジネス・産業界、(7)市民社会、(8)メディアの八つが特定されています。また、ステークホルダーの関与に関する舵取りを行う関与委員会が設置されます(現在は暫定関与委員会が設置されており、本委員会のメンバーを選任中)。

協働企画、協働生産の内容と関係(出典:Future Earth Initial Design Documentより。訳は文部科学省 持続可能な地球環境研究に関する検討作業部会中間とりまとめに基づく)
協働企画、協働生産の内容と関係(出典:Future Earth Initial Design Documentより。訳は文部科学省 持続可能な地球環境研究に関する検討作業部会中間とりまとめに基づく)
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Future Earthの研究テーマとしては、以下の三つが設定されています。

  • Dynamic Planet:地球が自然現象と人間活動によってどう変化しているかを理解すること。
  • Global Development:食料、水、生物多様性、エネルギー、物質及びその他の生態系の機能と恩恵についての持続可能で確実で正当な管理運用を含む、人類にとって最も喫緊のニーズに取り組む知識を提供すること。
  • Transformation towards Sustainability:持続可能な未来に向けての転換のための知識を提供すること。すなわち、転換プロセスと選択肢を理解し、これらが人間の価値と行動、新たな技術及び経済発展の道筋にどう関係するかを評価し、セクターとスケールをまたがるグローバルな環境のガバナンスと管理の戦略を評価すること。

Future Earthへの日本の対応

 日本国内においては、これまでの国際研究計画に対応して、日本学術会議(学術会議)にIGBP・WCRP・DIVERSITAS合同分科会が設置されており、この分科会においてFuture Earthへの対応の検討が始められました。2012年12月と2014年2月には、アジアにおけるFuture Earthへの対応を議論するFuture Asia国際シンポジウムが京都において開催されています。また、Future Earthと連動する主要先進国の研究助成機関の連合体であるベルモントフォーラムには、日本から文部科学省と科学技術振興機構(JST)が参加しています。
 2013年6月には、文部科学省の環境エネルギー科学技術委員会の下に「持続可能な地球環境研究に関する検討作業部会」が設置され、日本としてFuture Earthにどう取り組むかについて、論点整理の中間とりまとめを行いました(主査は安岡善文東京大学名誉教授・国立環境研究所元理事)。
 2013年6月18日には、午前に学術会議にてFuture Earthに関係の深い複数の委員会が合同で今後の対応を検討し、午後には後述する学術フォーラム(一般公開シンポジウム)が行われました。7月には、学術会議に「フューチャー・アースの推進に関する委員会」が設置され、国内の体制が整いつつあります。さらに、さまざまなステークホルダーを含むFuture Earth国内委員会を文部科学省が中心になって組織する予定になっています。また、前述した国際合同事務局は、学術会議を始めとするコンソーシアムの下で、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構が実務を担います。
 今後、日本においても、Future Earthの枠組みの下に、特にアジア各国と連携しながら、持続可能性の実現に向けた研究が活発に推進されることが期待されます。



記事・図版:江守正多

〜著者プロフィール〜
■江守正多
国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室長。
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者(第1作業部会)。日本学術会議「フューチャー・アースの推進に関する委員会」幹事(連携会員)。
著書に「異常気象と人類の選択」(角川SSC新書)など。