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No.241

Issued: 2015.05.08

妙高戸隠連山国立公園の誕生(環境省長野自然環境事務所)「大地の営みとそれに寄り添う人々の暮らし・信仰が紡ぐ風景」

目次
背景
妙高戸隠連山国立公園の指定理由
自然環境・文化の特性
本国立公園の楽しみ方
名称に係る議論性
今後の取り組み

 平成27年3月27日、新たな国立公園として妙高戸隠連山国立公園が指定されました。昨年3月5日の慶良間諸島国立公園に続き、32番目の国立公園であり、上信越高原国立公園の一部を分離してできた国立公園です。
 妙高戸隠連山国立公園誕生の背景や指定の理由、今後の展望等についてご紹介します。

野尻湖全景と黒姫山(左)妙高山(右)

妙高戸隠連山国立公園の山々(左から飯縄山、戸隠連峰、黒姫山、妙高山)


背景

 上信越高原国立公園は、昭和24年に、志賀高原地域、谷川・苗場地域、草津・万座・浅間地域(以下、東部地域)が公園区域として指定され、その後昭和31年に、今回新たな国立公園として分離した妙高・戸隠地域(以下、西部地域)が追加で編入されました。西部地域が編入された当時は、各地で国立公園指定の要望が多数あり、乱立とそれに伴う質の低下を避けるため、新規指定を制限していました。そのため、昭和30年12月の国立公園審議会において、西部地域を、隣接する上信越高原国立公園か中部山岳国立公園のどちらに編入すべきかについて激論が交わされました。その結果、「火山連峰」「火山性高原」という景観の特徴が上信越高原国立公園に近いという点、また利用面においても中部山岳国立公園より上信越高原国立公園との一体性が高いという点で、西部地域は上信越高原国立公園に編入されることになり、西部地域は上信越高原国立公園としての歴史を歩むことになります。
 転機となるのは、平成19年3月にまとめられた「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」【1】において「複数の異なる特色を有する地域がひとつの公園として指定されている場合には、その妥当性を検討し、見直す」とされたことです。この提言を踏まえ、西部地域の公園計画の点検を行うための調査を実施したところ、西部地域は、東部地域とは異なった優れた景観的特徴や利用特性があるという結論に至りました。これにより、それぞれ別々の国立公園に再編成し、西部地域を新たな国立公園として指定することとなりました。

分離以前の上信越高原国立公園の区域図
[拡大図]

妙高戸隠連山国立公園の指定理由

妙高戸隠連山国立公園区域(火山、非火山)
[拡大図]

 西部地域が、新たな国立公園として上信越高原国立公園から分離した、特筆すべき特徴は、飯縄山、黒姫山、妙高山、焼山などの火山と、火打山、雨飾山、戸隠山、高妻山などの非火山が比較的小さな面積の中に凝集している点です。上信越高原国立公園の東部地域は、浅間山をはじめとする火山連峰の裾野に広大な高原がみられるのに比べて、妙高戸隠連山国立公園は、山々が密集していることにより、麓の高原も比較的狭い面積となっています。これが、西部地域を上信越高原国立公園から分離することとなった景観的理由です。妙高戸隠連山国立公園は、密集した多様な山々が点在する湖沼・湿原と相まってすばらしい景観を作り出しています。


火山の妙高山

非火山の戸隠連峰


自然環境・文化の特性

 本地域は、日本海側気候区と太平洋側気候区の境目部分にあたり、標高の差も大きく、火山・非火山があり地形地質的に複雑であるなどの理由により、多様な植物が生育しています。トガクシソウなどの希少種も自生しています。特徴的な動物としては、火打山を中心に北限のライチョウ個体群が生息していることです。また、希少猛禽類のイヌワシ、クマタカ等の生息もみられます。さらに、戸隠山、飯縄山等は山岳信仰の山として名高く、妙高高原、小谷温泉等は古くからの温泉地であるなど、歴史的文化的な資源にも恵まれています。また、野尻湖のナウマンゾウの化石の発掘は全国的にも有名です。

火打山のライチョウ

戸隠神社、奥社参道の杉並木

ナウマンゾウのモニュメントと野尻湖


本国立公園の楽しみ方

 本国立公園は名前のとおり、高山帯のお花畑や紅葉、雪景色など春夏秋冬それぞれ特徴ある美しい山々が連なっています。飯縄山など初級者向きの山から戸隠連峰など上級者向きの山までバラエティに富んだ登山コースや、日本百名山の雨飾山、妙高山、火打山、高妻山があり、本公園内の山々や北アルプスの山々などの眺望が見事です。笹ヶ峰高原は自然探勝に利用されたり、高原に点在する野尻湖や鏡池、いもり池、鎌池等では水面ごしに山々を眺めることができたりと、その素晴らしい景色の中で四季の変化を感じながらくつろいだり散策したりすることができます。その他、野尻湖におけるカヌーやわかさぎ釣りなどのウォータースポーツ、素晴らしい雪質の中でのスキー、キャンプなどもできるほか、戸隠牧場や笹ヶ峰牧場があるなど、登山以外にも大人から子供まで多種多様な楽しみ方ができます。糸魚川地域は日本初の世界ジオパークとして認定された地域であり、ダイナミックな地形地質を見て知る楽しみもあります。
 また、戸隠高原にはパワースポットとして有名な戸隠神社があり、杉の巨木が立ち並ぶ参詣道を通って、参拝した後は「ぼっち盛り」という特有の盛り方で有名な戸隠そばを食べるという楽しみ方もできます。温泉も豊富で、武田信玄の家臣が発見したとされる小谷温泉は450年以上の歴史を持つ湯治場として有名です。妙高山の麓には燕温泉をはじめとして、7つの温泉、5つの泉質、3つの湯色が楽しめる多様な温泉があり、全国的に見てもバラエティに富んだ温泉郷です。

野尻湖にて、観察会でカヌー体験

冬、スノーシューで雪上観察会


名称に係る議論

 国立公園を支える地域の方々にとって、自らの地域の山や湖は、自慢であり、誇りでもあります。上信越高原国立公園から分離して新たな国立公園を指定するにあたって、当該地域は多様な山々や湖沼・湿原など個性的なシンボルが集まっているが故に、名称については地域で様々な意見があり、名称の決定は中央環境審議会に委ねられることとなりました。議論の末、この国立公園のイメージがしやすいという理由で「妙高戸隠」に加え、山々が密集しているということを表すために「連山」という単語を付け「妙高戸隠連山国立公園」という名前が適当であるという意見で一致しました。ただし、審議会からは名称に含まれていない資源についても、「国立公園 雨飾」、「国立公園 黒姫」、「国立公園 野尻湖」など「国立公園 ○○」といった形で、国立公園と個別の地名を組み合わせるなどし、積極的に地域活性化に活用することを検討するよう、意見もあわせて提案されました。

今後の取り組み

3月27日(指定日)のPRイベントの様子

 分離する前の上信越高原国立公園は3県27市町村にまたがり、面積は約19万haと全国の国立公園で2番目の大きさでしたが、分離後の妙高戸隠連山国立公園は2県6市町村で約4万haとなりました。以前は上信越高原国立公園としての一体感やその関係者が同じテーブルで議論する機会がほとんどなかったのが現状でしたが、今回の分離を通じて関係自治体の方々と何度も議論を重ねる機会を得ました。
 今後は、市町村を超えて妙高戸隠連山国立公園全体の管理運営について議論する場を設置する予定です。上信越高原国立公園として積み重ねてきた歴史の上に立ち、これからは妙高戸隠連山国立公園として地域の自慢となるような魅力溢れる国立公園づくりの歩みを地域関係者の皆様とともに積み重ねていきたいと考えています。
 なお、今年度は妙高戸隠連山国立公園の指定を記念して、たくさんのイベントを実施する予定です。みなさま、是非足をお運びください【2】
 また、現在妙高戸隠連山国立公園のシンボルマークを公募していますので、 たくさんの方のご応募をお待ちしております。


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(記事・写真:環境省自然環境局国立公園課 長野自然環境事務所)

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