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No.252

Issued: 2016.05.19

基礎自治体における災害時対応型の再生可能エネルギー導入事例

〜当別町総合体育館災害対応型再エネ等導入事業〜

 地球温暖化などの気候変動対策は、グローバルな問題として国際社会または国全体レベルで進められていますが、基礎自治体や地域コミュニティレベルにおいても環境負荷軽減の取り組みは不可欠であります。また、東日本大震災を教訓に、地域においても通常時、緊急時を問わず確保できる「自立・分散型エネルギーの導入」などによる災害に強い地域づくりが求められています。
 当別町では、将来的な地域資源の活用を見越しながら、災害対応型で自主自立を目指す再生可能エネルギーの導入に着手しました。

当別町について

北海道石狩郡当別町
北海道石狩郡当別町

 当別町は札幌市の北隣に位置し、緑豊かで美しい田園風景の広がる、農業を基幹産業とした人口約1万7千人の町です。
 特別豪雪地帯に指定されるほど降雪量が多く、潤沢な融雪水は、町全体の62%を占める森林の水源涵養機能との相乗効果により、豊富な農業用水として活用されています

 町の西部地域には、北欧建築に特化した風光明媚な住宅団地「スウェーデンヒルズ」があり、道外から多くの方々が移住しています。また、福祉や環境の分野で世界先進国といわれているスウェーデンの自治体との国際姉妹都市交流も盛んです。

スウェーデンヒルズの眺望
スウェーデンヒルズの眺望


再生可能エネルギー事業に取り組む背景

 当別町の再生可能エネルギーの取り組みは、他の自治体と比べて寧ろ後発でした。
 平成15年度に、地域新エネルギービジョンを策定したものの、翌平成16年度には市町村合併問題が持ち上がり、最終的には合併に頼らない独立路線を選択。以降、平成17年3月策定の行財政システム再構築プラン(一般的に言う集中改革プランで、合併に頼らない自立検討計画をまとめたもの)の実現が最優先となり、再生可能エネルギーの取り組みは暫くの間保留にせざるを得ない状況でした。

 一昨年(平成25年7月)の首長選挙において、初の町外出身者である町長が誕生。元大手商社マンの町長が掲げた政治公約の一つが再生可能エネルギーを活用したまちづくりでした。
 これまでとは異なった視点から鳥瞰俯瞰的に当別町を見渡したところ、再生可能エネルギー全般、特に木質バイオマスに対する可能性を強く感じ取り、政策実行の舵が取られることとなりました。

 当別町長の再生可能エネルギー活用に向けた思いは、昨年(平成27年)策定した当別町地方創生総合戦略に盛り込まれ、さらに、本年4月には再生可能エネルギー活用推進条例を制定。再生可能エネルギー施策の推進に加速度的に取り組むこととしています。

当別町総合体育館災害対応型再生可能エネルギー等導入事業 事業概要

 当別町総合体育館災害対応型再生可能エネルギー等導入事業は、環境省の「防災拠点等への再生可能エネルギー等導入推進事業補助金」を活用し、町内の防災拠点の中で最大級の収容人員のある総合体育館に、緊急時だけでなく通常時も活用できる再エネ設備を導入するものであります。役場本庁舎が古い建物であることから、総合体育館が主要な災害対策拠点となる可能性もあり、防災&再生可能エネルギー事業の第一弾として当該施設に導入を図ったものであります。
 導入にあたっては、冬期暖房等のエネルギー確保や、また、地域資源として期待される木質バイオマスエネルギーの活用、太陽光と蓄電池の導入による緊急時の電源確保のほか、通常時の電力基本料金を抑えるためのピークカット活用など、豪雪・寒冷地といった地域特性や地域実情を反映させた内容となっています。
 導入した設備は次によりエネルギー種別ごとに紹介します。

パナソニック製45kW(240W×190枚)
パナソニック製45kW(240W×190枚)

  • 太陽光パネル(壁面タイプ)
     非常時の電源確保やピークカットのための太陽光発電システムを設置。設備の選定にあたっては、冬期の電源確保と除雪等維持管理の負担減にポイントを置き、着雪の影響のない壁面タイプを採用しました。夏場の発電量は多少犠牲となりますが、雪による照り返しが冬場の発電量の増加につながると期待しています。

  • 木質ペレットボイラー
     既存の重油ボイラーに置き換えて、木質ペレットボイラーを設置しました。燃料を石油由来の重油から木質ペレットに変更することで年38t程度のCO2削減を見込んでいます。

二光エンジニアリング製 35万kcal 1台
二光エンジニアリング製 35万kcal 1台

ボイラー内部
ボイラー内部

ボイラー建屋とサイロ
ボイラー建屋とサイロ


  • リチウムイオン蓄電池
     リチウムイオン蓄電池84.4kWを導入しました。
     全容量の5分の3(50.7kW)は緊急時の電源に、5分の2(33.8kW)は通常時のピークカット用に利用します。充電は基本的に太陽光発電により行われます。

GSユアサ製 84.4kW(16.88kW×5)
GSユアサ製 84.4kW(16.88kW×5)

GSユアサ製 84.4kW(16.88kW×5)


  • 体育館アリーナのLED化
     体育館アリーナの照明を全灯LED化しました。年29t程度のCO2削減を見込んでいます。

  • 見える化モニター(町単独事業)
     体育館のロビーにモニターを設置し、CO2削減量や太陽光発電量などを表示、並行して体育館での行事案内や活動団体の紹介などを行います。災害時には、緊急連絡用や緊急情報提供用のモニターとして活用します。


今後の展開

 幸いにも、この度は補助制度を活用し、木質バイオマスボイラーを始めとした様々な再生可能エネルギーの導入を実現できましたが、今後は他の公共施設等への導入を進めていく必要もあります。
 また、当該施設整備を契機に、再生可能エネルギーと環境負荷軽減、省エネの取り組みと温暖化対策、緊急災害時等におけるエネルギー確保など、町民に対する啓発や意識を高める取り組みを続けていく必要があります。
 他方、当別町では、地域の木質資源を活用した地域循環の構築について、現在進行形で関係団体などと議論を重ねていますが、循環体系の仕組みづくりにはもう少し時間を要します。
 当別町の取り組みは踏み出したばかりで解決しなければならない課題は沢山ありますが、自主自立したエネルギーの町の実現に向けて着実に一歩づつ進んでいるところであり、機運の高まりを途切れさせない取り組みを続けていきたいと考えています。




(記事・写真:当別町企画部エネルギー政策室)