環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第86講「ポスト2010年目標 ―生物多様性保全の新たな展開に向けて」
第85講「2010年、環境政策始動 ―温暖化対策基本法制定とアセス法改正に向けて」
第84講「2010年新春呆談―平成維新のその先は?」
第83講「COP15前夜―付:事業仕分けをめぐって─」
第82講「友愛か憂曖か―苦悩する鳩山政権」
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No. 第85講「2010年、環境政策始動 ―温暖化対策基本法制定とアセス法改正に向けて」
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Issued: 2010.02.18
H教授の環境行政時評(第85講 その1)
ハイチの悲劇

Aさん―センセイ、年が明けてまだ一月たったばかりだというのに、いろんなことがありましたねえ。

H教授―うん、朝青龍の突然の引退には驚いたし、プリウスで快進撃のトヨタの突然のリコール騒ぎもびっくりだった。ま、まずは順を追っていこう。
正月が明けたばかりの12日に、ハイチで大地震。死者は20万人を越したらしい。首都のポルトープランスは壊滅的な打撃を受けた。もともと最貧国で、インフラも乏しいから救援活動もままないらしい。もともとハイチはジャレド・ダイヤモンドによると崩壊に瀕した破綻国家らしい【1】。何も、そんなところを襲わなくたってと思うけど、なんせ自然災害だもんなあ。

Aさん―悲惨ですねえ。日本の援助が遅かった上、金銭での援助も少ないなんて話もありましたねえ。

H教授―うん、隣国キューバは第一報が届くや否や直ちに医療チームを送った。国家破産に近い状態の小国アイスランドは、同じ地震国だと言って、翌朝に何十人かの救援部隊を送った。その後も多くの国々が救援を競い合ったのにくらべると、ちょっとどうかと思うね。まあ、状況がもっと把握できてからというのも一理あるけど、やっぱり迅速にやらなきゃあね。
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【1】 もともとハイチはジャレド・ダイヤモンドによると崩壊に瀕した破綻国家らしい
第38講(その4)「『文明崩壊』を読む」
高速道路 無料化
Aさん―2月2日には高速道路無料化の実験区間が発表されました。

H教授―うん、とりあえず37路線50区間だ。全部かどうか知らないが、ガラガラの赤字路線が随分あるような気がする。名神だとか東名、山陽自動車道の無料化を期待した人たちは肩透かしを食らったかもしれない。
ボクのよく使う舞鶴自動車道も37路線50区間に入っていたけど、いまだかつて渋滞したことはないんじゃないかな。無料化にした方が、人件費がいらなくなって、却って経営的にはよくなるかもしれない。
今回の試験区間に限って言えば、無料化→通行量増加・渋滞→CO2排出大幅増加ということにはならなそうだ。
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COP15のフォロー

Aさん―さ、じゃぼちぼち本論に入りましょうか。今回は何でいきますか。

H教授―まずはCOP15のコペンハーゲン合意で、1月末までに各国の2020年に向けてのなんらかの定量性のある自主的な削減――対GDP比の削減で結果的には排出量増大になってもいいんだけど──計画を1月末までに提出するよう決められた。これに対して、55ヶ国から提出があったとの新聞報道があった【2】

Aさん―条約加盟国は190カ国あるんでしょう。3分の1にも満たないじゃないですか。

H教授―主要排出国はほとんど出揃ったようで、全世界の排出量の78%に達しているらしいよ。それ以上の詳しい内容はわからないけど。

Aさん―COP16の開催国はメキシコですよね。今度こそうまくいってほしいですね。メキシコ自体の立ち位置はどうなんですか。
【2】 COP15のコペンハーゲン合意に関する自主削減計画
第84講(その1)「またも先送りか ─COP15」

H教授―BASICグループ【3】に近いんじゃないかな。メキシコはOECD加盟国という意味では先進国だが、付属書I国じゃない。先進国と、途上国の中でもAOSISのような小島嶼国家とか最貧国との中間に位置するから、うまく中に入ってとりまとめてくれればいいんだけどね。

Aさん―そういえばIPCCの第四次報告書【4】で間違いがあったそうですね。ヒマラヤの氷河が2035年までに消失するなんて書いてあったけど、真っ赤なウソだったそうじゃないですか。

H教授―その前にも電子メールで地球温暖化論に都合の悪いデータを隠していたなんて報道もあって、米国のニクソン大統領辞任にまで発展したウォーターゲート事件をもじって、『クライメート・ゲート事件』なんて言われ方もされている。反温暖化論者にとっては、涎の垂れるほど美味しいことだったんだろうね。

Aさん―真相はどうなんです。

H教授―国環研の江守先生の記事【5】によると、確かに不注意で、ルール違反と言われても仕方がないようなことはあったようだが、温暖化そのものを否定するようなものじゃあない。現に氷河が後退していることは否めない事実だ。
ただ、こういうことがあると、反温暖化論者が鬼の首をとったように、あることないことを喚き散らすんだから、「李下の冠、瓜田の履」でいってほしいね。
【3】 BASICグループ
第84講(その2)「またも先送りか ─COP15(続き)」
【4】 IPCCの第4次報告書
第49講(その2)「IPCC第四次報告書の波紋」
【5】 国立環境研究所の江守先生の記事
日経エコロミー 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」!(江守正多)「IPCCへのさらなる疑問について・ヒマラヤ氷河問題とクライメートゲート続々報(10/01/27)」

Aさん―リカノカンムリカデンノクツ? …また、わけのわからない寝言を。
それより国内の動きはどうですか。
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温暖化対策基本法創設へ

H教授―温暖化対策基本法を次期国会に提出するようだ。閣議決定とは重みが違うから、期待しよう。

Aさん―どんな法案なんですか。

H教授―次期通常国会の提出予定法案という資料にポンチ絵が出ている【6】
法の条文は、目的、基本原則、中長期目標、基本計画、基本的施策の5つの柱からなるそうだ。
目的とか理念はお経の文句のようなものだから省略するけど、中長期目標として例の条件付き【7】だけど「2020年対90年比25%カット」、「2050年同80%カット」を明記。さらに2020年までに第一次エネルギー供給量の再生可能エネルギーが占める率を10%にするそうだ。
今は1%台だもんなあ。
【6】 温暖化対策基本法のポンチ絵
次期通常国会に提出を予定している法案について(平成22年1月 環境省)
【7】 例の条件付き
条件として「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意がなされること」が前提となる
第81講(その1)「鳩山イニシアティブ」

Aさん―そのための基本的施策として、どんなことを挙げているんですか?

H教授―3つあって、一つはキャップ&トレード方式による国内排出量取引制度の導入【8】。一つは地球温暖化対策税――いわゆる炭素税とか環境税とか言われているもの――の創設【9】と税制そのもののグリーン化。そしてもう一つは、自然エネルギー固定価格買取制度【10】だ。それらを明記している。

Aさん―へえ、いつもセンセイがおっしゃっていたものじゃないですか。国内排出量取引制度が導入されると、いよいよセンセイご持論の拡大排出権取引だか国内版CDMの出番ですね【11】

H教授―そうなるとこれまでほとんど普及啓発しかやってこなかった市町村の出番も出てくるよ。各市町村の区域内でCDM案件を発掘し、キャップのかかった企業との間を取り持つことだ。

Aさん―原発の推進は謳わないんですか。オバマさんは原発推進に舵を切ったようですが。
【8】 キャップ&トレード方式による国内排出量取引制度の導入
第62講(その2)「国内排出量取引制度の検討開始へ」
【9】 環境税の創設
第23講(その1)「時評1 京都議定書発効確定と炭素税の行方」
第71講(その4)「COP14前夜」
【10】 自然エネルギー固定価格買取制度
第70講(その1)「経済危機と温暖化対策」

H教授―社民党の顔を立てたのかもしれないが、明確には謳ってない。ま、日本は火山と地震の巣だから、無難な判断だと思うよ。

Aさん―2050年までのスケジュール管理は?

H教授―4つ目の柱である「基本計画」がそれに該当するものじゃないかと思うけど、詳細は不明。ま、今までの「基本計画」だと、スケジュール管理といったってマトモなロードマップにはなってないのが普通だったから、どういうものにするのか、興味があるね。
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【11】 センセイご持論の拡大排出権取引だか国内版CDMの出番
第51講(その4)「低炭素社会に向けて ──拡大排出権取引」
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