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環境さんぽ道

様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイコーナーです。
4人のエッセイスト(夏原和美、八巻和彦、岡内完治、堤江実)が1年間、毎月交替して登場します。

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環境さんぽ道

様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイをご紹介するコーナーです。

No.076

Issued: 2018.04.10

めぐるめぐる

堤江実(つつみえみ)さん

堤江実(つつみえみ)さん
 詩人・絵本作家。詩の朗読コンサート、日本語についての講演などで活躍。
 詩集「つたえたいことがあります」、絵本「水のミーシャ」他著書多数。

「めぐるめぐる」

氷になったり
雪になったり

雲になったり
水蒸気になったり

水は地球をめぐります

花が咲いたり
実を結んだり

葉がしげったり
種がおちたり

木々も季節をめぐります

太陽も星も
月も風も
宇宙をめぐりめぐります

そして人も
めぐります

くりかえし
くりかえし

愛することを学ぶために


こちらより、朗読の音声ファイルをお聞きいただけます。
(詩・朗読:堤江実、作曲・演奏:小久保隆 アルバム「ありがとう」より)

***************

 この詩は、1997年出版の私の詩集「エンジェル」(三五館)の中の一編です。
 ひとは、自然のめぐりの中に、循環するいのちのめぐりの中にとの思いから、書いたものです。
 およそ20年前のことです。
 そのころ、もうすでに地球温暖化の行く末に警鐘を鳴らす声は、世界中から聞こえていました。
 とりわけ、世界賢人会議・ブタペスト・クラブの会長、ハンガリーの哲学者アービン・ラズロー博士は、世界中で、その危惧を訴える活動を精力的に続け、日本でもたびたび講演を行っていらっしゃいました。その声は、人々の意識の覚醒を訴えて悲痛でさえありました。
 それでも私は、「循環」する地球の摂理は、絶対に揺らぐことはない、温暖化への危機感は認識していても、それは、まだまだ先のことと、油断をしていました。
 思えば、なんと無邪気だったことでしょう。
 それから、ほんの20年。
 気が付けば、ツバルの水没や、氷河の減少といった遠い場所での出来事ではなく、いま、ここ、日本でも気候変動は、どこかの大統領がうそぶくようなファンタジーなどでなく、現実なのだと感じられるようになりました。
 この32年間で一番寒い冬となった日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも、寒波が襲い、東ヨーロッパでは数十人が凍死しました。
 北極の夏の気温が、ここ15年間で2度上昇し、海氷の面積が減ったために、寒気と暖気の境を流れる偏西風のジェット気流が蛇行することによる影響だとか。
 大量の氷の溶解で、比重の違う海水と真水のバランスが変わり、世界の海を2千年かけてメビュースの輪のようにめぐっている海のコンベアベルトの循環も、どうやらうまくいかなくなってきたという報告もあります。
 まるで、地球が人類の生存を拒否しようとしているような…。

 進化生物学者のジャレド・ダイアモンド博士は、著書「第三のチンパンジー」の中で、人類を滅ぼす要素は、ジェノサイド・大量虐殺と環境破壊だと言っています。
 戦争は、紛争、内乱と名前を変えても世界中に今もなくならず、地球温暖化は、ますます加速度を加えています。
 「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」というフランスの民俗学者のレヴィ・ストロースの言葉が、6600万年前、小惑星の激突で地球環境が急変して恐竜たちが絶滅したように、なにやら現実味を帯びてきているようにも思えます。

 冬の後には、桜の春。約束された美しい四季のめぐりの中で、のどかに地球を信じて詩を書くことができたことが、今では遠いことのように懐かしく思えるのも恐ろしいことです。
 この美しい星に生まれた幸せに心から感謝しながら、詩を書き続けるためには、今何をしなければならないかと考えます。