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環境Q&A

今朝のTVニュースから 

登録日: 2003年08月03日 最終回答日:2003年08月15日 地球環境 オゾン層

No.3098 2003-08-03 15:32:54 工藤克明

8月3日のTVニュースで環境省から「長時間の日光浴は皮膚ガンの発生や白内障の発病する確率が高くなるので1日15分程度に押さえた方が良い」こんな発表が成された、との報道がありました。
しかし、検索したのですが見つかりませんでした。これは、勿論、根拠があることでしょうが、8/1に掲載した「大気中のHCFC・HFC濃度、2002年度も上昇傾向示す」この記事からから過剰報道されたものではないのか?判断できません。
もし、環境省で「1日15分程度に押さえて」と報道しているのであればその根拠を知りたいのと、(例えばオーストラリアでは確かこのようなことが法制化になっているようですが、例えばマリーンスポーツを日常的に楽しむ国柄でである事や、色の白い白人種(語弊のある言い方だと申し訳無いが)である事等を考え、他にも我々日本人でも個々によって差があるのでは?、そう思えるのです。それらを考えると、どうも本当に環境省としての発表であったのか?、大きな疑問を感じています。
前の厚生労働省だったと思いますが、キンメダイやメカジキの水銀問題で妊婦は1月に1回程度食す、みたいな報道の為に水産業が大きな打撃を受けたように、報道の難しさも考え、実際にこのような発表が成されたか?意見を伺いたいです。

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No.3105 【A-1】

Re:今朝のTVニュースから

2003-08-05 08:26:07 お役人

環境に関する情報は原則公開ですので、あらゆる情報が簡単に入手できます。取捨選択や解釈は、金融情報などと同じで情報の受け手責任であると思います。
税金でまかなわれている官庁情報は確度の高いものが多いことは当然です。
研究者の情報は学問としての歴史が浅いせいか玉石混淆のようです。
いちいち気にしていると、食べてよいものがなくなり、呼吸をすることさえリスクはゼロではありません。TVニュースやインターネット情報にあまり神経質になる必要はないと思います。
早寝早起きで、いろいろな種類の食品をバランスよく食べて、休暇を十分取って、くよくよしないでゆったり過ごすことがよいのではないかと思います。

報道記者の方は文系の方がほとんどなので、記事の科学的正確さは、はじめから期待する方が無理でしょう。コンテンツのみと考えれば報道記事はきわめて価値が大きいのですが、具体的内容は君山銀針さんのおっしゃるように一次情報をご自身で読み解くほか方法はないと思います。

回答に対するお礼・補足

御丁寧な回答ありがとうございます。このような情報によってあまり神経質になる必要の無い事、個々の解釈であり受けての責任である事は充分承知しており、この発表に起因するオゾン層の問題も環境省の発表とNASAの発表が根本で食い違っていること等、その研究者によっても考え方が違うことも理解しています。ただ、報道によって(これは報道する側の解釈によりますが)社会的な損害を発生した場合、その報道、情報源が大きく問題視されることもあるはずです。私自身はこのことで神経質になっていないのですが。一般社会の問題として質問致しました。どうも有り難う御座いました。

No.3106 【A-2】

Re:今朝のTVニュースから

2003-08-05 09:54:55 東京都 / 君山銀針

報道機関のニュースがいつも最新の記者発表をもとにしているとは限りませんよ。
報告書の内容など、速報性があまり問われないものは悪く言えば暇ネタとして余裕があるときに書くことがあります。

質問にあるニュースは
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030630-00000128-kyodo-soci
ではないかと思いますが、「大気中のHCFC・HFC濃度、2002年度も上昇傾向示す」
http://www.eic.or.jp/news/detail.php3?serial=5742
とは内容からいって別物。
この報告はEICネットでは6月に掲載された
「紫外線保健指導マニュアル」を発刊 http://www.eic.or.jp/news/detail.php3?serial=5515 ではないかと思います。

なお「紫外線保健指導マニュアルを発刊」 のニュースはEICネットでキーワードを多少工夫すると出てきました。(日光浴で検索)

さらにもとになった「紫外線保健指導マニュアル」原文http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_manual.htmlhttp://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/mat_04.pdf
をみると、「長時間の日光浴は皮膚ガンの発生や白内障の発病する確率が高くなるので1日15分程度に押さえた方が良い」という強い書き方ではなく、「私たちの体の中で、1日に必要とされるビタミンDがつくられるためには、顔や手への1日15分間の紫外線曝露で十分とされています」という内容になっています。
(この内容は参考文献2)World Health Organization: Environmental Health Criteria -Ultraviolet. WHO/EHC160, 1994.によるとの表記あり)
日光浴の主なメリットであるビタミンDの形成には15分で十分で、あとは紫外線をあびるデメリットのほうが多くなるということを暗示してはいますが、15分以上はダメとはいっていません。上記にリンクした共同通信のニュースでもわりとこの表現に忠実に書いてあります。

私にもよくありますが、ニュースを見たとき(聞いたとき)に自分の頭の中で翻訳してしまうこともあります。またもとのニュースが記者発表資料の内容をかなり翻訳していることももちろんあります。ニュースを探すときにはそういった伝言ゲーム的なニュアンスのずれ、
を考慮したほうがいいと思います。

回答に対するお礼・補足

非常に勉強になりました。私がこのニュースを見たのは国民的放送局のTVニュースであったと思います。その為に、それが6月時点に発表されたもので、それを一部分だけを強調されたようになっていることとは全く考えませんでした。報道に関しては、その報道のし方、スタンス(スポンサー)、そして表現のニュアンスなど、で受け手側が大きく誤解をうける事が多いのですが、我々がもっと勉強をしなければいけない、と云う事でしょうか。 有り難う御座いました。

No.3107 【A-3】

Re:今朝のTVニュースから

2003-08-05 10:19:58 東京都 / 君山銀針

なお環境省のマニュアルの記述のさらにもとになった
World Health Organization: Environmental Health Criteria -Ultraviolet. WHO/EHC160, 1994 の内容が http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc160.htm にありました。
そこでは
” For the entire system of vitamin D3 production the amount of UV radiation reaching the skin is critical. The doses needed are small, and daily exposures of the face and hands to sun and light for 15 minutes is considered sufficient. ”
「ビタミンD3 の生産の全システムのために皮膚に達する紫外線放射の量は危機的である。必要とされる線量は小さく、毎日15分の顔・手の日光浴(太陽や光への照射)で十分であると考えられる。」との記述があり、結構言い方が強いです。ということは某報道機関さんの報道も間違いではないかも。資料にあたっていくと、こういうことがあるので油断できません (^^;)

それと暇ネタの扱いの補足ですが、テレビニュースの場合は画像をつくらなくてはならないので、新聞より報道が遅くなる傾向があります。緊急性を要するニュースはそんなことはいっていられないので無理矢理にでも報道しますが、紫外線マニュアルのような多少時間がずれこんでもいいようなニュースなら、「太陽ギラギラ」みたいな映像づくりをしてから、と考えたのではないでしょうか?画面が訴える効果を考えるとその判断も間違いではないような気がします。

回答に対するお礼・補足

御丁寧に有り難う御座いました。これからも御指導を宜しくお願いします。

No.3204 【A-4】

Re:今朝のTVニュースから

2003-08-15 11:36:31 中根英昭

 ご質問への直接の回答ではないのですが、A-2への回答へのお礼についてコメントさせて下さい。NASAの発表と環境省の発表の「食い違い」についてです。実は、食い違いなど無い、と私は思います。以下、ご説明します。
 一部の報道には、NASAの発表と環境省の発表に食い違いがあるように読める表現がありますが、NASAは高度35-45km、環境省は主に成層圏全層(15-50km)のオゾンについて述べており、私は両者共に正しく矛盾はないと考えています。(報道自身も間違っている訳ではなく、食い違いがあるという印象を与えやすい、若干舌足らずな表現ということです)。
  35−45kmの上部成層圏は、モリーナとローランドが発見したオゾン破壊メカニズムで、フロンが分解して出来た塩素原子が、連鎖反応的に気相反応により効率的にオゾンを破壊する高度です。実際、オゾン破壊の証拠物質であるClOの濃度は40km付近で最大です。
 もう一つのオゾン層破壊は、南極や北極の成層圏に出来る雲(極域成層圏雲;PSC)や火山噴火起源の成層圏の硫酸エアロゾルの粒子の表面での「不均一反応」によってオゾン層破壊物質の活性化が起こるものです。このオゾン層破壊は下部成層圏で起こりやすいものです。
 上部成層圏のオゾンのオゾン全量への寄与は小さく、火山噴火や気象の影響、オゾンホールなどの影響を受けて変動しやすい下部成層圏の時間変化がオゾン全量に強く反映するので、オゾン全量ではフロンの影響によるオゾン破壊の変化は見えにくい。しかし、地上紫外線に影響を与えるのはオゾン全量です。上部成層圏は単純で、化学反応が支配的なので、フロンによるオゾン破壊の変化が見えやすい。NASAの研究者はそこに焦点をあててデータを解析しました。つまり、オゾン層の回復早期検出に良い高度と考えた訳です。
 NASAの仕事は立派なもので、このような解析が可能になったのは、太陽活動周期(11年)の2周期ほどの長期のデータを取っており、太陽活動の影響によるオゾンの変動を除去しやすかったことです。長期のデータを頑張ってとっていることが重要です。
 と同時に、環境省の発表はオゾン層全体について観測結果から言い得ることを正確に発表していると思います。

回答に対するお礼・補足

御丁寧にありがとうございます。発表が多少食い違って感じた事や、報道の表現にすこし疑問を感じていたのですが、どうも私の解釈にも誤解があったようです。勉強になりました。

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