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No.239

Issued: 2016.02.02

COP21の成果と今後(環境省地球環境局)

第2幕「交渉の経緯と論点」

 第2幕では、各国が自ら目標を設定し国際社会に示すことで、多くの国の参加を可能にした約束草案という仕組みと、 2020年以降の新しい国際枠組みについてこれまで議論を重ねてきたADP会合の交渉の経緯、そしてテロの影響で厳戒警備態勢の中で始まったCOP21会合の詳細についてレポートします。

約束草案

【表1】各国の約束草案の提出状況
【表1】各国の約束草案の提出状況 ※拡大図はこちら

 「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」(ADP)の交渉の過程では、各国の様々な意見が対立し、合意に向けた道のりは平坦ではありませんでした。まず交渉の初期の段階では、各国の置かれている社会的・経済的な状況が異なる中で「すべての国に適用される」枠組みをいかに構築するのか、という根本的な課題がありました。これについては、「各国の目標はまず各国が自ら定め、それを国際社会に示す」方式が有効であるとの認識が徐々に共有され、2013年ポーランド・ワルシャワでのCOP19において、各国がCOP21に十分先立って(準備ができる国は2015年3月末までに)、それぞれの目標の案(約束草案)を示すことが合意されました。
 これは、他者から目標を押しつけられるような形の枠組みに途上国を含むすべての国が合意することは困難であるという現実を踏まえたものであるとともに、各国が自ら目標を定めることで各国の実情を反映した取組が可能となり、その結果「共通だが差異のある責任」原則が自ずと実現されるとの考え(自己差異化Self-differentiation)が背景にありました。特に先進国としては、こうした自己差異化により、気候変動枠組条約や京都議定書に見られる、先進国、途上国を明確に規定し両者の対応の違いを設ける「二分論的アプローチ」を変えることができる、との期待が込められました。
 2014年末ペルー・リマでのCOP20において、約束草案は緩和(温室効果ガスの排出の削減・抑制等)に関するものであること、加えて、各国は適応(気候変動の温暖化の影響への対応)についても約束草案に含めるよう検討できることが確認されるとともに、約束草案を提出する際に含めるべき情報について合意されました。
 これを受け、2015年2月末のスイスを皮切りに徐々に各国が約束草案を示しました。我が国も7月17日に地球温暖化対策推進本部において、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減(2005年度比25.4%削減)する「日本の約束草案」を決定し、条約事務局に提出しました。COP21開催前の11月初めには、世界の4分の3以上に当たる約150の国・地域が約束草案を提出しました。これは、エネルギー起源CO2排出量で見ると世界全体の排出量の約87%をカバーすることになります。さらにその後も約束草案の提出が進み、2016年1月現在ですでに190近くの国が提出しています。

 この約束草案に基づくアプローチは、新しい枠組みへの多くの国の参加を可能とする反面、それによる実効性、すなわち世界の温室効果ガス削減への効果については課題が残ります。国際交渉の中では、2010年のCOP16での合意(COP決定)である「カンクン合意」などにおいて、いわゆる2℃目標(産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えるとの目標)が認識されてきましたが、こうした気候変動に対処するために必要な削減量と比べて、各国がそれぞれの事情を踏まえて作成した目標で果たして十分なのか、という懸念です。2014年ペルー・リマで開催されたCOP20では、各国が提出した目標を他国に説明し、その削減努力の妥当性等について互いの理解を深めることを目的とした事前協議プロセスの導入が議論されましたが、中国など一部の途上国の反対により合意に至りませんでした。一方、条約事務局に対し、2015年10月1日までに各国から提出された約束草案を対象として、その総計された効果に関する統合報告書を11月1日までに作成するよう求めることとなりました。
この報告書が2015年10月31日に公表され、以下の点が指摘されました。

  • 1)約束草案により、2010〜2030年の排出量の増加率はその前の20年間と比べ3割前後(10〜57%)低減される。また、約束草案がない場合と比べ2030年に約36億トンの削減効果がある。
  • 2)2025年及び2030年の排出量は、2℃目標を最小コストで達成するシナリオの排出量からそれぞれ87億トン、151億トン超過しており、同シナリオの経路に乗っていない。(ただし、今世紀末の予測気温は、2030年以降の社会経済要因等にも依存するため、本報告書では評価していない。)
  • 3)2030年以降の一層の削減努力により2℃目標の達成の可能性は残っている。その場合は2030〜2050年に年平均約3.3%の削減が必要。これは2℃目標達成シナリオと比べ2倍の削減率に相当。2030年以降に2℃目標に向けた必要な対策を取る場合は、相当多額のコストを要することとなる。

交渉における主要論点

 各国が提出する約束草案はCOP21における合意の前提、基盤となるものであり、COP21開始前に世界の多くの国が約束草案を提出していたことはCOP21の成功に向け前向きな要素でした。また、世界の二大排出国である米中の首脳が2014年11月、2015年9月の2回にわたり共同声明を発表し、パリ合意に向けた協力を確認するなど、COP21での合意に向けた政治的な機運が示されていました。
 しかし、ADP会合における交渉では多くの論点で各国間の意見が対立しました。大きくは「先進国」と「途上国」の間で主張が対立する構図でしたが、開発途上国の中でも、新興国、小島嶼国、後発開発途上国(LDC)やアフリカ諸国など様々な交渉グループの間で意見が多様化し、議論はいっそう複雑なものとなりました。気候変動による影響が顕在化してくる中で、緩和(排出削減)だけでなく適応の問題が多くの途上国にとっての懸案となり、さらにはすべての国の参加を確保するための資金、技術、能力開発などの支援(交渉上は「実施の手段」と呼ばれた)のあり方など、論点が多様化したことも、かつての京都議定書交渉等との違いでした。具体的には、以下のような論点がありました。

  • 1)差異化:新たな法的合意のあらゆる要素(目的、緩和、適応、支援、透明性など)に関して、各国の対応の違いを設けるか否か、設ける場合どのように規定するのか、という課題です。一般に開発途上国は、条約や京都議定書と同様「先進国」「途上国」の違いを明確にすることを求め、対して先進国は「すべての国に適用される」枠組みにおいて極力、こうした二分論的な差異を設けない枠組みを追求していました。
  • 2)緩和(排出削減):各国が提出する排出削減目標(緩和に関する約束草案)が新たな枠組みのベースとなることには一定の合意がありましたが、その目標に関する義務のあり方やその法的拘束力、遵守規定のあり方が論点となりました。さらには、上述した通り各国の目標を足し合わせても2℃目標達成には十分でないことが認識される中で、各国の目標(野心)を向上させていくための仕組みづくりが論点となりました。
  • 3)適応:新たな枠組みは、緩和だけでなく適応についての取組を強化するものであるべき、との認識は共有されていましたが、具体的に適応に関する世界全体の目標の設定の必要性やその内容、各国の取組(義務)の内容、気候変動の影響に特に脆弱な途上国における支援の必要制とその内容などが特に論点になりました。また、特に気候変動の悪影響に脆弱な小島嶼国、LDC等の途上国は、気候変動により生じた損失と損害(ロス&ダメージ)に関する規定を法的合意の中に位置づけることを主張し、政治的な論点となりました。
  • 4)支援:開発途上国の緩和及び適応の取組を進めるための支援の在り方が、「資金」「技術開発・移転」「能力開発(キャパシティ・ビルディング)」の三つの要素(これらをまとめて「実施の手段」means of implementationとも呼ばれた)について議論されました。特に資金支援について、条約に規定されている「先進国が途上国を支援する義務」を新たな枠組みにおいてどのように位置づけるのか、また、先進国による資金支援の定量的な目標設定などが政治的な論点となりました。
  • 5)透明性:各国の取組状況を報告し国際的に検証していくことが重要ですが、既存の報告・検証制度では先進国と途上国の対応に明確な差異がある中で新しい枠組みでどのように「透明性」の仕組みをルール化していくのかが議論となりました。
  • 6)市場メカニズム:我が国が推進する二国間クレジット制度(JCM)を含む市場メカニズムを新たな枠組みにおける目標達成に活用しうるかどうか、また活用する際の仕組みづくりが論点となりました。

COP21における交渉の経緯

 COP21初日の11月30日には首脳級セッションが開催され、安倍総理を含む約140か国の首脳が参加しました。会合の約2週間前にパリ及びその周辺で起きたテロ事件を踏まえた厳戒警備態勢の中、多数の首脳が一堂に会し、新たな枠組み合意に向けた意志を示したことは、交渉を強く後押ししました。前日の29日夕方から開会されたADP会合でもこうした機運が後押しとなって、各論点に分かれたスピンオフ・グループ等の場で事務方の交渉が続けられました。1週間にわたる協議の後、12月5日(土)に法的合意及びCOP決定の案、さらにそれに対する各国のコメントを束ねた成果文書案(Draft Paris Outcome)をCOPにおける閣僚級の議論に送ることを確認し、ADP会合は閉幕しました。しかしながら、この文書案は、各国の様々な意見が数多くのオプションの形で併記された上に、その案に対する各国の意見が添付され、最終的な合意文書にはほど遠い内容でした。
 当初は会合の予定がなかった12月6日(日)、議長を務めるファビウス仏外務大臣の呼びかけによって、「支援」「差異化」「野心」「2020年までの行動の促進」をテーマとする非公式な閣僚級会合が開催されました。前夜にパリ入りした丸川環境大臣も早速この議論に参加しました。
 その後、第2週の交渉は、[1]ファビウス議長が議長を務め、閣僚級が参加する全ての国に開かれた会合(「パリ委員会」と命名)、[2]閣僚級によるテーマごとの非公式協議(テーマごとに議論の進行役(ファシリテーター)として各国の閣僚を指名)により進められました。
 12月9日(水)の15:00に第3回目のパリ委員会が開催され、そこでファビウス議長より成果文書の議長案第1版(Draft Paris Outcome Version 1)が示されました。同日20:00より開催された第4回パリ委員会で、この案に対して各国が意見を述べた後、同日深夜(10日午前0時)から「インダバ形式」での協議が行われました。インダバ(Indaba)とは、南アフリカ・ダーバンでのCOP17で行われた議論の形式で、アフリカのズールー族の言葉で「車座になって行われる集会」を意味します。各国の出席者が互いに向かい合う形(「ロの字」型)で議論を行うものです。この日のインダバでは、「差異化」「野心」「資金」がテーマとなり、平行して「ロス&ダメージ」「協力的アプローチ及び市場メカニズム」「森林」「前文」に関する非公式協議も別室で行われました。
 こうした議論の結果を踏まえて、翌10日(木)21:00に開催された第5回パリ委員会において、議長提案の第2版(Draft Paris Outcome Version 2)が発表されました。この版は、第1版で多く残っていたオプションを大幅に削減し、最終的なCOP21決定の様式に整えるなど大きな進展を見せました。この第2版に対し、2度目のインダバ協議(議長により「解決のためのインダバ(Indaba of Solutions)」と命名)が10日23:30頃より翌11日未明まで開催されました。この際もインダバ協議と平行して「差異化」「野心」「資金」「市場メカニズム」について別室での協議が設定され、その結果がインダバの場に報告される形で議論が進められました。この協議の最後に議長より、11日(金)は終日、議長と各国・グループの間の協議あるいは各グループ間の調整を行うこと、COPを延長し12日(土)の朝に最後の合意案を示すことが説明されました。
 12日(土)11:30から開催された第6回パリ委員会には、オランド仏大統領及び潘基文国連事務総長も登壇し合意が促された後、13:30に成果文書の最終案が示されました。最終的に同日19:00から開催された第7回パリ委員会において、最終案について何点かの「技術的修正」を施すことが条約事務局から説明され、その後速やかにCOP全体会合に移行し、19:30前、技術的修正を含めた内容でパリ協定及び関連するCOP21決定が合意されました。その後各国代表からのステートメント等が行われた後、COP21は13日0:30頃に終了しました。

パリ協定採択の瞬間(出典:気候変動枠組条約事務局HPより転載)
パリ協定採択の瞬間(出典:気候変動枠組条約事務局HPより転載)

次ページは、「パリ協定の概要」について解説します

(記事・図版:環境省地球環境局)

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