EICネット
前のページへ戻る

EICピックアップ

環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げて(ピックアップして)、有識者に寄稿してもらったり取材して記事にまとめたりして、わかりやすくご紹介します。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

No.239

Issued: 2016.02.02

COP21の成果と今後(環境省地球環境局)

第4幕「パリ協定の特徴・意義及び今後の対応」

 今回合意されたパリ協定は、[1]すべての国に適用される枠組みであること、[2]緩和、適応、資金等各要素をバランスよく扱っていること、[3]長期の取組を視野に入れた永続的な枠組みであること、[4]取組を前進・向上させる仕組みになっていることの4つが特徴として挙げられます。
 以下、これらパリ協定の特徴・意義と、我が国を含む各国の今後の対応について解説します。

すべての国に適用される枠組み(Applicable to all)

 パリ協定の第一の特徴は、「すべての国に適用される枠組み」です。これは、この交渉の出発点となったダーバン合意に規定されており、この協定の特徴としてまず注目すべき点と言えるでしょう。先進国を附属書という形でリストアップして、先進国(附属書I国)とその他の国(非附属書I国)の対応に明確な違いを設けた気候変動枠組条約及び京都議定書と異なり、パリ協定の主要な規定の多くは、「すべての締約国」に適用される形となっています。
 資金支援に関する規定や、各国の緩和貢献のタイプに関する一般的責務など、先進国、途上国の書き分けが残った部分もありますが、いずれも「先進国」「途上国」を具体的に定義しておらず、また両者の責務等の内容の隔たりも、条約や京都議定書と比べると相当小さくなりました。「共通だが差異のある責任と能力」等の条約の原則は踏まえつつ、時代の変化に即してより現実的かつ実効的な形の枠組みとした、と言うことができます。

緩和、適応、資金等の要素を包括的に取り扱っていること(Comprehensive)

 第二の特徴として、パリ協定は、緩和、適応、資金、技術、能力開発、透明性といった要素をバランスよく包括的に取り扱っています。協定の目的も、緩和だけでなく適応、資金に関する目的も含め3つの目的を定めています。
 先進国の温室効果ガス排出削減を狙いとした京都議定書と比べて、そのスコープの拡がりは歴然です。気候変動枠組条約にはこうした6つの要素が大なり小なり盛り込まれていますが、パリ協定はそれをより具体的に規定することで、今後の気候変動対策を包括的に進める上での指針となるものです。特に、気候変動の影響が目に見えて現れてきている中、適応に関する各国の取組の強化とそのための支援の重要性の認識、さらにはロス&ダメージに関する規定等が法的合意に位置づけられたことは、重要なメッセージとして受け止める必要があります。

長期の取組を視野に入れた永続的な枠組みであること(Durable)

 第三の特徴は、長期的な視点に立って取組を進めていくことを促すところにあります。今世紀後半の排出と吸収のバランスを目指すとの長期目標の設定、各国に長期の低排出開発戦略の策定を求めたこと、さらには5年ごとの各国の目標提出のサイクルといった規定は、いずれも2025年や2030年までという時限的な枠組みでは無く、長期的な取組を目指して対応を進めることを念頭に置いたものです。
 まさに21世紀の気候変動対策の枠組みを形作ったものと言えるでしょう。

取組を前進・向上させていく枠組みであること(Progressive)

 第四に、そうした長期的な取組の中で、各国、そして世界全体の対応を前進させていくための仕掛けが組み込まれたことが、パリ協定を実効性あるものとする上で特に重要なポイントです。
 協定の目的に関する世界全体での進捗確認(グローバル・ストックテイク)と、すべての国による従来の取組よりも前進させた削減目標の提出・更新が、ともに5年おきに進められます。その際、グローバル・ストックテイクは各国の目標の提出・更新に先んじて行われ、各国の取組の向上に対して情報を与えることが規定されています。2023年にグローバル・ストックテイクが行われ、その結果を受けて各国が目標を見直し2025年のCOPの9〜12か月前に提出する、その後も5年おきにこの流れが繰り返されることとなります。
 また、COP決定により、2018年に緩和貢献に関するグローバル・ストックテイクに相当する「促進的対話」を実施し、各国が2020年までに現在の約束草案を更新又は提出することも規定されています。
 加えて、各国の異なる能力を考慮し、柔軟性が組み込まれ強化された一つの透明性枠組みの下で、各国の取組の実施状況を国際的に報告し、専門家のレビュー等を受けることとなります。こうした各国の取組の進展状況もグローバル・ストックテイクを行う際の情報の一つとなっていくことが想定されます。
 以上の「世界全体の進捗点検」「各国の目標の見直し(従来の目標からの前進)」「各国の取組の実施状況の報告・レビュー」が密接に関連したPDCAサイクルを回していくことで目標・対策の向上を図っていく仕組みとなっています。

 こうした特徴を持つパリ協定は、歴史上はじめて、途上国も含めたすべての国が参加する枠組みであり、公平かつ実効的な合意と呼ぶにふさわしい内容です。1990年代にできた気候変動枠組条約を時代の変化に見合った形で変化させ、これからの世界の気候変動対策を強化していく上での礎となる、転換点あるいは新たな出発点といえる枠組みなのです。

我が国及び各国の今後の対応

 パリ協定の採択後、世界の多くの国が歓迎の意を表明しました。我が国も13日(日)に、「この合意を高く評価」し、我が国としても気候変動問題について「内閣の最重要課題として取り組む」旨の安倍内閣総理大臣の談話を発表しました。さらに、12月22日に地球温暖化対策推進本部(地球温暖化対策推進法に基づく閣僚級の会議。総理大臣を本部長、環境大臣及び経済産業大臣を副本部長とし、すべての閣僚が参加)を開催し、パリ協定を踏まえた今後の地球温暖化対策の方針について決定しました。
 まず、国内対策の実施については、我が国が国際社会に約束した約束草案を着実に実施していくことが極めて重要です。このため、2016年春までに地球温暖化対策推進法に基づく地球温暖化対策計画を策定します。中央環境審議会・産業構造審議会の合同会合を中心に検討していくこととしており、早速、同日午後に両審議会の合同会合が開催されました。また、同じく2016年春までに、政府として率先的な地球温暖化対策を推進するべく、先導的な対策を盛り込んだ政府実行計画を策定することとしています。さらに、民生部門等国民の生活に伴う温室効果ガスの排出削減を進めるため、政府が旗振り役となって地球温暖化防止国民運動を強化することとし、地方公共団体、産業界、全国地球温暖化防止活動推進センター、NPO等多様な主体が連携し、情報発信、意識改革、行動喚起を進めます。
 適応に関する取り組みを強化していくことも重要です。我が国はCOP21直前の11月27日に「気候変動の影響への適応計画」を閣議決定しました。この適応計画と、緩和分野における地球温暖化対策計画を両輪として、我が国の地球温暖化対策を強化・推進していきます。
 約束草案は2030年を目指すものですが、パリ協定に定められた長期目標を踏まえて、より長期的な視点に立った低炭素戦略の検討にも着手していきます。

 国際的には、パリ協定の署名、締結に向けた準備を着実に進めていくことが重要です。パリ協定は2016年4月22日から1年間、ニューヨークの国連本部で署名のため公開され、4月22日には署名式が執り行われます。その後各国が締結の手続きを進め、発効要件(55か国以上かつ全世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める国の締結)が満たされた30日後にパリ協定が発効することとなります。我が国の締結に当たっては、そのために必要な国内の体制を整備する必要があります。こうした署名及び締結に向けて着実に準備を進めていきます。

 さらに、パリ協定の実施のための詳細を定めていく必要があります。緩和、適応、資金、透明性などの要素について、パリ協定の実施に関する手続きや指針等は、パリ協定の締約国会議で決定するとされているものが多く、そのための検討を、新たに設置することが合意された「パリ協定の実施に関する特別作業部会(APA)」や条約補助機関会合などの場で進めていくことが、COP21決定で決まっています。その中には、透明性枠組みに関する手続きや市場メカニズムの活用に関する指針など、パリ協定の実効的を高めるために重要な事項も多く、パリ協定の着実かつ効果的な実施に役立つ詳細ルールを検討し設定していく必要があります。我が国としても、こうした詳細ルール交渉に積極的に参加・貢献していきます。

平成27年12月22日 地球温暖化対策推進本部にて発言する安倍首相(出典:首相官邸ホームページ)
平成27年12月22日 地球温暖化対策推進本部にて発言する安倍首相(出典:首相官邸ホームページ)

(記事:環境省地球環境局)

ページトップ