EICネット
前のページへ戻る

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
今年も、福島の復興が大きなウエイトを占める
COP20では、COP21に向けて一定の基盤つくりができた
ある程度人が入って自然を護ることを大事にしたい
【1】COP20(気候変動枠組条約第20回締約国会議)
 2014年12月1日から12月14日まで、ペルーの首都リマで開催。この会議で、2020年以降にスタートさせる新たな枠組みの草案を起草し、2015年12月にパリで開催されるCOP21で「意味ある合意」をまとめることを目指している。
【2】モメンタム(momentum)
 勢い、推進力。
【3】約束草案(intended nationally determined contributions)
 2015年の合意に先立ち、各国の気候変動対策の政策決定プロセスに関する目標。

No.033

Issued: 2015.01.27

第37回 鈴木正規環境事務次官に聞く、2015年の環境行政の展望[1]

実施日時:平成27年1月7日(水)15:45〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

今年も、福島の復興が大きなウエイトを占める

鈴木正規(すずきまさき)さん
鈴木正規(すずきまさき)さん
環境事務次官。
環境省大臣官房審議官、自然環境局長、地球環境局長、官房長を経て、14年7月から現職。

大塚理事長(以下、大塚)― 明けましておめでとうございます。
年頭にあたり、環境行政の責任者の立場から2015年を展望するお話をいただきたいと存じます。
鈴木さんが環境事務次官に就任され半年になろうとしておりますが、環境行政のモットーですとか、本年の基本方針について、最初にお伺いしたいと思います。

鈴木さん―  環境省が取組む仕事は年を追うごとに多岐にわたってまいりましたが、どれもが疎かにできないものと認識しています。国民の皆さまの生命や生活にかかわる問題が多く、皆さまからの期待あるいは付託に十分応えることが、環境省の使命と考えております。省内のそれぞれの局、課、室の職員が担当するテーマに一所懸命に取組んでおりますので、私としては、全員が全力を発揮できるようしっかりサポートをしたいと思っています。

大塚― 環境省が取組むテーマがますます多岐にわたっていることは、私たちも強く感じています。それら多くの課題の中で、鈴木さんが最も力を入れようとされていることからお話しください。

鈴木さん―  今年も、福島の復興が大きなウエイトを占めると考えています。昨年、放射性物質に汚染された土壌等を搬入する中間貯蔵施設について、福島県などにその建設を受け入れていただきましたので、これから中間貯蔵施設の整備に取り掛かります。地元や住民の方の理解を得つつ、事業をいかにスムースに進めていくかに全力を注ぐつもりです。また、除染についても一昨年の年末にスケジュール全体の見直しをいたしましたので、それに合わせて作業を進めてまいります。再度の見直しは許されないと考えております。さらに、放射能汚染にかかわる健康影響を心配される方が多くおられますので、この面でのフォローにも今まで以上に取組む必要があります。このように、福島を中心とした震災関連の課題が、何といっても重要になります。

大塚― 中間貯蔵施設については、お話しいただいたように地元から受け入れが認められましたし、実行に着手されると期待しておりますが、今年1年でどのくらいのところまで進むとお考えでしょうか。

鈴木さん―  そのとおりですが、なかなか難しいところもございます。まずは、中間貯蔵施設の用地の確保を進めることが先決で、そのためには地権者の方々のご理解を得る必要があります。この重要な宿題には去年から取組んでおりますが、その結果をみながら貯蔵の作業も進めることになりますので、まずはこの点に全力をあげようと考えています。


中間貯蔵施設の個別施設と処理フローのイメージ
中間貯蔵施設の個別施設と処理フローのイメージ ※拡大図はこちら

COP20では、COP21に向けて一定の基盤つくりができた

大塚― 福島をはじめとする復興のテーマとともに、グローバルにみると、地球温暖化をはじめとする気候変動の重要性が増し、大規模な災害が増えていることが緊急性を高めているように感じます。昨年12月にペルーで開かれたCOP20(気候変動枠組条約第20回締約国会議)【1】について、鈴木さんのお立場から、どのような成果があり、どのような課題があるかをお話しいただきたいと思います。

鈴木さん―  最大の成果は、今年の年末にパリで開かれるCOP21に向け、2020年以降の新たな枠組みをつくるというモメンタム【2】が維持され、温室効果ガスの2大排出国である中国とアメリカを含め、すべての国が合意したことだと思います。その前提となる各国の目標を約束草案【3】と申しますが、その中にどのような内容を盛り込むかについても、非常に粗いものとはいえ大筋の合意ができました。COP21に向け、一定の基盤つくりができたと考えています。

ペルー・リマで開催されたCOP20の会場正面玄関
ペルー・リマで開催されたCOP20の会場正面玄関

大塚― 京都議定書以来の日本の念願が実ったのだと思います。ところで、温室効果ガスの排出量の削減目標の枠組みについて、日本を含め、パリのCOP21で具体的な進展が期待できるのでしょうか。

鈴木さん―  今回の枠組みは、米中がかなり主導しながら進められました。とはいえ、各国が自主的に「野心的ではあるけれども実行可能な」、あるいは「実行可能ではあるけれども野心的な」目標を立てていきましょうとなったわけです。日本については、今の状況の中で、「実現可能性」と「野心的」を両立させる目標を早急に作ることになります。望月環境大臣もできるだけ早く作りたいとの意向ですし、具体案の作成が今年の大きな仕事になると考えています。

大塚― COP20では、途上国の中でも少しずつ意見が異なる傾向がでてきたと報道されていますが、この点を含め、温暖化の影響を強く受ける途上国の立場、あるいは途上国に対する先進国の立場についてはどのようにお考えでしょうか。

鈴木さん―  途上国では、貧困問題がやはり大きな問題と思います。その上、気候変動との関連が想定されるさまざまな災害が起きているわけで、被害の度合いによって、国による対応の差が出てきているようにも感じます。途上国が強い関心をもつのは、被害をいかに小さく抑えるか、あるいは被害が出たとき資金援助などの支援をどの程度受けられるかで、先進国の政策を見ながら対応している面もあるように思います。今回のCOP20で、途上国の温室効果ガスの削減を支援するための「緑の気候基金」への出資額が、先進国を中心に100億ドルを超えたことなどから、これからも先進国と途上国との駆け引きがつづくとしても、今回の枠組みが根幹から破綻することはないと思います。



ある程度人が入って自然を護ることを大事にしたい

大塚― 地球温暖化あるいは気候変動にかかわり、「災害」と「環境」が非常に近いテーマになってきたように感じます。「災害」に対してもさまざまな技術やノウハウをもつ日本の活躍を期待したいと思います。
ところで、鈴木さんは自然環境局長を経験されていますが、生物多様性をはじめとする自然環境保全も重要な課題と思います。その一方で、日本における大きな問題は鳥獣による被害の深刻化でしょう。

鈴木さん―  日本における自然の原点として、奥山があり里山があり集落があることが特徴でした。その中で、鳥獣と人の棲み分けがなされ、里山では人の手が入った形で独特の自然が護られてきました。ところが、人口減少あるいは高齢化が進む状況で、人手によって護られてきた里山がだんだん荒れているわけです。そのような自然をどう護るかが、1つの重要なポイントになると思います。具体的には、人がそのような場所に入る機会を増やす、たとえば観光を含め、自然を見てもらうことなどにより、できれば雇用の機会が生まれ、里山的な自然の維持につながればと思います。バランスをとることが非常に難しいのですが、ある程度人が入って自然を護ることを大事にしたいと考えています。

自然植生を食べるニホンジカ
自然植生を食べるニホンジカ

里山の風景(石川県輪島市)
里山の風景(石川県輪島市)


大塚― 昨年、鳥獣保護法が改正されましたが、ただ今ご指摘された点とも関連があるのですね。

鈴木さん―  「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が昨年5月に成立いたしました。その最大の目的は、「生物多様性の確保」と、「生活環境の保全」および「農林水産業の発展」を両立させることです。ご承知のように、野生動物の個体数が増加をつづけ、イノシシによる農作物の食害やニホンジカによる自然植生の食害が深刻化しています。今回の法律改正により、野生動植物と人との新たな関係づくりが進むことを期待しています。


ページトップ