EICネット
前のページへ戻る

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
世界遺産は条約で合意した国同士の約束ごと
世界遺産の登録条件は「価値」「完全性」「保護管理」の3つ
【1】ユネスコ
 国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization / U.N.E.S.C.O.)。
 1946年11月4日、国際連合の専門機関として誕生。教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉を促進することを促進することが目的。日本は1951年7月2日に60番目の加盟国となった。
【2】屋久島環境文化懇談会
 鹿児島県総合基本計画の戦略プロジェクトのひとつとして1992年(平成4年)に策定された、屋久島環境文化村構想の理念を検討するために設置された懇談会。屋久島環境文化村研究会、屋久島環境文化村マスタープラン研究委員会とともに、自然と人間の共生を実現しようとする新しい地域づくりの試みである同構想をとりまとめた。
【3】世界遺産の10の評価基準のうち自然遺産に関する4つ
 世界自然遺産に登録されるためには4つの評価基準、すなわち「自然美」「地形・地質」「生態系」「生物多様性」のいずれかを満たす必要がある。屋久島は「自然美」と「生態系」、知床は「生態系」と「生物多様性」、白神山地と小笠原は「生態系」で基準を満たすと認められた。

No.079

Issued: 2018.07.20

第79回 江戸川大学・国立公園研究所長の中島慶二さんに聞く、日本の世界自然遺産と国立公園のいまとこれから[1]

実施日時:平成30年6月29日(金)
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

世界遺産は条約で合意した国同士の約束ごと

中島 慶二(なかじま けいじ)さん
中島 慶二(なかじま けいじ)さん
江戸川大学国立公園研究所長・社会学部現代社会学科教授。専門は環境政策・環境社会システム。
環境省レンジャーとして、国立公園や自然遺産など自然保護と地域づくりの現場で長く実務に携わる。環境省時代には、エコツーリズム推進法の草案づくり、ワシントン条約やラムサール条約に基づく国際協力、全国の鳥獣被害対策など、自然環境行政の最前線で現実の課題と向き合ってきた。
2017年〜現職。
共著に『国立公園論』(南方新社)2017年。

大塚理事長(以下、大塚)― 今回は、長年にわたり環境省で自然環境行政に取り組まれた後、現在は江戸川大学教授として自然保護地域や自然保護に関する教育・研究に携わっておられる中島慶二さんにおでましいただきました。夏休みの旅行シーズンを前に、日本の世界自然遺産の特徴や利活用のポイント、さらには国立公園との関係などについて中島さんからお話を伺いたいと思います。
最初に、世界自然遺産はどのような目的で作られ、日本はどのように取り組んできたのか、お話いただけますか。

中島さん― よくユネスコ【1】の世界遺産と言われるのですが、実際は世界遺産条約という国家間の約束ごとです。人類共通の財産である、文化的なものと自然とを守っていこうと、2018年(平成30年)2月現在、世界193か国が条約を結んでいます(ユネスコ加盟国は195か国)。

大塚― ユネスコという国連機関が取り決めているのではなく、国が取り組む人類共通の資産と位置づけられているということですね。

中島さん― はい。国が主体となってその国の資産・遺産をしっかり守っていくしくみになっています。

大塚― 何年くらい前に始まったのですか。

中島さん― ユネスコの総会で条約が採択されたのは1972年です。ところが日本は、20年間条約に参加していません。

大塚― 参加しなかった理由は何でしょうか。

中島さん― はっきりはわかりませんが、私なりに推測すると、条約の一番の眼目が主に途上国の遺産の保護を先進国も手伝うということだったからではないかと思います。先進国はどちらかというと途上国の保護活動を支援する立場で関わるので、すぐに加盟しなければならないような状況ではなかったようです。採択から19年目の1991年(平成3年)、「屋久島環境文化懇談会【2】」の中で当時、国立公園協会の理事長だった大井道夫さんが、日本は条約に加盟した上で屋久島を世界遺産に登録すべきではないかと発言されて、それから外務省も政府全体も動いて、翌年の1992年(平成4年)には条約が締結されました。そして1993年(平成5年)に「屋久島」と「白神山地」が自然遺産で、姫路城と法隆寺が文化遺産で登録されました。
自然遺産については、2005年(平成17年)に「知床」、2011年(平成23年)に「小笠原諸島」が加わり、2018年(平成30年)現在で4か所が登録されています。

白神山地(環境省提供)
白神山地(環境省提供)

プユニ岬からみた流氷(知床)(環境省提供)
プユニ岬からみた流氷(知床)(環境省提供)


小笠原諸島の南島と父島(環境省提供)
小笠原諸島の南島と父島(環境省提供)

屋久島の縄文杉(環境省提供)
屋久島の縄文杉(環境省提供)


世界遺産の登録条件は「価値」「完全性」「保護管理」の3つ

大塚― 今日は自然遺産を中心にお話を伺います。日本にはもともと国立公園や国定公園などの自然公園がありますが、世界自然遺産はそれとは切り離して考えられていたのでしょうか。

中島さん― その逆で、まずは国立公園や保護地域の制度で守られていなければ、世界遺産の登録ができないのです。登録された世界遺産はそれぞれの国がその国の責任で保護する義務があるので、国内法で保護のしくみを作っていなければ、実際に登録地が守られないということなのです。

大塚― 国として、しっかり保護しますよ、というのが前提なのですね。

中島さん― 世界遺産の登録条件には、「価値」「完全性」「保護管理」の3つがあります。1つめの「価値」は、世界遺産の10の評価基準のうち自然遺産に関する4つ【3】のどれかに該当することが必要です。「完全性」とは価値を表しているエリアが基本的にすべて含まれて守られているのかという視点です。3つめは保護管理がしっかりできているのかということです。仮に国立公園などで保護されていない資産を推薦しても、国で保護ができていないという理由で登録されません。

大塚― 世界自然遺産に登録された場所を利活用する場合に、世界遺産委員会から何か言われることはあるのでしょうか。

中島さん― 世界遺産条約は基本的に、人類共通の遺産として価値のある場所をずっと残していきましょうと主張しているので、活用についてあまり言われることはありません。ただし、世界遺産として登録された結果、観光地として注目される可能性は高いので、環境教育やエコツーリズムなどを通じて人びとの注目を保護にとってプラスとなるべく転換するようにと、助言されることはあります。

大塚― 小笠原諸島や屋久島は環境教育などにとても良い場所だと思いますが、まずは保護をしっかり行うことに重点がおかれているのですね。


日本の国立公園は34か所(日本の国立公園: https://www.env.go.jp/park/parks/index.html )(環境省提供)
日本の国立公園は34か所(日本の国立公園: https://www.env.go.jp/park/parks/index.html )(環境省提供)


ページトップ