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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
自然保護、観光、街づくりなどを包含したものがエコツーリズム
カルチュラル・ランドスケープに代表されるように、人と自然とがかかわりながら生み出す二次的な自然環境の価値が認められるようになった
しっかりした計画がつくられなければ、資源の維持管理の実現は難しい
地域の資源は多様であり、大事なことは資源をどう個性的に磨き売り出せるかにかかっている
【1】エコツーリズム推進に関する検討会
 エコツーリズム推進法が、平成20年4月に「自然環境の保全」「観光振興」「地域振興」「環境教育」の推進を掲げて施行されてから6年が経過した昨年(平成26年)、環境省によって組織された協議会で、下村彰男・東京大学教授が座長を務める。
【2】エコツーリズム大賞
 環境省と日本エコツーリズム協会による表彰制度で、日本各地でエコツーリズムに取組む事業者や団体を対象にしている。平成17年度に開始され、毎年度、大賞が1団体に、優秀賞などが複数の団体に与えられる。平成27年度には、「団体部門」に加え「個人部門」の新設が決定されている。

No.046

Issued: 2015.10.20

第46回 東京大学大学院農学生命科学研究科の下村彰男教授に聞く、日本のエコツーリズムと地域の文化・歴史を反映する風景の意義[1]

実施日時:平成27年9月29日(火)10:00〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

自然保護、観光、街づくりなどを包含したものがエコツーリズム

下村 彰男(しもむら あきお)さん
下村 彰男(しもむら あきお)さん
東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門分野は、造園学、観光・レクリエーション計画。
昭和30年兵庫県生まれ。昭和53年3月東京大学農学部林学科卒業、昭和55年3月東京大学大学院農学系研究科林学専門課程修士課程修了、昭和57年3月博士課程中途退学。
昭和57年4月株式会社ラック計画研究所入社、昭和61年3月同社退社。
昭和61年4月東京大学農学部・助手(林学科 森林風致計画学講座)。平成5年2月博士(農学)(東京大学)取得。平成5年12月東京大学農学部・助教授、平成8年4月東京大学大学院農学生命科学研究科・助教授、平成13年1月より現職。

大塚理事長(以下、大塚)―  エコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。下村さんは、地域社会や文化と関連づけた環境の景観分析・地域計画・空間設計など幅広い研究を展開され、環境省の「エコツーリズム推進に関する検討会」【1】では発足時より座長を務めておられます。本日は、秋の行楽シーズンに合わせ「日本のエコツーリズム」をいろいろな角度から掘り下げていただこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、下村さんのエコツーリズムとのかかわりとか、とくに関心をおもちになっている点の紹介から始めていただけますか。

下村さん― エコツーリズムへの関心は、ごく自然にもつようになったということでしょうか。私の研究室は「森林風致計画学」という名で、諸先輩は東京の日比谷公園や明治神宮などの設計・造園にもかかわりましたし、国立公園の制度つくりなども行ってきました。私自身も「風景計画」を研究の柱にしており、風景管理という視点からの自然保護、観光、街づくりなどを包含したものがエコツーリズムと考えているからです。
エコツーリズムの対象が森林でも、公園でも、街でも、利用することと保護することとは表裏一体の関係で、森林、公園、あるいは街という資源を持続的に管理することが重要と考えています。エコツーリズムの専門家の中には、ツーリズムの側面を重視される方や、生物多様性など自然環境の保全の側面を重視される方もおられますが、私は資源の管理にとくに関心をもっているといえます。

大塚― エコツーリズムの対象としての資源の管理について、もう少し砕いてご紹介ください。

下村さん― 資源を理解する上で、まず、資源と地域の関係につてお話ししたいと思います。たとえば、郷土料理もお祭りも、あるいは私が専門にしている風景も資源ですが、それぞれの地域と結びつかないと効果的な資源になりません。そこでしか食べられない料理とか、そこでしか味わえない風景が大事なのです。そういう意味で、地域の個性を象徴する資源とは何かが私の大きな関心事です。もう1つの大きな関心事は、そのような資源を維持していく仕組みで、私が管理と言ったことにあたります。資源の持続的な管理に必要な費用や担い手をどのように生み出すかが重要なのです。

カルチュラル・ランドスケープに代表されるように、人と自然とがかかわりながら生み出す二次的な自然環境の価値が認められるようになった

大塚― 幅広い視点から考えることが必要なのですね。
日本のエコツーリズムの話題に入る前に、伺っておきたいことがあります。国際的なエコツーリズムの概念には、日本の場合よりも、地域住民の権利とか幸福が強調されているように感じますがいかがですか。

下村さん― ご指摘のように、国際的には地域住民の福祉への貢献とか貧困の撲滅が取り上げられることが多いですね。エコツーリズムが俎上に乗り始めた1980年代には、途上国の自然環境が、先進国による収奪もあり、地域住民による収奪型の利用もあってどんどん失われていました。そのような状況で、自然環境を活かしながら人びとの生活を改善する方策として、エコツーリズムが注目されたのです。日本でも1990年代から注目されるようになり、行政的な動きとしては平成15年に、当時の小池百合子環境大臣がエコツーリズム推進会議を立ち上げたことで始まったのですが、資源の状況や経済的な状況からみても、1980年代の途上国とはまったく異なっていました。

大塚― 日本に限らず先進国内でのエコツーリズムは注目のされ方が異なっていたのですね。

下村さん― そう思います。ただ、環境に対する見方は時代とともに変わるじゃないですか。遡ると、19世紀後半にアメリカで最初に国立公園がつくられ、純然たる自然と人為とが対峙するような構図が出てきました。その後、20世紀後半になって、例えば1992年にカルチュラル・ランドスケープ(文化的景観)が世界遺産として認められるような転換が顕在化してきました。100年あるいは150年が経過し、カルチュラル・ランドスケープという、人と自然とがかかわりながら生み出す二次的な自然環境の価値、あるいは環境に及ぼす文化性とか人の営みに対する価値が認められるようになったのです。こうした大きな潮流は共通していると考えています。

しっかりした計画がつくられなければ、資源の維持管理の実現は難しい

世界の自然エネルギー発電と燃料への新規投資額 先進国/発展途上国(2004年〜2013年)
認定日が示されているのは、エコツーリズム推進法に基づき全体構想が認定された地域で、協議会の正式名称は市町村名などにつづいて「エコツーリズム推進協議会」がつく。 ※拡大図はこちら

大塚― お話しいただいたように、日本ではエコツーリズム推進の大きな動きが平成15年ころから始まり、7年前にエコツーリズム推進法が施行されました。ところが、現在までにこの法律の下で全体構想が認定された地域が、全国で6つというのは少なく感じます。

下村さん― この法律は施行後5年の時点で見直すことになっており、私がかかわっている環境省の「エコツーリズム推進に関する検討会」でもその問題が取り上げられました。現在は、エコツーリズム推進法に基づく全体構想つくりの支援がエコツーリズム地域活性化支援事業として予算化もされましたので、今後は全体構想の認定も加速していくと思います。ただ、これまでの6つという地域の数が少ないかどうかは別にして、この法律が目指している推進方策への理解がやや薄かったことも要因であると考えています。

大塚― 理解が薄かったのは自治体でしょうか、あるいは地域住民でしょうか。

下村さん― 自治体、地域住民、あるいは国のすべてに当てはまるのかもしれません。
具体的には、地域の資源を持続的に維持し活用する仕組みをいかに構築するかにかかわっています。話は少し変わりますが、私たちの研究室で、大分県の由布院温泉を訪れる旅行者を対象に、由布院を特徴づけている温泉や農的な風景などの資源が傷つき、あるいは失われつつあるため、それらの維持あるいは回復に経済的なことを含む協力への意識を調査しました。富士登山に際して1000円の協力金が話題になりましたが、そうした協力意識を問うのと同じような調査です。
私たちの調査によると、8割くらいの方は、農的な風景を美しく維持したり、電柱を埋めたりすることなどに賛成しており、そのために協力金を使うことにも賛成しています。ところが、最も理解されなかったのが、風景の維持・回復を進めるための計画立案に協力金を使うことでした。しっかりした計画がつくられなければ、資源の維持管理を自律的に進展させることは難しいにもかかわらずです。

地域の資源は多様であり、大事なことは資源をどう個性的に磨き売り出せるかにかかっている

大塚― お話を伺いほっといたしました。見方を変え、全体構想が認められている6地域について、どのような点で優れているかなど、具体的な点をご紹介ください。

下村さん― この質問にお答えするのは難しいですよ。というのも、それぞれの地域が特徴を持っているからです。最初に認められた埼玉県の飯能市は、都市近郊の里山型といえる地域です。その次に選ばれた沖縄県の渡嘉敷村と座間味村(慶良間諸島が行政的にこの2村に分かれる)は、きわめてはっきりした自然の資源性が特徴です。クジラが泳ぎ、サンゴ礁が発達した海があり、国立公園タイプです。三重県の鳥羽市も、国立公園そして海という点では共通していますが、里海型ですね。海女さんや海産物を活かした料理も重要な資源です。また、京都府の南丹市美山は一見したところ飯能に似ていますが、典型的な農山村型で、茅葺(かやぶき)の集落やブナの原生林が残る芦生(あしう)の森が特徴です。このように、資源性に非常に大きな幅があるのです。

大塚― 最初に指摘された、資源にみられる地域の個性ですね。

下村さん― もう1つ注目されるのは、エコツーリズムを主導している主体にも大きな違いがあることです。飯能では市役所などが中心になって主導していますが、鳥羽では、役所も頑張ってはいるものの、民間の組織が活発に活動し役所も巻き込みながら様々な活動を展開しています。
エコツーリズムにみられる多様性は、私もかかわっている、環境省と日本エコツーリズム協会によるエコツーリズム大賞【2】の受賞団体をみても分かります。この賞は組織や団体を対象に10年前にはじまっており、昨年までに10団体に大賞を授与いたしました(本年は募集中)。第1回から第3回までに受賞した、ピッキオ(長野県軽井沢で森を保護し野生動植物との共存を目指す)、ホールアース(富士山麓や沖縄県を主な対象に実体験・自然観の回復を目指す)、霧多布トラスト(北海道の霧多布湿原におけるトラスト活動)はすべて民間で、第4回は埼玉県の飯能市が選ばれました。
このように、地域の資源は多様であり、大事なことは資源の個性を地域でいかに共有し、磨き、売り出せるかにかかっていますし、バランスのとれたエコツーリズムの全体構想つくりという点では、行政のみならず民間との協働がより大きな力を発揮しているといえそうです。

エコツーリズムの根幹をなすエコツアーにも多様な形態や性格がある


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