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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
根本的に治すということは、自然との調和を達成させること
日本より花粉症の有病率が高い国もあるが、日本人は諸外国の人びとに比べ症状が重い
花粉症は、完治させることも可能ですし、予防しながら長期的に症状を抑える治療や、短期的に症状を取り除く治療などもある
環境由来の病気に対しては、我々の身体の強さが必要
【4】「はなこさん」
 環境省の花粉観測システムの愛称。沖縄県を除く、全国の花粉飛散状況を地図、表、グラフでみることができる。花粉飛散データは、観測地点から自動送信されており、毎時35分頃にホームページで更新されている。
http://kafun.taiki.go.jp/

No.027

Issued: 2014.02.13

第27回 日本医科大学 大久保公裕教授に聞く、花粉症の原因・影響・対応策[2]

実施日時:平成26年2月18日(火)16:00〜
聞き手:一般財団法人環境情報センター 理事長 大塚柳太郎

根本的に治すということは、自然との調和を達成させること

大塚― よく分かります。ところで、今ご説明いただいたこと以外にも、たとえばストレスなども花粉症に影響するのでしょうか。

大久保さん― 睡眠不足をはじめとするストレスは、身体の免疫状態を変化させます。免疫力を低下させるストレスを増やさないのはもちろんですが、私たちは花粉症などのアレルギー症状を引き起こす多くの原因を、1つずつつぶすべきなのです。つぶせないときは、調和していくことが必要になるのです。

大塚― 今のお話しと関係するのだろうと思いますが、花粉症あるいはアレルギー症の根治療法についてご説明いただけますでしょうか。

大久保さん― いろいろな要因がありますが、根本的に治すということは、自然との調和を達成させることです。花粉症の場合、人は鼻の中に10粒の花粉が入ると、クシャミが出て吹き飛ばそうとする、鼻水で洗い流そうとする、あるいは鼻づまりを起こし身体の中に入れないように防御するのです。原因はわずか10粒くらいの花粉なのです。そのくらいの花粉に耐えられる身体にすればいい、言い換えると、スギ花粉が無害なものだと身体に教えたいのです。そのために、スギ花粉のエキスを注射で入れる治療法があります。最も新しい治療法は、舌下からスギ花粉のエキスを入れて、むやみにクシャミで吹き飛ばす必要も鼻水で洗い流す必要もない、と身体に教えるのです。

症状の起こり方
症状の起こり方(出典『アレルギー性鼻炎ガイド』馬場廣太郎 監修、厚生労働省21世紀型医療開拓推進研究事業〔EBM研究〕アレルギー性鼻炎ガイドライン研究班 作成、ライフ・サイエンス社 刊行)
※拡大図はこちら

舌下免疫療法の効果発現機序
舌下免疫療法の効果発現機序
※拡大図はこちら


舌下免疫療法治療期間における症状評価
舌下免疫療法治療期間における症状評価
※拡大図はこちら

大塚― 患者さんは小さい子どもでしょうか、それとも大人でもいいのですか。

大久保さん― 小さくても大きくなってからでもかまいません。それが免疫療法です。アレルゲンに慣れると、アレルギーで排除する運動をしなくなるということなのです。

大塚― 症状の重篤度などにもよるのでしょうが、今ご紹介いただいた治療法は半年とか1年という期間で効果が出るのですか。

大久保さん― 年単位で取り組んでもらえるといいでしょう。2年間で治る人は増えていきますし、3年間になればベストだと思います。

大塚― 分かりました。ただ、多くの患者さんには大変そうですね。

大久保さん― 多くの患者さんは薬物療法を受けています。鼻づまりがある場合は、抗ロイコトリエンという薬、クシャミ・鼻水がひどいと抗ヒスタミン薬、多くの重い症状がある場合には鼻に噴霧するステロイド薬、あるいはこれらの薬物を組み合わせます。目に症状がある場合には、薬物により眼圧が高くなってしまうので、眼科の医師に診断していただく方がいいと思います。

日本より花粉症の有病率が高い国もあるが、日本人は諸外国の人びとに比べ症状が重い

大塚― そろそろ花粉シーズンに入ります。今、日本の患者数はどのくらいなのでしょうか。そして、今後も増えるのでしょうか。

大久保さん― 現在、2000万〜2500万人くらいだと思います。2050年までは花粉は増えるといわれています。先ほど、70パーセントのスギが成木という話をしましたが、2050年までに成木が100パーセントになり、花粉の飛散量が増加すると考えられるからです。患者さんの数も増える可能性が高そうです。

大塚― 先ほど伺った舌下免疫療法などが、たとえば小学校などで取り入れられ、患者数が減る可能性はないのでしょうか。

大久保さん― そうなることを期待したいですね。花粉症の人口が増えると医療費がかさみます。さらに心配なのは、もともと少子化で少なくなっている子どもたちが、青壮年になった時に花粉症のために生産性を下げるのか、青壮年になった時に症状がない、あるいは症状があったとしても薬を少し使えばすむようにできるかです。免疫療法を広めていきたいと考えています。

大塚― 大きな視点と現実的な視点の両方をお伺いしましたが、将来を考える上でも、日本人は花粉症がとくに多いということはないのでしょうか。

大久保さん― 日本より花粉症の有病率が高い国もありますが、日本人は諸外国の人びとに比べ症状が重いようです。人口密集度が高いことが1つの原因だろうと思います。たとえば、アメリカやヨーロッパでブタクサがひどいといっても、人口密集度が低く、そんなに大量の花粉に暴露されないのではないですか。樹木についても、日本のスギの人工林は森林の総面積の19パーセントも占めています。アメリカなどでは、人工林は19パーセントもないですよ。日本は防災の観点からも森林は必要ですが、総合的な森林政策がこれからは必要ではないでしょうか。

花粉症は、完治させることも可能ですし、予防しながら長期的に症状を抑える治療や、短期的に症状を取り除く治療などもある

大塚― 話題を少し変えさせていただきます。環境省が、花粉観測システムの「はなこさん」【4】を運用していますが、花粉症の予防に役立っているのでしょうか。

大久保さん― 役立っていると思います。これから暖かくなり花粉の飛散がはじまります。「はなこさん」の情報を今まで以上に活用していただきたいと考えています。たとえば、「今日は雨が降った翌日」で、「風が強くて花粉が多い」日には、無駄な外出を控えるとか、外出するにしても花粉の飛散が少ない時間帯にされるといいと思います。

大塚― 学校で屋外での体育を控えるようなことも、そろそろ必要なのでしょうか。

大久保さん― そうですね。だんだんそのような対策が必要になってきています。私たちの立場から決定はできませんが、お子さんの生活の質が下がるのであれば、無理に屋外で体育をしなくてもいいと思いますね。

大塚― 我が国のこれからの花粉症の予測、そして治療を含めた対応策の改善の見通しについて、改めて大久保さんのご意見をお願いいたします。

大久保さん― そうですね。2050年まで花粉が増えるという予想はそのとおりと思いますが、毎年の予報の精度を上げ、それぞれの地域ごとに正確な情報を与えることが1つです。もう1つは、患者さんが花粉症は治らないと思いこむのではなく、花粉症の知識を十分にもっていただきたいことです。完治させることも可能ですし、予防しながら長期的に症状を抑える治療や、短期的に症状を取り除く治療などもあることを知っていただきたいのです。

環境由来の病気に対しては、我々の身体の強さが必要

大塚― 最後になりますが、EICネットは多くの方にご覧いただいていますので、大久保さんから、EICネット利用者の皆さまにメッセージをいただきたいと思います。

日本医科大学教授の大久保公裕さん(左)と、一般財団法人環境情報センター理事長の大塚柳太郎(右)。
日本医科大学教授の大久保公裕さん(左)と、一般財団法人環境情報センター理事長の大塚柳太郎(右)。

大久保さん― 私たちがかかる病気には、ガンをはじめとする疾患、突発的に起きる外傷などのほかに、環境由来の細菌、ウイルス、あるいはアレルゲンが身体内に入り引き起こされるものもあります。環境由来の病気に対しては、我々の身体の強さが必要です。具体的には、免疫力を高めることが大事なのです。たとえば、インフルエンザの予防接種をするのも免疫力を高めているのです。私たちが環境といかに仲良く共生していけるかが、これからの健康の保持・増進の鍵を握っているのです。そのために必要な情報を、EICネットなどをとおして、国民の皆様に広く共有していただきたいと願っています。

大塚― 花粉症についてさまざまな角度からお話しいただくとともに、アレルギー症をめぐり環境と健康との関係にも本質的な考え方をお示しいただきました。本日は、お忙しいところをありがとうございました。


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記事に含まれる環境用語|
花粉症
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ブタクサ
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SPM
ディーゼル排気微粒子
ディーゼル排気粒子
PM2.5
花粉観測システム(はなこさん)
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