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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
命にかかわるような重症の場合だけでなく、暑さによって生じるさまざまな障害に対処することとなり、熱中症と呼ばれるようになった
暑くなる前の時期に、身体にきつく感じるくらいの運動を繰り返し行うのが効果的
熱中症の患者数・死亡数のデータには3種類がある
【1】人口動態統計
 1年間に発生した出生・死亡・死産・婚姻・離婚の集計。厚生労働省が、人口動態調査票に基づき毎年集計し公表している。
【2】政令指定都市
 地方自治法に定められる日本の都市制度の1つで、政令で指定される人口(法定人口)50万以上の都市。現在は全国で20である。ただし、国立環境研究所でデータを入手・解析し公表しているのは、2009年以降に政令指定都市になった岡山市、相模原市、熊本市は含まれておらず、政令都市以外では沖縄県、東京都23区、東京都の都下の市町村部の3地域のデータが含まれている。
【3】国際疾病分類第10版(ICD10)
 死因や疾病の国際的な統計基準として、WHO(世界保健機関)によって公表されている分類。国際疾病分類はほぼ10年ごとに修正されており、第10版は1990年に採択された。その中で、T67(熱及び光線の作用)というコードに含まれる死因は多くのものを含むが、死亡の大半は熱射病と日射病によるものである。

No.066

Issued: 2017.06.20

第66回 国立環境研究所客員研究員の小野雅司さんに聞く、熱中症の原因、予防法や対処法[1]

実施日時:平成29年5月24日(水)14:00〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

命にかかわるような重症の場合だけでなく、暑さによって生じるさまざまな障害に対処することとなり、熱中症と呼ばれるようになった

小野雅司(おのまさじ)さん
小野雅司(おのまさじ)さん
 1978年3月 東京大学大学院医学系研究科保健学専攻博士課程修了(保健学博士)。
 1978年4月 国立公害研究所(現・国立研究開発法人国立環境研究所)入所。研究員・主任研究員・室長。
 2010年4月〜 子供の健康と環境に関する全国調査「エコチル調査」にフェローとして従事。
 2016年4月〜 環境研究総合推進費プログラムオフィサー。
 専門は、疫学(特に、環境疫学)。
 主たる研究として、大気汚染による健康影響、地球温暖化による健康影響(熱中症)、紫外線暴露による健康影響。
 委員等では、環境保健サーベイランス・局地的大気汚染に関する委員会委員、夏季イベントにおける熱中症対策等検討会(委員長)、オゾン層保護に関する検討会(環境影響分科会・座長)などを歴任。

大塚理事長(以下、大塚)― 今回は、国立環境研究所で長年にわたり、熱中症などの環境の健康影響に取り組んでこられた小野雅司さんをお招きいたしました。今年は日本列島の多くの地域が4月から真夏日に見舞われ、5月半ばには1週間で約1000人もの人が熱中症の疑いで救急搬送されるなど、熱中症のリスクが今まで以上に高まっているように感じます。本日は、熱中症に焦点をあて、その原因、予防法や対処法など、幅広い角度からお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
最初に、初歩的なことをお伺いします。熱中症という言葉ですが、今のように日常会話でも頻繁に使われるのは比較的最近のような気がします。一方で、かつては日射病や熱射病という言葉を耳にする機会も多かったと思いますが、いかがでしょうか。

小野さん― ご指摘のように、以前大きな問題だったのは、工場などの高温の作業環境で起きる熱射病、あるいは強烈な直射日光を直接浴びることで引き起こされる日射病でした。熱射病と日射病という言葉が使われることは減りましたが、まったく消えたわけではなく、たとえば人口動態統計【1】の疾病分類では現在も使われています。
熱射病も日射病も、重症のケースがほとんどです。それに対して、20年ほど前から、命にかかわるような重症の場合だけでなく、暑さによって生じるさまざまな障害に対処することとなり、熱中症と呼ばれるようになったのです。

3つの用語の特徴
定義・特徴原因
熱中症身体(深部体温)の温度上昇に伴う熱バランスの崩れ、体内の水分・塩分濃度のバランスの崩れによる身体の不調適応しにくい自然あるいは人工的な温熱環境条件、および過度なストレスなどに起因する身体の状態
熱射病重度の熱中症を意味する診断名同上(特に温熱環境条件)
日射病直射日光を原因とする熱中症の診断名高レベルの直射日光への暴露

大塚― 熱中症が広い意味合いをもつことは分かりましたが、最近になって熱中症にかかる人が増えたのは確かなのでしょうか。その理由も含めて、小野さんはどのように捉えておられますか。

小野さん―  熱中症にかかった人数の長期にわたるデータはないのですが、増えているのは間違いないでしょう。その理由として、我々の行動パターンを含む広い意味でのライフスタイルの変化があると思います。熱中症の増加に、地球温暖化やヒートアイランド現象の進行による影響も当然考えられますが、関連する内容が多岐にわたりすぎますので、今日はこの点には触れずに話を進めたいと思います。
今頃の季節になると、気象予報士がテレビなどで、「身体がまだ暑さに慣れていないので注意が必要です」とよく言いますが、「暑さに慣れる」とは、春先から本格的な夏になる前に、戸外に出て暑さに徐々に慣れることを意味します。以前に比べ、戸外に出ることを極端に避ける方など、暑さに慣れにくい行動をとる方が増えたように感じています。

大塚― 日本にははっきりした四季があり、そのおかげで素晴らしい自然を楽しむこともできるわけですが、熱中症に関しては問題があるのですね。

小野さん― そのように思います。春先に少し暑くなりますよね。今年は暑くなるのが早いようで、もうその時期を過ぎたかのかもしれませんが、この時期に、戸外で積極的に活動するなど暑さに慣れておくことが大切です。この効果については、生理学などの研究で確認されています。

暑くなる前の時期に、身体にきつく感じるくらいの運動を繰り返し行うのが効果的

大塚― 暑さに慣れることについて、もう少しお話しただけますか。

小野さん― 広く認められている効果的な方法は、暑くなる前の時期に、身体にきつく感じるくらいの運動を繰り返し行うことです。ほとんど負荷を感じないような軽いものだと効果があまりないようです。継続する期間ですが、若い方ならば1週間も続ければ相当な効果があるようです。一方、高齢者では1ヶ月くらい必要といわれています。

大塚― 暑さに慣れるということは、体温調節に関係しているのですか。

小野さん― そうです。暑さに対する体温調節として最も重要なのは発汗です。冬から春先には汗をかくような機会はほとんどありませんから、汗腺が眠っているような状態なのです。そのような時に運動をすることで、汗腺の機能を呼び起こすのです。

大塚― 一方で、最初に指摘されたライフスタイルの変化には多くのことがあると思いますが、生理学的な機能とどのように関係しているのでしょうか。

小野さん― 私たちのライフスタイルには、さまざまなことが関係しています。たとえば、私たちが多くの時間を過ごす家屋の構造もずいぶん変わってきました。かつては自然通風というのでしょうか、外気温に応じて寒くなったり暑くなったりするのが普通だったと思います。それに対して、現在の家屋では部屋の温度が制御されていることが多く、自分で意識していないと、暑さや寒さを体感しにくくなっているのです。

大塚― 快適な暮らしの裏返しという側面があるのですね。

小野さん― そう言えると思います。極端に言えば、家屋内の温熱環境を100パーセント制御してしまうと、人が外部の温熱環境に対応できなくなりますよ。

大塚― なかなか難しいですね。

熱中症の患者数・死亡数のデータには3種類がある

大塚― 少し話題を変え、実際に熱中症に罹った患者さんの数や、亡くなられた方の数について伺いたいと思います。

小野さん― 熱中症の患者数・死亡数のデータには3種類があります。
その1つが、新聞やテレビ・ラジオなどのニュースでもよく流される救急搬送者の数です。この数値は、私たちが国立環境研究所の業務として20年ほど前から公表してきたもので、日本の大都市である政令指定都市【2】からデータをいただき分析した結果です。その後、10年ほど前から、消防庁が全国規模でデータベースを作り提供するようになっています。
2つ目が、最初に話題になった熱射病と日射病による死亡のデータで、厚生労働省から公開される人口動態統計の死亡統計における、国際疾病分類第10版【3】のT67(熱及び光線の作用)というコードにほぼ相当します。死因別死亡統計ですから、リアルタイムとはいかず、1〜2年後に公表されることになります。
3つ目が、ある意味では熱中症の状況を知る上で一番良いともいえる、病院がもっている患者さんの診療情報です。しかし残念ながら、これは個人情報を多く含むので、データベースとして外部の方が利用するのは難しいでしょう。ただ最近、日本救急医学会熱中症委員会が国保レセプトデータを使った研究成果を公表しています。

大塚― 熱中症の罹患数という意味では、救急搬送数が適しているように思います。

熱射病・日射病による死亡件数
熱射病・日射病による死亡件数 ※拡大図はこちら

小野さん― その通りです。搬送数について説明しようと思いますが、その前に、2つ目にあげた熱射病と日射病が大半を占める熱中症による死亡数を紹介しておきましょう。先ほど申し上げたように、国際疾病分類第10版のT67(熱及び光線の作用)というコードは、大半が熱射病と日射病による熱中症の死亡に相当しています。この死亡数は、日本全国の1995年以降の変遷から分かるように、年による増減があるものの全体に増加傾向にあります。多い年には、死亡が1000を超えています。

大塚― 熱射病と日射病を含む熱中症による死亡は増加しているのですね。熱中症の救急搬送数についてもお願いします。

小野さん― 全国規模での熱中症についてはじめて公表されたデータは、20年ほど前に私たちが国立環境研究所で行った救急搬送数でした。救急搬送数を具体的に示すことで、熱中症への関心を高めたいと考えたのです。この時はまったくの手探りで、20の政令指定都市の救急搬送数を提供いただき分析しました。その結果分かったのは、年による変動はあるものの、2009年と2010年の間で搬送数が急増し、それ以降はそれ以前と大きく異なったことです。
2010年は、多くの方の記憶にあるかと思いますが、日本が猛暑に見舞われた年です。その影響があったのは間違いありませんが、それに加え、熱中症がマスコミ等で大々的に取り上げられたため、それまでは我慢していた方々も救急車を利用するようになったと考えています。

都市患者数の推移(青折れ線の「東京23区」のみ、右側のスケール)
都市患者数の推移(青折れ線の「東京23区」のみ、右側のスケール) ※拡大図はこちら

熱中症による全国の救急搬送数の推移(7月〜9月のデータ)(出典:消防庁)
熱中症による全国の救急搬送数の推移(7月〜9月のデータ)(出典:消防庁) ※拡大図はこちら


大塚― 熱中症への関心を高めた成果ですね。ところで、消防庁による2007年以降の全国での救急搬送数も含め、最近の状況についてご説明ください。

小野さん― 先ほど2010年が猛暑だったと申しましたが、2007年以降では2007年と2013年、さらには2015年と2016年も猛暑のカテゴリーに入ります。 全国レベルの搬送数を概観すると、2007年には2万数千人くらいだったのが2010年に5万人台に倍増し、それ以降も多い年には5万人に達しています。日本国民全体として、延べ人数で2500人に1人が熱中症で救急搬送されていることになります。


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