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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
身の周りに溢れている光を利用してエネルギーを作り出す
inQsの発電素子は、可視光だけでなく、紫外光や赤外光を含む広範囲の波長を拾って電力に変えられることが大きな特徴
【1】超電導
 電気抵抗がゼロであり、外的磁場の侵入を排除する完全半磁場状態を示すという、2つの現象が観測されること。
【2】二酸化ケイ素
 化学式はSiO2で、シリカあるいは無水ケイ酸とも呼ばれる。常温では無色で、圧力および温度条件により、多様な結晶相持つことが特徴。代表的なものが石英(水晶)。
【3】人工水晶
 天然の水晶を原料とし、不純物の少ない高純度な水晶に再結晶化させたものを指す。
【4】ナノ化
 ナノサイズに小さくすること。ナノとはナノメートル(nm)の略称で、1メートルの10億分の1の長さを表す。

No.058

Issued: 2016.10.21

第58回 inQs株式会社代表取締役社長・伊藤朋子さんに聞く、光発電分野の技術開発と環境への貢献[1]

実施日時:平成28年10月4日(火)13:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

身の周りに溢れている光を利用してエネルギーを作り出す

伊藤 朋子さん(いとう ともこ)さん
伊藤 朋子さん(いとう ともこ)さん
inQs株式会社 代表取締役社長。
慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業。
商社退職後、2005年シーズ技術の事業化に注力する企業を設立。その際、本起業となった光発電素子の原型技術の開発に成功し、2011年IFTL-Solar株式会社(現inQs株式会社)を発起人として設立。その後、取締役を経て、現在の代表取締役に就任。
座右の銘は、「私の行いは大河の一滴に過ぎない。でも何もしなければその一滴も生まれない」

大塚理事長(以下、大塚)― エコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。
伊藤さんは、2011年に光発電素子の開発・販売を主な目的としてinQs株式会社を立ち上げられました。その後も一貫して、光発電素子の技術開発を進め、クリーンエネルギー開発のレベルアップに貢献されておられます。
本日は、伊藤さんが取組まれている光発電分野の技術開発の状況や、この分野がもたらす環境への貢献などについてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、伊藤さんが光発電分野の技術開発に取組まれるようになった経緯の紹介から始めていただけますか。

伊藤さん― 私がinQs株式会社を立ち上げた際のコンセプトは、見えない光を含め、身の周りに溢れている光を利用してエネルギーを作り出すことでした。その発端のところをお話させていただきます。
私は大学生の時に超電導【1】の研究をしており、送電線を通る際の電力のロス、送電ロスのことを知りました。電力が送電線を通る際に63%も失われることに対し、非常にもったいないと感じたのです。それ以来、電力を身近に使えるように、電力を身近に産み出せる仕組みを作れないかとずっと考えておりました。
私がinQsを立ち上げる前は、技術開発の中でも、技術をシーズからニーズにつなげることを目指している国際先端技術総合研究所株式会社という、私にとっての親会社に勤めておりました。この時に、inQsの光発電素子の起因になる特別な材料を見つけたのです。

大塚― 今お話になられた特別な材料を、伊藤さんご自身が見つけられたのですね。

伊藤さん― はい。会社の研究チームのメンバーとして、ある廃材を再利用できないかと、いろいろと検討しておりましたところ、その中から光で起電する物質を発見することができたのです。

大塚― 大発見ですね。

伊藤さん― 本当に、これは大発見だと思っております。

大規模発電所の一次エネルギー利用効率(出典:東京ガスwebページ:http://home.tokyo-gas.co.jp/living/solar/
大規模発電所の一次エネルギー利用効率
(出典:東京ガスwebページ:http://home.tokyo-gas.co.jp/living/solar/

inQsの発電素子は、可視光だけでなく、紫外光や赤外光を含む広範囲の波長を拾って電力に変えられることが大きな特徴

伊藤さん― この技術開発の研究を始めたのは2005年でした。それから現在に至るまで、非常に長い間苦労いたしました。光発電素子の素子化にあたっても、何十万ものセルを組み立てる試行錯誤を繰り返し、昨年やっとサンプル商品化にこぎつけたというところです。
整理してご説明しますと、私は2005年には親会社に所属しており、2011年に子会社として独立したinQs社で研究を続け、ようやく2016年にサンプル商品を世に出すところまできたことになります。

大塚― 新しい素材が技術開発の鍵を握っていることは理解できるのですが、その機能について、二酸化ケイ素【2】および人工水晶【3】とも関連づけ、分かり易く教えていただけますか。

伊藤さん― 素材として使っているのは人工水晶ですが、基本的には二酸化ケイ素という物質を使っていることになります。ポイントはナノ化【4】した素材を使ったところにあります。素材に特殊な加工を施すことにより、光で起電する物質に変更させるのに成功し、この物質によって、光で発電する「物」を作れるようになったことが発端なのです。
この材料の特徴を、太陽光電池として一般に知られているものと対比してご説明します。太陽光電池は、いわゆる可視光部分を吸収し発電します。私どもの発電素子は、基本的に可視光にあたる部分も吸収しますが、それ以外にも、紫外光や赤外光という広範囲の波長を拾って電力に変えられることが大きな特徴なのです。

大塚― スペクトルの端から端までということですか。

伊藤さん― そうです。

大塚― このような特性が、二酸化ケイ素に備わっているということなのですか。

伊藤さん― はい、そうです。その特性を引き出すために加工する、あるいは、加工によってその特性が産み出されたということです。
実はこの点でも苦労がございました。これほどまで広い光の波長域を調べる測定器がないのです。いろいろな装置を動員し組み合わせた結果、低波長域から高波長域まで測定することができました。これだけ広い範囲の光を測定することができたからこそ、あらためて二酸化ケイ素の特性に気づくことができたのです。

大塚― 大変な努力をされたわけですが、もう少しお話いただけますか。

伊藤さん― 人工水晶を使った時の話をさせていただくと、人工水晶はダイヤモンドに次いで硬い物質です。ある程度結晶化された人工水晶を、私どものように、「ナノ化」するまで砕いたのははじめてのチャレンジだったのです。どなたもやったことがなく、この「ナノ化」が困難をきわめました。

大塚― ナノのレベルまで砕くということがイメージしにくいのですが、ともかく、ある力で砕くということですね。

inQsの開発した「Solar-Quartz」。二酸化ケイ素をナノレベルに加工したことで発電する特性を引き出した
inQsの開発した「Solar-Quartz」。二酸化ケイ素をナノレベルに加工したことで発電する特性を引き出した

伊藤さん― そうですね。そのための装置自体もありませんでしたし、そもそも、人工水晶を砕くことを思いつかれることもなかったようです。人工水晶のメーカーさんにご相談したところ、「私どものメーカーの歴史の中で聞いたことはございません」と言われるなど、モノづくりに苦労したことをよく覚えています。

大塚― 伊藤さんのインスピレーションが素晴らしかったということですね。

伊藤さん― 最初にお話したように、もともと廃材の再利用を目指しており、廃材を利用するときに「ナノ化」は1つのポイントでした。この時に見つけた素材の1つに、人工水晶系の二酸化ケイ素に非常に似たものがございました。それが、現在の人工水晶にまでたどり着けた出発点だったことになります。

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