EICネット
前のページへ戻る

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
温泉の枯渇には歯止めがかかったが、集中管理などによる有効利用の促進が大切
温泉施設では、泉質などを図入りでわかりやすく掲示する工夫をしてもらいたい
【1】ナウハイム決議(協議)
 1911年に、ドイツのバート・ナウハイム温泉で採択された鉱泉の定義で、16種類以上の物質を含有することと、湧水温度が20℃以上とされた。
【2】メタケイ酸
 H2SiO3。ケイ素(Si)、酸素、水素の化合物であるケイ酸の1つで、温泉法の定義を満たす含有量は泉水1kgあたり50mg以上。
【3】療養泉
 温泉法で定義される鉱泉のうち、鉱泉分析法指針で特に治療の目的に供しうると定義されるもので、泉源の温度が25℃以上か、特定された7種類の物質のうちの1つの含有量が基準を超えることが条件になっている。

No.048

Issued: 2015.12.18

第48回 公益財団法人中央温泉研究所の甘露寺泰雄専務理事に聞く、日本の温泉の魅力と可能性[1]

実施日時:平成27年11月27日(金)10:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

温泉の枯渇には歯止めがかかったが、集中管理などによる有効利用の促進が大切

甘露寺 泰雄(かんろじ やすお)さん
甘露寺 泰雄(かんろじ やすお)さん
公益財団法人中央温泉研究所 専務理事。専門は温泉水の分析と水質管理。同研究所部長を経て現職。
一般社団法人日本温泉協会学術部委員、日本温泉科学会 名誉会員、日本温泉気候物理医学会 名誉会員などを務める。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日はエコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。甘露寺さんは、温泉法に基づく温泉の法定分析をはじめ、温泉沈殿物の処理などに取り組んでいる温泉の化学分析の専門家です。また、環境省の「中央環境審議会温泉小委員会」の委員を努めておられます。
本日は、これからのシーズンにあわせ、日本の温泉の現状や魅力などについてお話を伺いたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
早速ですが、日本における温泉利用の現状や最近の傾向についてご紹介いただけますか。

甘露寺さん― 環境省の近年の温泉利用状況の報告書によると、源泉数、湧出量はここ数年頭打ちで、いくらか低下傾向にあります。自然湧出量は横ばい、新規の温泉掘削と動力源泉数は大幅に減少しています。宿泊人員も減少傾向で、収容定員も平成7年ころから減少しています。一方、温泉利用の公衆浴場数は増加傾向でしたが、ここ数年は横ばいに転じています。つまり、温泉利用を全体としてみると、右肩上がりで増加していた状況が頭打ちから減少傾向になっているのです。もっとも、資源の枯渇化には歯止めがかかったと思います。
温泉地では、昔ながらの「老舗」が廃業し、利用客の減少が心配されています。ここ数年の外国人利用者の増加で持ち直しも期待されていますが、このまま減少がつづくのは温泉にとって好ましいことではありません。

全国の源泉数の経年変化(環境省資料より作成)
全国の源泉数の経年変化(環境省資料より作成)
※拡大図はこちら

全国の湧出量の経年変化(環境省資料より作成)
全国の湧出量の経年変化(環境省資料より作成)
※拡大図はこちら

温泉利用宿泊施設の収容定員と宿泊利用者数の推移(環境省資料より作成)
温泉利用宿泊施設の収容定員と宿泊利用者数の推移(環境省資料より作成) ※拡大図はこちら


大塚― 温泉利用の内訳を含め、もう少しご説明ください。

甘露寺さん― 高齢化社会、都市化、それにスポーツやレクリエーションの変化などとともに、温泉利用も多様化の傾向をみせています。一方で、環境省が温泉の禁忌症、適応症、注意事項を見直したことによって、温泉がもつ病気の予防・治療と並び、症状の改善にもフォーカスがあてられる方向がみえてきました。
環境省の平成25年度都道府県温泉利用状況のデータをみると、源泉総数に占める未利用源泉は3割強しかありません。また、湧出量を自噴と動力湧出に分けると、動力湧出量が72.5%を占めています。動力源泉が多いということは、我が国の温泉が、水位を下げて採取していることを意味します。枯渇化には歯止めがかかりましたが、今後、動力湧出量があまり増加しないよう、換言すれば、集中管理などによる有効利用を促進させることが大切なのです。
温泉地の資源量と施設規模、宿泊定員とのバランスなど、適正利用を考える上での基本的な値を示すことにします。宿泊定員1名あたりの湧出量(L/分)の経年変化をみると、昭和38年から平成初年頃までは1.5〜1.8で、その後は1.8を超え、最近の20年間は1.9前後でほぼ一定になっています。環境省による国民保養温泉地の湧出量の目安が0.5L/分なので、この目安量をかなり上回っています。ただし、この値は収容定員が多い温泉地で小さく、収容定員が少ない温泉地では大きい値をとることが多いようです。

平成25年度都道府県別温泉利用状況(平成26年3月末現在)。データは、環境省「温泉利用状況」による。
平成25年度都道府県別温泉利用状況(平成26年3月末現在)。データは、環境省「温泉利用状況」による。

収容定員1名あたりの温泉湧出量(L/分)の経年変化。データは、環境省「温泉利用状況」による。
収容定員1名あたりの温泉湧出量(L/分)の経年変化。データは、環境省「温泉利用状況」による。※拡大図はこちら


温泉施設では、泉質などを図入りでわかりやすく掲示する工夫をしてもらいたい

環境省でもパンフレットを制作し、安心・安全な温泉利用の普及啓発を図っている。
環境省でもパンフレットを制作し、安心・安全な温泉利用の普及啓発を図っている。 ※拡大図はこちら

大塚― 温泉法では、「温泉」が「温度が25℃以上又は物質を有するもの」と定義されていますが、策定の背景や諸外国との違いなどがあれば教えてください。

甘露寺さん― 日本の温泉法は、1911年のドイツのナウハイム決議【1】の数値を基準にしています。この基準は、鉱泉(Mineralwasser)の最低値として決められたものですが、日本では、これに温度、水素イオン濃度、メタケイ酸【2】の含有量を新たに加えました。25℃という温度は戦前から使用されており、台湾を含む南方諸地域の平均気温が参考になったといわれています。なお、ドイツにおける温泉の定義では、「癒しの水」(Heilwasser)の定義が日本の療養泉【3】と同じように使われていますが、日本の温泉法は療養泉に触れていません。この点についてはさまざまな議論がありましたが、現状は変わらずにそのままにされています。

大塚― これらの数値を含めて、温泉地では施設内に温泉成分などの掲示がなされていますが、甘露寺さんはどのように感じておられますか。

甘露寺さん― 温泉施設には、禁忌症、注意事項、適応症、さらには加水・加熱・循環・消毒剤、浴用剤の添加などが掲示されています。
これらの掲示は、見えやすいところにされることが温泉法で規定されていますが、利用客がどの程度読んでいるかは不明です。私は、掲示などの内容を図入りで読みやすくし、施設の宣伝用パンフレットや客室などでも目につくようにできないかと考えています。もちろん、分析表のすべてを掲載する必要はなく、泉質などの簡単な解説だけでもわかりやすくする工夫が必要ではないでしょうか。

大塚― 全国の温泉施設に呼び掛けていただきたいと思いますが、どのような方法が効果的なのでしょう。

甘露寺さん― 現在、都道府県では講習会を開催して専門家に温泉の講義を依頼することも多くなっていますから、そのような機会に、ぜひ温泉の掲示と適正利用の内容を盛り込んでほしいと思います。
私も、このような講習会で講義することがあるのですが、温泉について誤解されていることも多いようです。ある旅館のご主人が、「うちの温泉は飲用の許可がとれました。飲料水やミネラルウォーターと同じようにどんどん飲んでいただきたい」とお客様に宣伝している場面に遭遇しました。国による温泉の飲用は、飲料水と同じように飲むために許可をしているわけではありませんと説明しましたが、温泉の飲用について、このような誤解は割と一般的なのです。
温泉は時間経過とともに細菌の増加や成分の変化が起きますから、飲用する場合は、新鮮な温泉を用いるだけでなく、十分な公衆衛生上の配慮を行うことが必要になります。このようなことも、掲示をとおして利用者に広く知っていただきたいのです。

大塚― わかりやすい掲示が増えることを期待しています。


ページトップ


記事に含まれる環境用語

関連情報