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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
アジアを主な対象にした温暖化対策の評価モデル、「AIMモデル」
IPCC第3作業部会は温室効果ガスの排出そのものの削減やそのための政策・施策が対象
アジアの国々では、温暖化の影響を人々が肌で感じているようで、対策にもすごく熱心
【1】森田恒幸
 故人。元国立環境研究所社会システム研究領域長で、AIMモデルの開発などを中心的に進めた。
【2】AIMモデル(Asian-Pacific Integrated Model)
 アジア太平洋統合評価モデル。アジア太平洋地域における、物質循環を考慮した地球温暖化対策評価のための気候モデル。
【3】カンクン合意
 2010年にメキシコのカンクンで開催された、気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)でなされた合意で、気温上昇を産業革命前に比べ2℃以内に抑えるため、2050 年までに世界規模での温室効果ガスの排出を大幅に削減するビジョンを共有すること。
【4】CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)
 二酸化炭素回収・貯蔵。火力発電所などで大量に排出される二酸化炭素を回収し貯蔵することで、現在、世界で70以上の大規模プロジェクトが進行中。

No.030

Issued: 2014.06.10

第30回 国立環境研究所社会環境システム研究センター・フェロー 甲斐沼美紀子さんに聞く、脱温暖化に向けた今後の対策[1]

実施日時:平成26年5月14日(水)16:00〜
聞き手:一般財団法人環境情報センター 理事長 大塚柳太郎

アジアを主な対象にした温暖化対策の評価モデル、「AIMモデル」

甲斐沼美紀子(かいぬまみきこ)さん
甲斐沼美紀子(かいぬまみきこ)さん
1975年京都大学大学院工学研究科・修士課程修了。工学博士。現在、国立環境研究所社会環境システム研究センター・フェロー。温暖化対策の評価研究に従事。IPCC第4次及び第5次評価報告書の主執筆者。
1994年日経地球環境技術大賞受賞、2010年科学技術・学術政策研究所より「ナイスステップな研究者」受賞、2011年環境科学会学術賞を受賞。

大塚理事長(以下、大塚)― 大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、EICネットのエコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。甲斐沼さんは気候変動問題、とくに脱温暖化社会・低炭素社会に向けたビジョンの構築の分野で、長年にわたり活躍されておられます。本日は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の活動や、脱温暖化に向けた今後の対策などについてお伺いしたいと思います。どうぞ、宜しくお願いいたします。
脱温暖化社会という言葉は、最近はよく聞かれるようになりましたが、甲斐沼さんが取り組みをはじめられたころの状況をご紹介いただけますか。

甲斐沼さん― 私が勤めています国立環境研究所は、1990年に国立公害研究所から名称変更されたのですが、そのころ、国内だけでなく地球全体で考えなければならない環境問題、たとえばオゾン層の減少、地球温暖化、越境大気汚染などが大変重要になってきていたのです。IPCCが創設されたのが1988年でしたし、1990年にはIPCCの第一次評価報告書が出されています。
私は国立環境研究所に新設された地球環境グループに配属され、森田先生【1】をはじめとするメンバーと、地球温暖化に対して我々が何をできるかを議論しました。そのころ、IPCCの報告書とともに、温暖化の統合評価モデルが欧米を中心につくられはじめていました。我々はアジアに着目しました。1990年におけるアジアのCO2排出量は世界全体の23%くらいでしたが、人口は世界全体の6割もあり経済成長もつづいていました。このまま対策を講じないとものすごいことになるので、私たちがAIMモデル【2】と呼ぶ、アジアを主な対象にした温暖化対策の評価モデルをつくり、アジアの国々で使ってもらおうと考えたのです。

大塚― お名前の出た森田恒幸さんや甲斐沼さんをはじめ、日本の研究者が非常にいい仕事をされました。ところで、1990年にはまだ温暖化への危機意識が薄かったように思いますが、どのように受け取られたのでしょうか。

甲斐沼さん― 温暖化は、50年とか100年のスパンで考える長期的な話です。私もインドネシア、インド、中国など多くの国に行きましたが、当時はどの国でも環境部局の方々は目先の大気汚染や水質汚濁の問題で忙しくしており、50年先とか100年先の計画やビジョンをつくるインセンティブをもちにくい様子でした。

大塚― AIMモデルをはじめ、アジアのことは改めてお伺いしたいと思います。

IPCC第3作業部会は温室効果ガスの排出そのものの削減やそのための政策・施策が対象

2013年COP19のサイドイベントにて、マレーシアの研究者や行政担当者と最新の研究成果を発表。
2013年COP19のサイドイベントにて、マレーシアの研究者や行政担当者と最新の研究成果を発表。

大塚― 日本でもよく知られるようになったIPCCですが、このコーナーで昨年12月に三村信男さんからお話を伺いましたので、甲斐沼さんからは気候変動の緩和策を扱う第3作業部会を中心に紹介をお願いいたします。

甲斐沼さん― 三村先生が属している第2作業部会が気候変動の影響や気候変動への適応を扱うのに対し、私が属している第3作業部会は温室効果ガスの排出そのものをどのように削減するか、そのための政策や施策を対象にしています。温室効果ガスの削減を緩和と呼んでいるわけで、どのような緩和策が適しているか、そして政策評価の基礎になる将来の排出シナリオを、2100年までに、あるいはもっと先の2200年や2300年までに、気候を安定化させることを考慮しながら作成しています。それぞれのシナリオに対する経済評価も重要なテーマになっています。

大塚― 影響や適応を扱う第2作業部会と、第3作業部会との関係をもう少しご説明ください。

甲斐沼さん― 第2作業部会の検討課題はもちろん重要です。国連気候変動枠組条約(UNFCC)の締約国会議(COP)では、カンクン合意【3】により、「2℃目標」と呼ばれる、温度上昇を産業革命前に比べ2℃に抑えることが目標になりました。この時の2℃のように、何℃まで上昇したらどのような影響が現れるか、たとえば生態系や食糧生産にどのような影響がでるかは第2作業部会で検討されており、その温度上昇に抑えるには大気中のCO2濃度を何ppmに抑えればいいかが第3作業部会の検討課題になります。第2作業部会が目標として設定する温度上昇に対して、さまざまな条件におけるCO2排出量とCO2濃度との関係を明らかにし、その対策の経済評価も行います。検討する要因は、各種エネルギーの利用割合を何%にするか、建物の断熱をどのくらいにするかなど、じつに多岐にわたります。

アジアの国々では、温暖化の影響を人々が肌で感じているようで、対策にもすごく熱心

大塚― 適応策が大事なことはよく分かります。とはいえ、CO2の排出量の削減が不可欠ということですね。削減に向けた具体的な方策については、どのようなことが考えられているのでしょうか。

甲斐沼さん― CO2の排出量の低下には、エネルギーを供給する側と需要する側の両方がかかわります。供給側としては、CO2を出さないか比較的少ないエネルギー源として、再生可能エネルギー、原子力、そして化石燃料を用いる発電で排出されるCO2を捉えて地中に埋めるCCS【4】の3つがあります。ただし、原子力は安全性の問題と、核燃料の使用後の廃棄が大きな問題になっています。石炭火力とCCSをセットにする方法も議論されていますが、CO2を地中に埋めておく場所の問題、とくに地震があっても地表に出てこないのかとか、50年あるいは100年といった期間では使えても、何百年もつづけられるかなど、さまざまな問題を抱えています。やはり、再生可能エネルギーが重要になってくると思います。
需要側でCO2を削減させる手段はたくさんあります。たとえば、効率的な空調や断熱性の高い建物は削減効果が大きいですし、交通・運輸分野でも削減に成功すればその効果は大きなものになります。じつは、途上国では交通・運輸分野でのCO2排出量が今後も大きく増えるといわています。日本は車社会になる前に鉄道が敷設されましたが、中国やタイをはじめ多くの途上国では鉄道の敷設の前に自動車道、とくに高速道路がつくられ、大きな問題になっているのです。今後、大量輸送が可能な公共交通を充実させる必要があります。もちろん郊外などでは車が必要ですが、車といっても、電気自動車、ハイブリッド車、さらに将来的には燃料電池車など、技術革新によりCO2の排出量を減らすことが大事になります。

大塚― いろいろ紹介していただきましたが、各国の政策として進みつつあるのでしょうか。

甲斐沼さん― 温暖化の影響は、すでに現れているとみていいでしょう。たとえば、インドネシアでは雨季から乾季への変わり目がずれてきて、雨季が短くなり、その短い間に、もともと激しい雨に見舞われていたのがさらに激しくなっており、その影響を人びとが肌で感じているようです。そのため、対策を早く打たなければと考えはじめているのです。先ほど申し上げたように、私たちは1990年代にインドネシア、インド、中国などを対象にAIMモデルの研究をはじめました。その頃は、正直に申して彼らはあまり熱心でなかったのですが、今は違います。すごく熱心です。ほかの多くの国々、たとえばタイなどもかなり熱心になったと感じています。

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