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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指す
ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきた
パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、大変な熱気の中で、「我々はやるのだ」という主張が繰り広げられた
【1】グリーン成長(green growth)
 グリーン成長とは、経済的な成長を実現しながら、人びとの暮らしを支えている自然資源と自然環境の恵みを受け続けることを意味します。その重要な要素として、生産性の向上、環境問題に対処するための投資の促進や技術革新、新しい市場の創造、投資家の信頼、マクロ経済条件の安定などが指摘されています。 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h24/html/hj12010102.html
【2】「足るを知る経済」(sufficiency economy)
 タイ国王のラーマ9世(通称、プーミポン・アドゥンヤデート、1927.12.5―2016.10.13)が、1997年に起きたアジア通貨危機の反省を踏まえて提唱した経済指針。富への貪欲さを見直し経済活動にも道徳心を持つべきという主旨で、仏教の教えに倣っている。
【3】西岡秀三氏
 慶應義塾大学教授、国立環境研究所理事などを経て、現在はIGES研究顧問。環境システム学・環境政策学が専門で、気候変化影響や対策シナリオ研究に取組む。
【4】国連持続可能な消費と生産10年計画枠組み(10-Year Framework of Programmes on Sustainable Consumption and Production Patterns: 10YFP)
 2012年6月にブラジル・リオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で採択されたプログラムで、各国からの拠出金で設立された基金により、世界全体として低炭素型ライフスタイル・社会システムの確立を目指す。

No.062

Issued: 2017.02.20

第62回 公益財団法人地球環境戦略研究機関・浜中裕徳理事長に聞く、環境を巡る国内外の状況と、今後の方向性[1]

実施日時:平成29年2月1日(水)15:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指す

浜中裕徳(はまなかひろのり)さん
浜中裕徳(はまなかひろのり)さん
1967年東京大学工学部都市工学科卒業、1969年厚生省(当時)入省。
1971年より環境庁(当時)に勤務し、大気・水質保全、環境影響評価等の環境政策分野で活躍。また、京都議定書をはじめとする政府間交渉に携わる。
2001年に環境省地球環境審議官、2004年に環境省を退職。
2007年4月より現職。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長の浜中裕徳さんにお出ましいただきました。浜中さんは、地球温暖化をはじめとするグローバルな環境問題に関わられ、昨年マラケシュで開催されたCOP22にも参加されておられます。本日は、温暖化対策を含む環境を巡る国内外の状況と、今後の方向性などについてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
はじめに、公益財団法人地球環境戦略研究機関、通称IGESの紹介から始めていただけますでしょうか。

浜中さん― IGESは1998年、「京都議定書」が採択されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が終わってすぐに、日本政府のイニシアティブのもとで神奈川県のご支援を得て設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。
アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指しています。「革新的」で「実践的」というのはちょっと欲張っているかもしれませんが、環境を中心とした持続可能な開発の課題に取組む上では大変重要と考えています。
アジアはご存知の通り、中国やインドなどに見られるように、急速な経済発展、都市化、ライフスタイルの変化、富裕層や中産階級の膨張などが進み、あっという間に大都市にショッピングモールがつくられ、森林は伐採され農地、大規模なアブラヤシ・プランテーションなどに転換されています。それに伴い、資源の大量消費と枯渇が進み、大気汚染、水質汚濁、廃棄物の増加、CO2の排出が増加し、一方で貧富の格差も大きな問題になっています。
アジア各国の政府や関係機関も、このような状況を克服し持続可能な発展の軌道に乗せようとしているのですが、能力不足などの課題を抱えています。従来型とは違う新たな発展モデルを追求する必要があると思うのですが、各国の指導層は欧米に留学し従来型の経済発展のパラダイムの下での教育を受けており、その発想に基づき経済発展計画を作成し実施していることが多いのです。

IGES本部(神奈川県三浦郡葉山町)
IGES本部(神奈川県三浦郡葉山町)


ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきた

大塚― 欧米型の発展モデルと違うモデルについて、もう少しご説明ください。

浜中さん― 変わるべき新たなモデルが必ずしも具体的になっているわけではないのですが、たとえば日本は、欧米型発展モデルの弊害ともいえる公害による健康被害に直面し、それを克服してきました。アジアの多くの国の状況は当時の日本と共通する点があると思います。まずは経済発展が必要で、経済基盤がしっかりしなければ環境対策はできない、と考えがちですが、そのように固定的に考えるのではなく、グリーン成長【1】に基づくモデルを模索する必要があり、実際一部の国では興味深い事例が見られます。
たとえば、タイでは「足るを知る経済」【2】という考えが知識層や指導層の一部で認められ始めています。また、IGESの研究顧問をされている西岡秀三さん【3】は、アジアの伝統的な価値観に注目し、ブータンの人たちと「もったいない」意識の価値について考え、それに基づくライフスタイルを模索しておられます。
IGESでは、「持続可能な消費と生産」という研究グループが活動しています。ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきました。その当初は途上国の人たちから「何を言っているのか、それは先進国の課題であり、我々の問題ではない」と言われましたが、最近では取組むべき大事な課題と認識されています。
また、2012年にリオデジャネイロで開かれた、「リオ+20」と通称される国連持続可能な開発会議で採択された「国連持続可能な消費と生産10年枠組み」【4】の1つのプログラムである「持続可能なライフスタイルと教育」において、IGESは日本政府を手伝い、スウェーデンとともに共同幹事国の役割を担っています。

大塚― アジア諸国は変わりつつあるように感じています。

浜中さん― その通りです。昨年10月、インド・エネルギー資源研究所(TERI)が定期的に開催している国際フォーラムのため、20か月ぶりにニューデリーを訪れる機会がありましたが、インドが大きく変わっていると感じました。以前は、たとえばPM2.5などの大気汚染について、インドの方がこれは「霧(fog)」で、スモッグではないと言っていたのですが、昨年訪問したときには政府も企業も大気汚染など環境への取組みを前向きに進めようとしており、主要紙がその動きを報道していました。そのような変化の中で、菜食主義などのインドの良き伝統を残しながら、新たなライフスタイルを求めようとする、少なくともその兆しが出てきていると実感しました。

大塚― IGESは、まさに国際的な活動を展開されているのですね。

低炭素社会に向けた長期戦略策定に関する連続提言に関する意見交換会(2016年12月)
低炭素社会に向けた長期戦略策定に関する連続提言に関する意見交換会(2016年12月)

浜中さん― IGESが従来から重視しているのは、さまざまな組織との連携です。国際機関、各国の政府、国立環境研究所をはじめとする国内外の研究機関はもちろん、最近はさらに企業、NGO、市民との連携を強化しています。
3Rを例にとりますと、IGESはその国際展開にかかわる政策プロセスにずっと前から関わっており、アジア太平洋3R推進フォーラムの活動に名古屋にある国連地域開発センターと共同して取組んでいます。そうした活動を進める中で、各国政府やさまざまな組織から学ぶことが非常に多いのです。現実を踏まえ、どういう政策が適切かを私どもが一方的に提案するのではなく、関係者との議論を踏まえ有効な政策を紡ぎ出すというやり方です。持続可能な社会をつくり、そして人びとの生活の質が良くなるよう、チェンジエージェントになることを目指しています。
私たちのパートナーである4つの国連機関とは、施設を提供し共同して活動しています。一番古いのは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の温室効果ガスインベントリープログラム技術支援ユニット(TSU)で、1999年に葉山のIGES本部に置いています。比較的最近、一昨年の9月には、UNFCCC(気候変動に関する国連枠組み条約)のアジア太平洋地域のためのコラボレーションセンター(RCC)を、バンコクにあるIGES地域センターに設置しました。また、IPCCの生物多様性条約版ともいえるIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)のアジア・オセアニア地域アセスメント技術支援機関(TSU-AP)をこの東京事務所に、大阪にあるUNEP国際環境技術センター(IETC)とのコラボレーションセンターを葉山の本部に置いています。


パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、大変な熱気の中で、「我々はやるのだ」という主張が繰り広げられた

大塚― 少し話題を変えさせてください。昨年、パリ協定が発効しマラケシュでCOP22とパリ協定第1回締約国会議であるCMA1が開かれました。この半年ほどの地球温暖化対策の動きを、浜中さんはどのように見ておられますか。

浜中さん― パリ協定は一昨年12月の採択後わずか10ヶ月で発効要件を満たしました。振り返りますと、協定つくりに向けて機運が盛り上がってきたのは2014年にペルーのリマで開かれたCOP20あたりからだったと思います。私は2014年9月にニューヨークを訪れたのですが、そこで、企業・金融機関・投資家・自治体・NGO・研究機関など実に多くの人びとが大集合し、街頭で一緒になって手をとり、気候変動への強力な取り組みをアピールしながら歩くクライメート・マーチを繰り広げていたのです。国連事務総長が参加していたことなどもあり、私を含め日本からの出張者も世界が大変なことになっていると実感しました。
パリ協定の合意には、アメリカのオバマ政権の主要国への働きかけが大きかったと思います。大統領選挙の結果が見通せないので、その前に発効させたいと、伊勢志摩サミットの時から仕掛けていたのです。中国やインドがそれに乗り、びっくりするぐらい早いタイミングでパリ協定を批准し、EUも批准を急ぎ、発効に間に合いましたが、日本は批准手続きが遅れ、山本大臣は早期国会承認を得るためご苦労されていました。

大塚― COPの会場の様子や、会議の成果などについてもご紹介ください。

浜中さん― パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、本当に多くの参加者で膨れ上がりました。政府間交渉が行われるブルーゾーンに入れる方は限られているのですが、その外側には、世界中からビジネス界の代表、自治体の代表、NGOの代表など、ものすごい数の人が集まりました。大変な熱気の中で、「我々は行動を始めている、その輪を広げよう」という声が次々と出されたのです。政府に対しては、「我々の行動をサポートして欲しい」というようなことを求めていました。
発効が想定以上に早かったために、CMA1(パリ協定第1回締約国会議)での取り決めはやや特異なことになりました。マラケシュではCMA1の第1部だけを行い、2017年のCOP23の第2部で検討の進捗状況をレビューし、2018年のCOP24の第3部で作業を終えることになったのです。このように中身は地味でしたが、アメリカでトランプ政権が誕生したこともあり、前に進む機運を高めようという強い意思が感じられました。その象徴が、ハイレベル会合参加者一同の名前で出されたマラケシュ行動宣言で、「世界中の政府、ビジネスなどあらゆる主体、あらゆるレベルでの気候変動行動の非常な盛り上がりは元に戻せない」とし、気候・持続可能な開発に関する行動に舵を切るというシグナルを世界に発するものでした。
もう1つの大きな成果は、今回ビジネス、自治体、NGO等と政府との協働を促進するため、取り組みの進展や課題を持ち寄り、発信する会合を開催したのですが、今後も毎年のCOPで同じことをやろうと、恒久的な枠組みであるマラケシュ・パートーナーシップができたことです。このパートーナーシップ会合では、その年と前年のCOPの議長国、今年で言えばフィジーとモロッコになりますが、両国の代表がハイレベル気候チャンピオンズとして企画を立て、実施することになったのです。マラケシュ会合は、気候変動に対し、各国政府に加え、自治体、ビジネスなど国家以外の主体の取り組みを盛り上げた点で大成功でした。

COP21でのパリ協定採択
COP21でのパリ協定採択

COP22のサイドイベントに登壇する浜中理事長
COP22のサイドイベントに登壇する浜中理事長


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